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93/108

93話 そこにあったモノ

記録に有史以前よりあったのではと

そう記録に残される程に歴史があり

そこを中心に村ができ、街となり

都市となったと言われている神社がある


そんな歴史ある神社は

日頃より参拝客や観光客が多くいるが

毎年、新年に行われる色々な伝統行事には

地域住民はもちろんの事

遠方から来る参拝客も多い為に

大変な賑わいとなる


今年は年明けに合わせて

百年区切りで行われる本殿への拝観が予定され

申請し、許可が出た者のみが

新年の初詣前に本殿へ続く道にある門前で

行列を作り待機していた


神主が祝詞をあげて

門が開かれると神主が門へと進み始める

その後を拝観希望者がゆっくりと歩いていく


拝観希望者は門をくぐる前に

艶やかな着物を着た女性達より

御神酒や甘酒を振る舞われた


女性達の姿を見て

気付いた者達が少し声をあげる

あるいは、この様な場所に来るような者達なら

知っているのは当然だったかもしれない


長年、確執があると噂されていた

2軒の老舗店があった

過去を知る者達は

今代はそうでもなかったのではないかと

今は語っている


何故か

麒麟邸とアラクネ屋といえば

和の老舗であり、何代前かの当主達が

和飾技術の競り合いで頭角を現して以来

お互いの店を敵視したかのような争いが

長い間続いていた


前の代は麒麟邸が1番だったが

今の代はアラクネ屋だな

次の代は麒麟邸かアラクネ屋か


そんな歴史にも幕を下ろす時が

来たのかもしれない


麒麟邸とアラクネ屋が

お互いの技術を用いて

合同で作成した着物や

小物、装飾品を師走の月に発表し

お披露目の時期と場所は

新年の神社での行事となっていた



「こういうのはいいね」

「なんでだろうな

わかんねぇが‥‥そうだな」


門をくぐる人達を少し離れた所で見ながら

リンの祖父とトウカの祖父は呟き合う


「なんでなのかしらね」

「なんかわからんけどね」


リンの祖母とトウカの祖母も

白い息を吐きながら、同じような事を呟く


4人が見つめる先で

追加の御神酒を運んでいるシンを

先代神主の双子の祖父が手招きしていた


白い着物の振り袖には金と銀の刺繍で

魔力で浮かび上がるは太陽と月

帯は松柄で、髪は組紐で纏めて

紅い簪が飾られている


シンの頭には寒いのか

マンジュが顔だけを髪から出して

チロチロと舌を出して

気持ち良さそうにしている


シンは御神酒を机の上に置くと

双子の祖父に近寄って

何かを小声で話し合う


シンが半眼で難しい顔になり

踵を返して逃げようとするのを

双子の祖父は捕まえて、シンを肩に乗せる


周りから歓声と笑い声が起こる中で

シンは双子の祖父に抗議する


「また!こんなの」

「焼きそば!お好み焼き!たこ焼き!

どうかのぅ!手を打ってくれんかのぅ」


双子の祖父に言われて

マンジュがピーーー!ピー!と鳴く


「ホットドッグとカステラもだって!

あとイカ焼きも!」

「これで交渉成立だのぅ!

シン・フジムラさんよぉっと!」

「なんでフルネームなのよ!」


マンジュとシンの要望に

双子の祖父が応えると

周りからは納得の歓声が静かにあがった


「いやぁ‥‥よく通る声だね」

「行ってあげませんとね」


リンの祖父と祖母が笑いながら

歩き出そうとする


「どうしたん?

豆鉄砲を喰らったような顔して」


トウカの祖母がトウカの祖父を見ながら

驚いた様に言うと

トウカの祖父は、フッと軽く笑ってから言う


「なんや‥‥

えらいド派手やなと」



いつの頃からだったかなんて

わかっている

覚えてるもんだ

こういうもんは特にな


いつも評価は天と地ほど違う


俺が作った作品はわかるヤツにしか

わからない様に作ってある


アイツが

麒麟族の天才と言われるヤツの作品は

わかりやすい様に作ってある


万人に受けると言えば

聞こえはいいかもしれない


だが

技術ってのは

芸術ってのは

そうじゃねぇだろ


親や祖父には、そう育てられた

だからと言って染められた訳じゃない

自分で学んで、それが自分にあってるから

選んでそうしてきた


1番良いものだと信じて

技術を磨いてきたが

認められんのは麒麟邸

今代のアラクネ屋は

麒麟族の天才児には勝てない


そんな事を言われ続けてきたが

気にはしなかった

俺の作品は

わかるヤツに認められて

わかるヤツが選ぶ物だ

そう思っていた


孫が

トウカが弟子入りを志願してきた

嬉しかった

良い酒を飲みながらアレコレと考えていた

飲み過ぎるものじゃない

少しだけなんだが泣けてきた


だがよ

トウカが

俺の作品を生まれた時から見てきたヤツが

麒麟邸の作品に憧れを抱きやがった


世間を知る必要があるのかもしれないと

嫁からの反対もあったが

暖簾分けをした弟子の所に修行に出した


俺の教えをよく聞くヤツだったからと

信頼していたから孫を預けた

報告がきた内容は


なんともチグハグな着物を作っている

才能が無い、憧ればかり見ている

現実が見えていない

自分が正しいと思っているのか

教えている事を作っている着物に反映させない

生意気にも程がある


俺の目は曇っていたのか

トウカには才能があると思っていたが

信頼している弟子に言われると

孫だからと特別に見てしまったのではと

自分を諌める事しかせずに

トウカをちゃんと見てやれていなかった


暑くなってきた頃に

トウカを弟子として預かりたいと

麒麟族の天才から電話があった


なんだろうな


トウカは俺を選ばずに

オマエを選んだんだな

好きにするといいと言った

嫁には、後悔しても知らんよ

そう言われた気がする


それでも礼儀は通す為に挨拶に行くと

そう伝えると日取りを指定してきた


その日は必ず宴会をする

その時には、昔馴染みが集まるから

お互いに緊張はしないだろうと


鬼族の馴染みがやっている店へと出向いた

挨拶をすると

堅苦しいのは無しだ!

奥で待ってるから、行ってこいと

ぶっきらぼうに言われ

久しぶりに麒麟族の天才と

対面に座って話をした


俺は黙っていたし

麒麟族の天才も黙ってやがった

嫁同士が話をしていると

不意に明かりが消された


縁側から差し込む月の光に

誘われるように

ふと、そちらを見ると

浴衣を着ている人族の子が立っていた


人族の子との話よりも

着ている浴衣を見て

麒麟族の天才が渡してきた甚平を着た


そういうことなんだろうな


昔馴染みと色々と話している時に

俺の発言で会話が止まった


シンってヤツは元々強いんやろう?

別種族の名前をもらうくらいやからな


酔っていた昔馴染みが動きを止める

楽しそうにしていたのに

時間が止まったみたいに動かなかった


「賭けをせんか?

コレを見て、先程の発言を取り消すと言ったら新年に行われる神事に合わせて

麒麟邸とアラクネ屋がコラボして

シンちゃん達に着物を仕立ててやるとのぅ」


神社の神主だった昔馴染みが

悪そうな顔で言うと

そこにいた全員が同じ様な顔で煽ってきやがる

なんで‥‥嫁まで同じ顔で?


見せてきたのは‥‥バレーの試合?

やったろうじゃねぇか!

駄目だったじゃねぇか!

わかってんよ!やんぞ!麒麟族の天才!

弟子もやる?トウカが?負ける訳ねぇよ!

俺とオマエがやるんだぜ!

相手が悪かったって思わせてやらぁ!



「違うわよ!

コッチの白い着物の方が

誰がどう見たって綺麗で派手じゃない!

だから、お披露目会で人目集めまくって

主役を盛り立てんのよ!」


派手?派手ってのは?どういう事や?


「派手って言うのはどういう事や!

おじいちゃんの技術はズゴイんや!

隠して大人っぽくして‥‥ウチではまだ!

まだ全然!真似でけへんねんからな!」

「選んで欲しかったの?

選んで欲しくなかったの?

トウカはどっちなのよ」


トウカが俺の聞きたい事を

いらん事を混ぜて聞いた後

シンちゃんに抱きついて

頭撫でられて大人しくなっとる


「あのねぇ

トウカもそうなんだけど

リン、クナ、ソナ、エルにヒルにルカに

アヤノ、サリ、ポーとウイ、カヤ‥‥全員か

よく‥‥毎日、寮に忍び込んで

一緒に寝てくるでしょ」


全員がビシッと固まり

ため息を吐いて話を続けるシンを

ゆっくりと見る


「隠したいって努力するって事は

早く見つけて欲しいって

アピールしてる様に見えちゃうのよ

それでいてもっともっとかまって欲しいって

だからかなぁ‥‥

なんか隠されている刺繍とか

魔術で浮かび上がる紋様とか

見つけたら‥‥ううん、見つける前から

メチャクチャアピールしてくるのよね

着てる私より目立とうと努力してるの!

ね!派手じゃない?」


俺とトウカ以外が笑ってやがる

嫁を問いただす様に見ると

そうやで!やっと気付いたん?

と言う様にニヤッと笑う


こういうことなんやろうなぁ


選んでもらってたんやなくて

選んでよって

選んで欲しいって

選んでくれなきゃヤダって

ねだってたんやろうなぁ


わかりやすいのを嫌って

厳かに溢れ出す様に作っとったのに

わかれと言わんばかりに

ド派手になっとったやなんて

ピエロもええとこやないか



「あら?ウチはド派手な方が

オモロくて好きやで!

毎日が祭りみたいで楽しいやんか」


トウカの祖母が笑顔でそう言うと

ため息混じりの笑顔でトウカの祖父は言った


ずっとこんなんばっかやったんやろうなぁ


「アホな事を言うなや

騒がしくて、忙しくて、オモロくて

こんなんイチイチ覚えてられへんわ」


少し間を置いてから

吹き出す様に笑い合い

4人は先代神主に担がれている

サキドリッコの元へと歩いていった


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