103.陽葵の忘れ物
「ここは、こんな感じだったよね」
「いや、こっちの方が自然か」
「でも、」
夢描は、紙に向かって独り言を呟いていた。
「そんなに、」
「考え込まなくても」
「いいんじゃない?」
陽葵が、夢描のために飲み物を持ってきながら言った。
「ありがとう」
「でもね、」
「絵で妥協はしたくないの」
いつものような夢描ではなかった。
その目には、絵に対する思いがあった。
「すごいね」
「夢描は、」
そんな夢描を見て陽葵は、ニコッと笑った。
「えっ?」
「そうかなぁ、」
夢描は、嬉しさを抑えきれずにニヤニヤしていた。
「すごいよ!」
「そんなに、誰かのために全力でできるの」
「私には、そんなことできない。」
「そんなことは無いよ」
「私の将来の夢が小説や漫画イラストをかくことなの。」
「だから、この絵を描くのも」
「あの展示会に行くのも」
「全部自分のためなの。」
「夢描は、小説も書きたいの?」
話を聞いていた恋歌が、言った。
「そうなの」
「私は、自分で何かを作り出したいんだよね」
「素敵ね」
「恋歌は、何か夢はあるの?」
陽葵が、聞いた。
「そうね、」
「私は、音楽をしたいのです」
「音楽!」
「すごいね」
「そんなことないですわよ」
恋歌は、少し照れた表情を見せた。
「そういう陽葵は?」
夢描が、絵を描く手を止めて質問した。
「私?」
「うん」
「うーーん」
「未来のことか」
「考えたこと無かったかも」
「何それ」
「変かな?」
3人は笑った。
──────
「私は、家族のことを幸せにしたかったな。」
「素敵だね」
「てかさ、」
「1回ぐらいは」
「なりたい自分とか考えたことあるでしょ」
笑い声を聞いてやってきた花が話の一連を聞いて陽葵に言った。
「1回ぐらい?」
陽葵は、そう言ってから必死に思い出していた。
「あっ!」
何かを思い出したのか。
「なりたいって言うか」
「大きくなってから知りたことがあって」
「誰かから貰った」
「何かがあったの」
「何かって?」
「誰から貰ったの?」
「それが思い出せないんだけどね」
「その何かが私すっごく大切にしてたの」
「でも、今思い出せないの」
「そして、その誰かを思い出したいんだよね」
なるほどそれは聞いただけの夢描達も気になってしまう。
「昔は、夜になると何回もそのこと思い出してたんだけど」
「最近は何故かそのこと考えてなかったな。」
「忙しかったからじゃない」
「そっか...」
夢描の意見に少し納得していなそうな表情を見せた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




