94話 狩る獲物を見せびらかす様に
新年のやり直し初詣は
元旦の夕方くらいに行う事になった
理由は単純で
挨拶と称してシン達は
明け方まであちこちに連れて行かれて
どこそこの偉い方や
今は引退して蛇蠍ちゃんのファンだとか
蜂族とゴーゴン族に
昔だけども散々泣かされた事がある人とかに
ゆっくりと時間をかけて挨拶された
挨拶と挨拶の間に出店へと行くと
双子の祖父がシンを肩に担いで
気分良く笑いながら
昔馴染み達がやっている店で奢ってくれた
色々な食べ物がシンに渡されて食べ始めると
マンジュが、食べたい!と
ピッ!と鳴いて、シンにおねだりをして
イカ焼きを食べさせてもらっていた
それを見ていたトウカの頭にいた蛇達も
ウチらもくれへん?ていうか!欲しいんや!と
シンの髪へとヨダレを垂らしながら移動して
シャ?シャーー!シャ!と鳴き始める
トウカは髪型が変わったので
アンタらなぁ!とキレていたが
そんな事は気にしない感じでシンから
たこ焼き、カステラ、リンゴ飴、焼きそば
綿飴に焼きトウモロコシを貰って
嬉しいそうにパクパクと食べていた
「イカン!イカンぞー!
これでは破産どころでは
スマンかもしれんのぅ!誰か助けてくれぇ!」
「しゃーねえなぁ!
スポンサーになってやろうじゃねぇか!」
「しょうがありませんね」
「3連覇を生きてる内に見てみたいものね」
双子の祖父達の
演技かかったやり取りをした後に
周りにいた人達が食べ物を買って
シンの方向へと差し出し始める
「何よ!私は人族だっての!
団体競技だから‥‥って、食うな!
食べたらやんなきゃならなくなるじゃないの!
なんで!アンタ達も持ってきてんのよ!
やめて!貢ぎ物みたいにすんな!」
周りが差し出した食べ物をマンジュや蛇達が
ほな!遠慮なく!っといった感じで
パクパクと食べ始めた
シンは双子の祖父の肩で蛇達を
捕まえようと必死になるが、上手くいかず
遂には、リン達まで食べ物を差し出していた
双子の祖父の足元で
小さな子が一生懸命にたこ焼きを
シンに向かって差し出しているのを
蛇達が器用に舟の端を咥えて
シンの頭の上に置く
シンはどうしたらいいのか
見たら駄目だと思いつつも
たこ焼きを持っていた小さな子を見ると
期待の眼差しでシンを見て
両手の指を3本ずつ立てて笑顔だった
「駄目よ
コレは返してあげないと
あっ!コラ!マンジュ!駄目だっての!」
シンの頭の上ではマンジュが
ヨダレを垂らしながら
いいよね!いいんだよね!食べたいの!
コレ絶対に美味しいヤツなんだもん!と
ピィーーー!ピィーーー!と鳴いている
シンが尻尾をピコピコと振り回すマンジュを
止めていると小さな子の瞳が
ウルウルと潤み始めて泣きそうになっている
「開法学院バレー部主将!
できんの?3連覇!」
「さぁ?シンが決めなよ」
シンがアヤノに向かって叫ぶも
綿飴を食べているアヤノは呆れた様に返す
小さな子は口まで歪めて
泣くのを我慢している様にシンには見えた
「わかった!わかりました!
やってやろうじゃない!3連覇!
蛇蠍の二つ名がカッコよくて
スゴイってトコを見せてやるわよ!」
ヤケクソ気味に叫んだシンへ
周りから歓声や拍手、激励の言葉まで送られる
頭の上では
ほな!遠慮なく!とマンジュと蛇達は
たこ焼きの踊り食いを始めていた
小さな子はパッと笑顔になると
元気よく走り出して、クナに抱きついて
やったぁー!っと言って飛び跳ねていた
「アンタ!何よ!妹なの?」
「違うよ、シン
従姉妹の子供だから‥‥なんだっけ?」
「ハメたのね‥‥またなの」
クナが真剣に携帯を見ながら
従姪って?なんて読むの?とか
周りに聞いてるが
リン、アヤノ、サリを中心として
いつものメンバーが笑顔でシンを見ていた
「わかったわよ!4連覇よ!
開法学院バレー部は4連覇する!絶対に!」
「はぁ?シン!なんで!無理だよ!」
「アンタが従姪と
一緒にハメたんでしょうが!
それぐらい責任とんなさいよ!」
「だったら!シンが留年してよ!」
「するわけないでしょ!
アンタが飛び級してきなさいよ!」
シンとクナの言い合いが
笑い声に混じって行われる中
シンの頭の上では色々な人からの差し入れを
おおきに!ホンマに美味いわ!
ここは天国やで!ホンマに!と言わんばかりに
ピー!シャー!と鳴いて食べまくっていた
その後、ツチノコみたいに
丸々と太った蛇達が
甘酒を何杯か飲んで、幸せそうに
シンの髪からビローンと伸びていた
歴史ある神社にて
元旦の夕方に
多くの屋台が並ぶエリアを抜けた先の
大きな広場で御披露目会が行われた
麒麟邸とアラクネ屋が
長年、歴代あった確執を乗り越え
共同制作し、師走に発表した様々な作品は
神社より許可を得た場所で
多くのモデルが着こなし、撮影した後に
参拝客に甘酒を振る舞って迎えていた
落ち着いた雰囲気の中に
隠しきれない程の魅力が詰まった作品は
着る人によって印象が変わり
夕方から夜にかけて
自然の光が少なくなる時間帯にも
印象が変わる
そんな様々な変化を
ゆっくりとした時間と共に楽しむ
そんな事を思わせる様な作品であった
この事を目当てに来た参拝客もおり
賑わって混雑もしていたのだが
キチンとした誘導もされており
大きな混乱も無く御披露目会は行われていた
そんな場所に入った時から
注目を浴びる集団が
御披露目されている着物を見て
着ている感じはこんな風に見えるんだと
軽い感じで話しながら歩いていた
その集団の女性達は
種族がわかる様な色をした着物を着ていて
それぞれの特徴が主張しているので
着ている女性達の容姿も相まって
確かに綺麗なのだが
個別に見ていれば、もっと良かったのでは
あれだけ個々が目立ってしまえば
まとまりがないというか
なんというか不揃いにも見える
しかし何故?一緒にいるのだろうか?
あれだけの原種が一同に集まるのは珍しい
着物を目当てに来ていた参拝客が
そう評価して、視線を外そうとした時に
屋台の方から歩いて来た人物が合流した事で
再度、その集団に注目が集まる事になった
その人物は頭にいる蛇達を見るに
蛇族の原種であるのか
それとも着物に浮かび上がる紋様から
蠍族の原種であるのか
頭に横にお面を付けて
両手いっぱいに持った食べ物を
蛇達へ器用に分け与えている
その人物は原種の女性達の大切な人なのだろう
それぞれの主張がさらに激しい事になり
バラバラに見えるのだが
何故か‥‥そう何故かはわからないが
まるで花や星がその為だけに
咲いて輝くように
主張し始めている様にも見えた
その人物がまるで
太陽か月のような存在であるかの様に
彼女達は周りに寄り添って
笑顔を咲かせて輝くように笑っていた
その人物をよく見ると
人族の子に見えるのだが
雷や風を纏っているようにも
角や尻尾が生えているようにも見える
季節が変わると太陽と月の
見え方や感じ方が変わるように
人族と思われる子の見方も変わるようにと
作られた着物なのだろうと
周りの有識者達は納得はしたのだが‥‥
疑問も浮かび上がる
あの人族の子は
彼なのか彼女なのか
あの集団は人族のような子を
中心としたファミリーなのであろうか
なんにせよ
囲まれて、今は見えなくなってしまった
人族にも見えた子が
呑気に蛇達にご飯を食べさせながら
笑顔で話している雰囲気と
それを囲い込んでいる原種達が放っている
狩人の殺気にも似た雰囲気とが違いすぎていて
妙なチグハグさを感じながらも
妙にバランスが取れている様な気分にもなる
そんなこんなで色んな意味で目立つ集団が
初詣を楽しんでいた
シンの母親は新聞の切り抜きを貼って
本にしてある物のページをめくりながら
時折笑っていた
「あの子はわかってんのかしらね」
「シンの事かい?
いやぁ〜‥‥どうだろうね」
「昔から肝心な所が抜けてる子だから
本当に心配だわ」
「楽しそうだね
ユウキもアキもサキも」
シンの母親とシンの父親が話す内容を
シンの兄であるユウキと
シンの姉達であるアキ、サキは
ニヤニヤしながら聞いていた
「ワガママな所が
いい感じに抜けてきたんじゃないのか」
「そうだね
まだ甘え下手な所もあるんだけど」
「そうだよね
隙だらけな所は変わってないよね」
ユウキ、アキ、サキが笑いながら
母親が開けているページに貼られている
切り抜きを見ながら言う
とある雑誌に掲載されていた記事には
シンが写真中央に写っており
左右にはリン、クナ、ソナ、エル、ヒル、ルカ、アヤノ、サリ、ポー、ウイ、カヤが
並んで写っている
場所は神社の本殿へと続く長い階段の前
全員が麒麟邸とアラクネ屋がコラボして
作った着物を着ており
年が明けた時に撮られ
場所が場所なので照明が抑えらて
辺りは少し暗く写っている
「本当に我が子ながら
ここまで隙だらけだと心配になるわぁ〜」
「いいんじゃないの
原種の子達が守ってくれてるんだし」
「信頼した相手には
疑う事もしなくなるしね!シンは」
「そう言った意味では
甘え上手なのかもしれないよ」
シンの母親、アキ、サキが言った事に
父親が落ち着いた雰囲気で言うが
ユウキが呆れた様に言った
「それにしても
こうまでは‥‥ならないんじゃないか」
〔神社や麒麟邸、アラクネ屋が認めた!
サキドリッコちゃんは蛇蠍ちゃんだった!〕
〔3連覇!4連覇宣言が聞かれたとも!〕
〔着物までもサキドリされた!!〕
多数の雑誌社が出し
色々な見出しが書かれた記事には
白い蛇を頭に乗せた人族が原種達の中央で
満面の笑みをしている写真が掲載されていた
色々な着物に身を包み
華やかな雰囲気で撮られている写真
確かに場所も撮られた意味も相まって
厳かにも感じられる写真なのだ
蛇蠍ちゃんに注目して全体を見れば
仲良しで、なごやかで、微笑ましいように
そういう風に見える
‥‥‥‥のだが
原種の女性達や頭に乗っている白い蛇に
注目して見てみると
写真を撮っている場所や
薄暗くなっている雰囲気も含めての事なのか
妖艶にして不気味に見える原種の女性達や
白い蛇の目が薄く紅く光っていたので
ある種のホラー写真にも見える程だった
これは私達のだ!
この場所も私達のだ!
見れば見るほどに
そう言っている様な
そう言われている様な気がして
息を呑んで見てしまう
「呑気に幸せそうに笑って
美味しそうに丸々と太っちゃってますけど
パクッとサキドリされても知らないわよ」
「いやぁ〜
育てられちゃってるねぇ」
「どこまで育つんだろうね
ウチらの妹ちゃんは」
「育て方が上手いのか
収穫時期が近いのか
もう充分に育っている様にも見えるけどね」
「勘はいい方だと思ったんだけど
ここまで無防備だと笑けてくるな」
そんな事を楽しげに話していた




