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92話 選ばない選択

いつもの年末年始

新しい年を迎え、初詣をする

今回は年越えに行われる神事を

連続で成功させているエルとヒルが参加をせず

新年に行われる成人の部に参加だったので

初めて全員参加での年越えとなった


大晦日の夕方にエル、ヒルの家に集合して

年越し蕎麦を食べてから初詣をする

そんな予定だったので

シンは昼過ぎまで惰眠を貪ってから

ゆっくりと神社本殿の近くにある家に行った


「よくきたのぉ

みんなも来ておるから、奥に行って

あったまるといい」

「ありがとうございます!

あ‥‥良いお年を」

「ん?おお!丁寧にありがとうございます

良いお年をお迎えください」


神主姿の双子の祖父に挨拶をすると

丁寧に言われたので

お互いに頭を下げ合ってから

シンは廊下の奥へと向かった


何個か和室を通り過ぎていくと


「よく来ましたわね!シン!」

「よくぞ来たの!シン!」

「来やがったの!シン!」


広めの和室で腕を組みながら

リン、エル、ヒルがテンション高めで

シンに声をかけてくる


「なんでそんなテンション高いのよ」

「今日は!そういう日なの!」

「コッチに来たらわかるの!」


シンは半眼で見ていると

エルとヒルがシンの腕を引っ張って

和室へ引き込んでいく


入って行った和室と襖を開けて繋がっている

もうひとつの広い和室の壁面には

着物が何十着も飾られており

その中でも和室の中央には

黒を基調とした着物と

白を基調とした着物が飾られていた


そして、その2つの着物の前には

トウカとカヤが座っていて

シンをジッと見ていた


「どっち!」

「シンはどっちかしらね」

「よぉ〜考えやぁ」


ルカ、ウイ、ソナがシンの様子を伺いながら

楽しそうにしていた


「何の話なのよ、コレは」


シンが困惑した様に聞く


「すまないね

みんなは少し興奮してて

話が飛んでしまっているね」

「そうねぇ

その気持ちは、とてもわかるけども

説明してあげないと」


リンの祖父と祖母が座りながら

お茶を片手にシンに説明を始めてくれる

シンは話の途中に誰かに抱きつかれたり

暖かくなったので、髪から出てきたマンジュに

お菓子をあげながら聞いていた


説明の内容は

トウカ、ソナ、リン、ポーのお披露目を

新年の神社でしてしまおうとの事だった


そのお披露目に全員で参加する事になるので

着物を選んで出て欲しい

シン以外は選んだので

和室中央にある2着から選んで欲しい

そういった内容だった


「何のお披露目会なの?」

「単純に私達が孫を自慢したいだけなのよ」

「すまないね

孫馬鹿な僕達の我儘に付き合って欲しいんだ」


シンはそうなんだといった感じでいると

周りに促されて

選んで欲しいと言われた着物の前に座らされる


そんな様子をトウカの祖父と祖母が

部屋の隅でお茶をゆっくりと飲みながら

眺めていた


「どっちを選ぶと思います?」

「そんなもんは決まっとるやろ

アイツが誘導しとるしな」


2人が見ている先では

トウカ、カヤを中心とした全員が

シンに着物の説明をしていた


「どちらを選んだかは

着替えて発表する事にしましょうか」

「それはいいね

しかし答えを君達が先に知ってしまうのは

ズルい気もするね」


リンの祖母達がそう言って立ち上がり

リンの祖父の言う事を無視し

ズルい!と合唱するリン達を引き剥がして

シンを和室へと引き込んでいった



閉まっている襖の前でトウカとカヤは

正座をしながら襖の向こうの気配を

何とか探ろうと襖を凝視していた


リン、エル、ヒルは襖の前で

ウロウロしているし

ソナ、ポー、ウイ、クナはマンジュに

餡入りのお餅やイチゴ大福を切り分けて

食べさせながら、ソワソワしていた

アヤノ、サリも変な柔軟をしながらも

襖の方を見ていた


「生意気に見えちまうな」

「まだまだ君も若いね」


トウカの祖父がお茶を飲みながら言うと

机を挟んで座っているリンの祖父が

笑いながら返した


「この瞬間が1番緊張するから

わからないでもないけどね」

「言うて、お前も若ぇじゃねぇか」


リンの祖父とトウカの祖父が

笑い合いながら見ている先の和室は

襖が閉まっており、中を見る事はできないが

楽しそうな声が漏れてきている


「お披露目ですよ」


そんな声と共に襖が開けられると

着物を着たシンが立っていた


「やぁ‥‥いいね

すごく似合っているよ」

「俺らが仕立てたんだ

似合っとらんと困るってもんだ」


リンの祖父とトウカの祖父は

笑顔でシンに告げたが

リン達は不服そうな顔を隠そうともせずに

シンをジッと見ていた

特にトウカとカヤは睨む様にシンを見て

涙ぐんでもいた


「なんで‥‥なんでなん‥‥

なんでソッチなんよ!」

「シンはソッチが良かったの?」


トウカとカヤに聞かれたシンは

半眼になってから振り返り

着替えていた和室に飾ってある黒い着物を見る


「アッチってさ

カヤがデザインして

トウカが仕立てたんでしょ」

「わかっとって、ソッチを選んだんか」

「わかってて、ソッチを選んだんだ」


シンの言う事にトウカとカヤが

怒りを滲ませて言い始める


シンは恨めしそうに睨んでくる2人を見て

呆れた様に言う


「わかりやすすぎるんじゃない?

私は見た時にわかって

触ったら確信したわよ」

「そしたらなんで選んでくれへんねん!」

「イタズラか嫌味にしても

コレはヤダよ!シン!」


2人から責められる様に言われ

シンは、えっ?なんで?って顔をするが

少し考え始める

その様子を見ていたリンの祖父が声を掛ける


「シンちゃんはどうして

そっちを選んだんだい?」

「トウカ、ソナ、リン、ポーが

主役の会に行くからです」


シンが即答すると

トウカとカヤがハッとした顔になるが

それでもまだシンをウ〜っと睨んでいた


「そうだったとしてよ

なんでまたソッチを選ぶ事になったんだ

すまねぇが、教えてくれねぇか」


トウカの祖父に言われて

シンが再度飾られている黒い着物を見る


「だって、アッチのは‥‥

あんなにわかりやすすぎるくらいに

私専用で作ったんでしょ

今から行く所は

私が主役じゃないから選ばなかっただけで

アッチのは後で着たいなぁと

‥‥だから

選ばなかったとか選んだじゃなくて

これから行く場所に服を選ばされただけで

アッチの黒い‥‥私専用みたいなのは

後で、みんなで行く初詣で着たいなぁと」


シンは着ている着物を気にして

腕組みや座るとかをしないで

ウロウロとしながら答えていると

トウカとカヤが抱きついて来ようとしたので

2人の頭を手で抑える


「シンは、おじいちゃん達のを

選んだわけやなかったんや!」

「選ばされてなかったら

私達が作ったのを選んだよね!ね!」

「この格好している時にぃ!

やめろってんでしょうが!」

「どっちや!選ぶとしたら!

シンはどっちを選んだんや!」

「それが重要なんだもん!どっちなの!シン!」


鬼気迫る様に聞いてくるトウカとカヤに

シンは、さっきみたいな呆れた顔になる


「あのね‥‥こういうのはさぁ

もうちょっと隠したらどうなの?

触ったら浮かび上がるのとかさ

あんなの私以外が着ても駄目だろうし

それでいて着物が綺麗で目立っちゃうから

主役が決まってる所なんかに

着ていくのを躊躇うわよ」


抱きつこうとする力を緩めたトウカとカヤの

頭から手を離してシンは続ける


「お披露目会の後にさ

行くんでしょ?毎年恒例のやり直し初詣!

その時に着たいなっと思って‥‥

私がそれを選んだのよ」


トウカとカヤは

そこまで聞くとある疑問が浮かんできた


「お披露目会やねんから

シンが目立って、周りの目を引きつけても

ええんとちゃうん?」

「そうだよ

私達が作った着物で

目立ってもいいんじゃないの」

「何よ、かなり粘るわね」


シンは呟くと少し離れて

自分が全員からよく見える様に立つ


「あの私専用みたいなのは

私を知らないとさ

着物の意味がわからない所があると

勝手に思ったのよ」

「確かに‥‥

そういった部分があるね」

「あんだけアピールしてりゃあなぁ

そう見えちまうわな」


シンの言う事にリンの祖父とトウカの祖父は

少し笑いながら、同意する


「シンが着とる方は隠してるって

言いたいんか?」

「確かに‥‥

その方がお淑やかに見えるんだけどさ」


トウカとカヤがシンを見ながら言うと

シンはニヤッと笑って

両手を腰に当て、胸を張りながら答える


「違うわよ!

コッチの白い着物の方が

誰がどう見たって綺麗で派手じゃない!

だから、お披露目会で人目集めまくって

主役を盛り立てんのよ!」


シンはフンスっと気合いを入れて話すが

周りは呆気に取られてシンを見ていた

ただ、シンの着替えを手伝っていた

リンの祖母とトウカの祖母は

着物の袖で顔を見えない様にして笑っていた





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