77話 定番の絡み方
シンは体育館の裏で
宗鳳学院高等部の改造制服を着たギャルと
普通の制服を着た優等生に絡まれていた
「んで?どうなのよ」
「どうなんだ?シン」
全国大会の3回戦が終わった後に
体育館を出た所で2人に捕まり
引き摺られるように体育館の裏に
連れて行かれた
「何が?どうなのよ」
「シラばっくれないでいいし
アンタはアタシ達の時に
右で打ってなかったじゃん」
「え〜‥‥そうだったっけ?」
ギャル姿の紫尾にシンは詰め寄られるが
半眼でシラを切る
「それもあるが
紫尾が本気でやってないとも言っていた」
「可愛い後輩を育てる為にやってんでしょ」
黄天が聞くと紫尾がシンに指を
指しながら得意顔で聞く
聞かれたシンはジッと2人を見て
ため息を吐きながら答える
「去年は完璧じゃなかったから
右で打たなかっただけだし〜
それに‥‥こうやって聞いてくんのは
黄天も紫尾も可愛い後輩の為なんでしょ」
シンに指摘されて2人はニヤッと笑う
「私達に頼りっぱなしだったあの子達が
開法学院に負けた後に化けに化けたんだ」
「ウチの今年はヤバいんだから
覚悟しておきなよ
なんせ」
「お互いにネタバレ禁止!
でいいんじゃない?」
黄天と紫尾が得意気に語るのを
シンは片手を上げて止める
「そうね」
「まぁ‥‥そっか」
黄天と紫尾は
何かを納得するような雰囲気になる
シンは2人に背を向けながら
「もう何もないんなら行くね」
「いい!負けんじゃないわよ!」
「どっちの味方よ」
「宗鳳学院とあたるまでの話!」
シンは紫尾とのやりとりの後に
2人の方を振り向いて手を振り歩いて行く
「どうなんだ?実際の話は」
「アンタだって、そう思うんでしょ」
「負けて欲しくはない」
「どっちに?」
「オマエが思う方だよ」
「ズルいなぁ‥‥そういうの」
黄天と紫尾はケラケラと笑いながら
小さくなっていくシンを眺めていた
駅前のロータリー沿いの道を
口髭を生やし、少し悪そうな風貌で
ハンチング帽を被った紳士風の年配男性と
ハイウェストスカートにベストを着こなして
つば広の帽子を深く被った淑女風の年配女性が
腕を組んで仲良さそうに歩いていた
年配男性がゆっくりと足を止める
年配女性も足を止めて
帽子のつばを少し持ち上げ
年配男性の見ている先を見ながら話しかける
「いいと思うわよ」
「挨拶の前に挨拶をする事になるが」
「そういう礼儀があってもいいと思うわ」
「そうと決まれば彼女を待たしては失礼だ」
「待ってはいないと思うわよ」
2人はゆっくりと歩いて
駅前を足早に歩いている
小さい蛇を乗せた彼女の方へと向かって行った
「は?誰よ!アンタらは」
「いいから!その蛇を渡せ!」
「まぁ、いきなりやから
わからんと思うけども
頭に乗ってる蛇を俺に渡す
それだけでええんや」
シンは目的地に向かって足早に歩いている時に
知らない男性2人に名前を呼ばれた
無視して行こうとしたら
その内の1人に肩を掴まれて
もう1人に回り込まれて前後に挟まれていた
「渡さなきゃならない理由がわかんないわね」
「価値も意味も知らないだろ!
人族には過ぎたモノなんだよ!」
「女が持ってても意味ないからな
俺たちが使って有効活用したろぉって話や」
シンが頭を見上げると
姿は見えないが
怒ったように小さな蛇が
ピー!ピー!と鳴いている
「なんか知らないけど
この子に価値とか有効活用なんて
考えた事なんてないわよ」
「ソナから貰ったんだろうが!
考えた事がないなら
俺達が有効活用してやるって言ってんだ!」
「おい!ソナ呼びは、まだやめとけ!
とにかく、俺らは蛇さえ貰えりゃ
オマエなんかに用は無いんや」
シンの前に立っていた男が動いたと思ったら
素早く右手を動かして
シンの頭に乗っている蛇を掴もうとするが
その右手首をシンが左手で掴んだ
「なんや?抵抗すんなや
人族でちょっと有名やからって
調子のんなや」
「アンタらみたいになった覚えは無いけど?
それに人族の‥‥なんですか?」
シンは掴んだ手を離して距離を取った
いつの間にかいたという感想
シンの前にいる男の首に手を当てて
険しい顔をしている紳士風の年配男性
シンの後ろから近付こうとしていた
男の方を見ながら、淑女風の年配女性が
シンの後ろから肩に片手を優しく置いている
「さてさて
随分と威勢の良い若者達だが
天下の往来で、女性に対して
その態度は恥ずかしいと思わんのかな」
「オマエ達は俺らを知らないのか!」
「誰なの?ではなくて
どう思っているのかを聞いてるんです」
「どっか行けや!年寄りが!
俺らはソイツに用があるだけや!
オマエらは関係ないやろが!」
男達の言い方に年配男性と年配女性が
目を細めて男達を見る
シンの髪の毛の中に
小さな蛇が素早く滑り込む
シンは逃げたかった
しかし、掴まれた肩が痛い
指がネジ込まれるような痛みに
肩を掴んでいる手を何度も細かく叩く
「それはすまない
私達は無法を許す
そんな優しい心の広い年寄りではなくてな」
「こちらもそちらも相手の話を聞かない
では、客観的に見て
女性が持つモノを強引に奪う
そんな不埒者に罰を与えましょうか」
シンの前では
紳士風の年配男性が険しい顔のままに
男性の首を持って地面へとゆっくり押し付けて
男の耳元で何かを呟く
シンの後ろでは
なんか変な音が1回、2回と鳴る
シンは振り返れなかった
「では、行きましょうか」
「そうだな
誰だかわからんが頑張れよ、若者よ」
淑女風の年配女性が
シンの後ろから歩くように促しながら
笑顔で紳士風の年配男性と話す
歩く時にシンが男性2人を見ないように
視界を遮るようにして歩く
「あの‥‥アナタたちは」
「シン・フジムラさんだったかな」
「私達は原種なのよ
わかってくださると嬉しいわね」
「私の知り合いの血縁って事ですか?」
「そうだ!クナちゃんのお爺様とお婆様だ!」
「あの子はお爺様とかは
呼んでくれないんですけどね」
シンは何かを思い出すような仕草をして
2人を見るが、悩み出す
2人はゆっくりと歩きながら
シンの行動を微笑ましく見ていたが
シンの次の発言で凍りつく
「ああ!魔改造チャリ男と
スケバンに憧れたちっちゃい女の子!
‥‥んぃ?」
シンは思い出したように叫ぶと
淑女風の年配女性に
両ホッペを素早く摘まれていた
「誰が?その事を教えた?」
「どこかしら?どこで?私達の事を?」
「写真をル‥‥シャチ族の子が持ってて」
「アイツか‥‥」
「いえ‥‥たぶん‥‥アイツらね」
ホッペを離してもらったシンが言うと
クナの祖父と祖母が納得したように頷くと
シンの頭をグリグリと撫でながら釘を刺す
「色々と思い出したくない事もある」
「あんまりそこらで言わない方が身の為よ」
「え?でも、ちっちゃい時の結婚式は
すっごく可愛‥‥‥まぁ‥‥はい」
シンの頭を撫でる音が
ゴリゴリに変わり始め
シンの髪の毛から蛇が飛び出してくると
涙目で首に巻き付いて
余計な事を言わないで!と抗議する
シンはホッペを突いてくる蛇の頭を撫でながら
少し顔を赤くしたクナの祖父母に
他に何を見た!とか
何もないでしょうね!とかを言われるのを
笑顔で流しながら歩いていると
目的地に辿り着いた
「なんだ?目的は菓子か?」
「そうです
クレープと悩んだんですけど
この子も私も‥‥最近なんですけど
凄く美味しいドラ焼きを食べたから
なんかコッチを食べたいなぁと思って」
「へぇ?そのドラ焼きはどこで?
友達の家とかかしらね?」
クナの祖母に聞かれた事に
シンが頷くと、蛇がピー♬と嬉しそうに鳴く
「ならまぁ‥‥ここでは買わん方が良い」
「そうねぇ‥‥コッチにしときなさい」
クナの祖父が口髭をイジり
シンに優しく微笑みながら
目の前にある店に入るのを遮り
クナの祖母が手を少し振ると
クナの祖父母が紙袋とケーキを入れる箱を
2つずつ持っていた
「コレをやろう
なに‥‥遠慮などするな」
「コレも持って行きなさい
よく味わって食べるのよ」
「そうだぞ!それになぁ
おかわりが欲しかったらクナに言うと良い」
「それが良いわね
ウチは色々とあるから
クナちゃんに好みを教えておいてね」
「えっ?いや?こんなに?」
シンが困惑していると
クナの祖父母は持っていた
紙袋とケーキを入れる箱をシンに渡して
シンに背を向けて歩き出す
「ちょっと!こんなに貰っても」
「アッチから来る子らと食べると良い」
「向こうからも来るから、もう大丈夫よね」
クナの祖父母がスタスタと歩いて行くのを
シンは最後まで見送る事なく
素早く2人の背中に頭を下げて
2つの紙袋と2つのケーキを入れる箱を持って
早歩きにその場を離れる
バレーの全国大会3回戦が終わり
次の日の移動日に開法学院に帰ってきたので
自分へのご褒美と
頭の上で小さな蛇が顔をゆっくりと
頭にスリスリしながら
ご褒美は甘い物が欲しい!と言った感じで
ピィー!と鳴かれた
ちょっと行って、すぐに帰ってこようとして
色々と巻き込まれた
逃げるように帰って来たシンだが
開法学院の門前で捕獲された
捕まったシンは彼女達に事の経緯と言い訳を長々と語り
紙袋とケーキ入れる箱を渡す
ケーキを入れる箱の1つが
ウゴウゴと揺れており、箱を開けると
太くなった小さな蛇が満足そうに
ピィ〜〜♬と鳴きながらひっくり返っていた




