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82話 真夜中の狂想曲

深夜に目が覚めて

上体を起こして周りを見る


全員が寝息を立てている事を確認してから

ソロソロと動いてシンの横に移動する


「ホンマに堪忍な」


トウカは小声でそう言うと

仰向けに寝ているシンの首元に

慣れた様に顔を埋めて抱きつく


ゆっくりと深呼吸をして

安心したように目を瞑りながら

今日に報われた事を思い出して涙ぐんだ



最初は見てみたいと思っただけ

ホンマにそれだけやった


正月に見れるかもとソナに言われて

神社の奉納がある時に行ったら見れた


見たかった着物を着てたから

駆け寄ったんやけど

見失ってもうて、一目しか見れんかった


せやけども

目に焼きついて離れんかった

見てしもたら、考えだしたら

それしか思い浮かばんようになってた


専攻科に決めたんは

ソナがファミリーの誘いが鬱陶しいから

どうせなら一緒に専攻科に行かへんと

言われたからやと思う


ウチの所にファミリーの誘いは来んかった

理由はわかっとる

中学入りたての時に

色目使ってきた相手に触られて

ガチ目にシバいてもうたからやと思う


オトンとオカンには迷惑かけたよってに

結構謝ったけど

無理なモンは無理やった


専攻科を選んだ時の手続きしとる時に

蜂族の子が訪ねてきた

専攻科の特権を私達の想い人に使わないで

との事やった


そこらに暗黙のルールみたいなことをして

牽制しとるのは知ってた

最初は女同士で?何言うとんねんとか

思っとったけど

規模と人数を見て察してしもた

周りにもこう思わせとるんやろなと

納得もしてもうた


そら牽制もしに来るやろ

ゴーゴン族も蜘蛛族も蜂族も

惚れてしもたらアカン事になるっていうのは

身を持って知っとる事やしなと

思ってた時もありました


ホンマに何を考えててもアカンねん

目に焼き付いたんは着物やったはずやのに

寝ても覚めてもシンになってもうてん


なんでなん!なんでやねん!

ウチは着物を目に焼き付けてただけやん!

どっちかっていうと

シンはオプションやん!

なんでオマケが勝つん?

オマケ目的で買うお菓子やあらへんねんで!


違う!一旦落ち着け!

ウチはそんなキャラとちゃうねん

落ち着いて喋らんかったら

お人形さんみたいで可愛いなぁとか言われる

クール系の美人さんとか

大和撫子とか言われとった筈や

喋らんかったらな

手を出さんかったらな

なんや色々と矛盾しとる?やかましわ!


この頃は心も荒れとった

学ぶ先がじいちゃんの所じゃなくなって

あの嫌味ったらしい

自称じいちゃんの1番弟子の工房に決まった


その理由が

いつかウチが作りたいって言うた着物が

じいちゃんのライバルである人の

作品やったからとかやった


ウチはそんな事も知らんと

じいちゃんの前で色々と語ってもうた

夢見るみたいに長々とシンの事を‥‥

ちゃうわ!着物の事や!

いや‥‥ちょっとは言うたかもしれんけど

たぶんな‥‥うん、たぶん


3月から工房に入って

4月にはアカンようになってもうた


正月に見た着物を1月からコツコツと作って

3月からは工房の事が終わってから

やってたら見られた

確かに工房の方に持ってきてやっとったから

見られたのは仕方ないんやけど

散々に貶された


じいちゃんの事まで出されて

キレかけたけども我慢した

ウチが言うとった事を

じいちゃんは我慢してた筈や

ウチが実力もないんが悪いんや


何度も持って来いと言われて

その度に貶されて

こんなモンしか作れんのか

流石はジジイの孫やな

コツコツ作って自慢でもしたいんか

鬱陶しい程にしつこく言われた


もうアカンと思った時に

狼族の子

クナがシンの周りに参加してるって

聞かされた


なんでなんよ!

入るのを止めにきたんちゃうんか!

なんで入れとるんや!ほな‥‥ほな!

1回だけ!もう1回だけ!ええやんな!


去年から密かにやっとった事

寮に忍び込んで、シンの寝顔を見る

誤解せんとってな

最初は違ったんやで


着物ないかなぁとか思って

でも、いきなり訪ねて行っても

ウチみたいなんは怖いやろうしな

だからな、ちょっと見たら帰るつもりやってん


でもなんか寮長を避けんのとか

シンが不意に振り返ってくんのから

隠れたりすんのが楽しくなってしもてたし

なんか無防備な寝顔とかいいやん!な!


蜂族の子が訪ねてきた時にヤメたんやけども

ソナもホッペにチューとか

寝かせてたシーツ持って帰ってるとか

そういうのを知ってもうて

アカンとはわかってても

シンの寝顔を見に行ってもうた


寮長はわかってたんやと思う

ウチが我慢しきれん様な事になる前に

こういう事をしとるって

だから、見逃してもらっとるんやと思う


初めてシンに抱きついた

よう寝とったし、ええやんなと思って

アカンと思った

気付いたら噛みつく一歩手前で

我慢しきれんと思った時に

シンに頭を優しくポンポンとされて

撫でられてもうた


もうアカンやん!マジで勘弁してや!

不思議と落ち着いて

ゆっくりと深呼吸しながら

短い時間やけど熟睡してもうた


何回も何回も

ホンマにわからんぐらいに忍び込んだ


待ちに待ったシンと初めて喋る時に

ウチが作った着物を慌てて着て行った

何を言われもいい

こんな文句ばっかり言われたモンや

何言われてもええわ!

最後はシンに何か言って貰って捨てる!

そう決めとったのになぁ


真冬のお布団みたいに感じるかなぁ


着物の評価としては

どうやねんやろうなぁ

ホンマに!ホンマにやで!


興奮した時に頭をポンポンされた

なんで?寝てて覚えてない筈やん

まさか起きとったんか?ワレぇ〜‥‥

なんやもうええわ


シンがプロに聞きに行こうって言い出した

ええし!捨てるんやから!

え?見れるん?あの着物を?

は?10着?そんなに?


案内された部屋で見た時に納得した

そらそうやんな

冷静に考えたら‥‥あんだけの魔術を

1つの着物に編み込めんもんな

そうやんな‥‥無駄やったんやな

ウチがしてた事は何やったんやろうな

何遍も何遍もやり直しては考えて

それに‥‥何から何まで雲泥の差やんけ


えっ?はい

いや‥‥シン?もうええって

わかったからな

そんな事を言ってくれたんはシンだけや

もうええて


弟子になって欲しいって言われたんやけど?

なんか工房から勝手にしろ!って

専攻科に報告しとくからな!って

じいちゃんから

何も成長せんかったら辞めさすからな!って


優しかった

今まで勉強して試しとった技術を

丁寧に1つ1つ解説して教えてくれた

それらを繋ぎ合わす基礎の部分も


やりたい事をしていいって

技術や魔術は教える必要はないけど

それを活かす方法のヒントを

じっくりとわかるように何度も教えてくれた


着物を作りたいと思ったんやけど

トラウマなんやろうかな

躊躇してたら、師匠に

浴衣とかどうだろう?時期も良いしねと

言われたので全員分を作った


無心で集中して‥‥

偶にシンに抱きついて深呼吸して抱きしめた


祝勝会の時に完成したのを

みんなに着てもらって

外で花火してる時に小声で


よぉできとる

ワシの引退も近いかもな


後ろを振り向いたら

じいちゃんとばあちゃんが

置いてきた筈の甚平と浴衣を着とった



アカンねん

ホンマにアカンねん

止まらんようになってまうねん


寝ているシンに抱きついて

トウカは息が段々と荒くなってくるが

シンがトウカの頭をポンポンとしてから

撫でると穏やかになっていく


これはこれでアカンねん

寝てまうぅぅ‥‥いや!

アカン!コレはええけどぉぉ‥‥

離れなアカン!離れたくないけど!

今寝たぁらぁぁ‥‥‥すぅ


「トウカ?」


シンに耳元で呼ばれて

ビクッとしてトウカは起きる


「ごめん‥‥起こした?」

「いや‥‥暑いから‥‥泣いてる?」

「いや‥‥ちゃうねん

コレはな‥‥思い出し泣きちゅうか」


トウカが言うと

シンはトウカの頭を撫でながら言う


「そうなんだ

みんな起きてるから

なんかやられたんだと思ったけど違うんだね」

「んぃ?お?起きとる?」


トウカは落ち着いて周りを見ると

暗闇の中で全員が

トウカとシンを見下ろしていた


「あのさ?流石に夜はヤメにせぇへん?」


どの口が言うとんねん!


同じ言葉を全員がハモって

2人目掛けてダイブした


もちろん叱られた


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