83話 意味深に捉えてみる
「なんか太ってない?」
シンは小さな蛇にそう言っていた
昼過ぎからプールで遊ぶ事となり
午前中の部活が終わった後
保健室でお弁当を広げて食べていた
シンは丸椅子の上にハンカチを敷くと
小さな蛇がシンの髪から出てきて
ハンカチの上に着地する
エルがハンカチの上に皿を置くと
小さな蛇はありがとう!ってな感じで
ピッ!と鳴いた
シンは広げられたお弁当箱というか
重箱から唐揚げを取ると
クナが口を開けてコッチを向いたので放り込む
「美味しいです!シン!ルカ!」
クナは食べると作ったルカにも感想を言う
シンは厚切りのチャーシューを取ると
小さな蛇が尻尾を高速で振りながら
それ!それ欲しい!ちょうだい!と言いたげに
ピッ!ピィー!ピー♬と鳴いた
皿にチャーシューを置くと
小さな蛇はお辞儀をして
いっただきまぁす!ウマ!てな感じで
ピーピィ一!と鳴いて
ウットリとしながら飲み込んでいく
全部飲み込んで、シンに次を催促しだす
小さな体はチャーシューの形になっていたが
段々と萎んで元の細い体へと戻っていく
その様子を見ていたシンが
太ったんではないかと小さな蛇と
ソナに問いかけた
小さな蛇は
そんな事はいいから次!と言った感じで
ピーピッ!と鳴いていたので
シンは大きめのハンバーグを皿に乗せてやると
小さな蛇はアグッと食いついて
幸せそうに目を細める
そんな様子を笑顔のソナの祖母が
お茶を飲みながらのんびりと見ていた
ご飯を食べ終わり、食休みをした後に
全員がプールへと向かう
「ホンマに行ってきてええん?」
「ええから行ってきぃて
トウカちゃんも来るんやろ」
「ほな!行ってくる!」
そんな会話をしてから
保健室からソナが元気よく駆け出していく
ソナの祖母はお茶を飲みながら
外のいい天気を窓から覗き見る
椅子の背もたれに体重を預けて
ギッと鳴らしてから、コップを机に置く
ピィ〜〜‥‥という鳴き声を聞いて
ベットの方を見ると
大きくなったお腹で満足そうに
尻尾をゆっくりと振っている小さな蛇が
ひっくり返っていた
「ホンマにもう‥‥
よかったなぁ‥‥ホンマに」
ソナの祖母はそう呟いた
思い蛇が生まれた
蛇族とされているゴーゴン族の女性が
想い人への隠しきれない気持ちが
形になって現れる思い蛇
形といっても生きてるのだ
対象となった想い人に贈る
思い蛇を贈られた者は基本的に受け取る事
贈られた者は必ず大切に育てる事
例え、それが叶わぬ愛であっても
思い蛇が生まれるという事はそれ程の事なのだ
一般常識とも暗黙のルールとも言われ
母が子に、子が子に教えていく
そう言ったもので、最初聞いた時は
恋をする姫の物語みたいに
聞いていた覚えがある
その時は朝早くに畑仕事をしていた
静かな郊外に住んでいて
毎朝の日課になっている
野菜を採って美味しい朝ご飯を作る
メニューを考えていたと思う
頭の蛇達がスッと駅に通じる道の方を見た
その方向を何気に見て駆け出した
孫の頭にいる筈の蛇達が道を進んでいた
ありえへんやん!
蛇達が主から離れるっちゅう事は
木が土から離れるっていう事と同じや
他からの栄養を摂れるかもしれんけど!
基本的活力が失われるっちゅう事や
よっぽどの事があったんか
よっぽどの事だった
8匹の蛇達がコチラを見てる
その背中に小さくて痩せ細った蛇が
動けなくなっている
すぐにわかった
思い蛇や
なんで思い蛇が?
なんでなんや?あの子が?
昨日も普通やったのに?
こんな状態になるまで?ほっといた?
私に向かって8匹の蛇が訴える
後生や!見逃したって!
黙って行ったらアカンって!
それはわかっとるんやけど!
この子が会いたいって!
メチャクチャ頼みよるんや!
こんなんは見てられへんねん!
私は見送るしかなかった
蛇達が言った言葉
相手は女で
絶対に手を出さないでくださいと
約束させられて孫は
ソナはどうしようもなくなってると
後、電車賃をくださいと言われた
そりゃあまぁ、あげたけどもな
どうしたもんかと家に戻って
キッチンで準備をしている旦那に話す
朝から料理の準備をしていると
畑から嫁が帰ってきたので声をかけた
何があったんやと
暗い顔をしていた
話を聞いて
嫁に孫の事を頼んで、すぐに車を出す
蛇達には駅までの道半ばで追いついた
最初は嫌がっていたけど
協力したる!相手を話せ!
そこに連れて行ったるから!
そう言ったら車に乗り込んできたので
聞いた相手の所へと急ぐ
開法学院の寮
玄関の外で寮長をやってる昔馴染みと会う
向かいながら電話で事情を説明していたが
「アッチもコッチもソッチもかい?
まぁいいよ!早く来な!
もうすぐ日課のランニングに出るからね
試合がある日も走ってる様な子だから
今から会えるのはそこだよ」
ホンマに助かる!
蛇達を預けようとしたが
「勘の鋭い子だからね
ちょっと挨拶でもしていきなよ」
しばらく説明を交えながら話していると
「おはようございまぁす」
「おはよう
朝からどうしたんだい?
気合いが入ってないね」
「そうですか?そちらの方は?」
「ああ‥‥ただの昔馴染みだよ」
紹介されたので
少しだけ近づいて手を差し出した
初めましてと言って握手する時に
後ろの髪へと蛇達が侵入していった
なんやろうな‥‥罪悪感がスゴイやん
めっちゃダマしたみたいになってるやん
朝から大声を上げて、ソナが起きてくる
2階から急いで降りてくるソナを
娘と共に捕まえて問い詰める
「そんなん言っても!
どうしたら良かったん?」
「思い蛇の意味は知っとるやろ
それに想い人に渡さんと死んでまう事も」
「でも!でも‥‥こんなバレかたって
もうええから!学校連れてって!」
「学校?開法学院?相手は?
女って言うとったけど」
「‥‥‥‥そんなんええから!」
「言わな連れていかんよ!」
「‥‥し‥‥シン・フジムラや」
「は?‥‥は?あの子?」
「そうや!悪いか!シン・フジムラや!」
確か麒麟族の子が力を解放した時に
なんや色々とめんどくさい事があった子か
「ほな‥‥中学を希望しとったんは?」
「ちゃう!それはちゃう!
もうええやん!学校に向かっとる筈やろ」
「旦那から連絡は入っとるけども
相手は女やで?意味はわかっとるんか?」
「そんなん言うても‥‥」
「まぁ‥‥手が無いわけでも無い‥けど
ブフッ!手も足もあらへん筈やのに
いらんもん付けてもうたな
ホンマは駄目でアカン事やねんで」
笑いながら何かを思いついた
その様子を見て察したのか
ソナの母親
娘も笑い出した
「なんなん?もうええやろ!」
「まぁいいよ
とりあえず行こか」
同性に渡す事はさて置いて
思い蛇を渡す‥‥いや
思い蛇が自分から行ってしまうやなんて
異常な程に強い思いが無いとできやんし
思い蛇が
あんな状態になるまで我慢させるなんて
この子も限界まで我慢したんやな
だから笑ってもうた
あの子の蛇達も思い蛇も
なんやメッッチャ元気やん
シンちゃんの髪に住み着いて
あんなに懐いてブフッ!
旦那の蛇達が
ウチに懐きよるのには結構かかったのに!
メッッッッチャ惚れとるやんウチの孫!
せやからと言うわけやあらへんけども
思い蛇をどうにかしようとした輩どもには
久々にマジでキレたなぁ
旦那がウチに預けとる蛇達を呼び戻してまで
抑えてくれんかったら‥‥
あんなモンで済まさんかったのにな
嫁がマジでキレとる所は久しぶりに見たわ
蛇達もキレとったから
まぁ‥‥俺も怒っとったけども‥‥
アレは正直に言うとチビってもしゃあないわ
相手側が泣きながら俺に礼を言うとったもんな
抑えてくれてホンマにありがとうって
「お〜い
大丈夫そうか?」
休憩時間に職場から嫁に電話をする
〔大丈夫やで
メッチャ食って、満足そうに寝とるわ
ウリウリ‥‥‥ピィ〜〕
「なんやぁ‥‥ダラしない鳴き声やな」
〔ホンマに幸せそうやで〕
「そら良かったわ
シンちゃんはどないしとるんや」
〔みんなとプールや
アンタが心配するような事は‥‥
もう少しやと思うけど、まだ起きとらんよ〕
「そうか‥‥すぐに言えよ」
〔わかっとる〕
嫁と話してるとポケットから
もう1つの携帯が鳴り出す
「続きは帰ってからで」
〔ハイハイ!ほな頑張ってや!先生!〕
嫁と会話を終了してから
ポケットから携帯を取り出して
通話をして、すぐ行く事を伝える
「さぁって、色々と頑張るか」
病院の屋上で背伸びをしたソナの祖父は
扉から建物の中に入って行く
ソナの祖母は旦那との会話を終了して
だらしなくひっくり返って
伸びている小さな蛇
マンジュちゃんを見る
シンちゃんがお腹いっぱいに食べては
脱皮を繰り返して
大きくならないのに
段々と白くなっていく小さな蛇に名付けた名前
シンちゃんは小さな蛇の
お腹がはち切れんばかりに膨れたのを見て
白い饅頭みたいだからって名付けたんやけども
なんかウチからしたら
その呼び名は
白い彼岸花みたいに思ってまうね
「アカンわぁ‥‥ウキウキしとる
ウチってば乙女やわぁ‥‥
それにしてもマンジュちゃんは
幸せそうやねぇ」
ソナの祖母は笑顔で
マンジュちゃんのお腹をカリカリとすると
ピィ〜〜♬と鳴いて
尻尾をピコピコと動かしていた




