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76話 我慢は良くない選択肢

「わかった?クナ」


2セットを連取した後

3セット目が始まる前にシンはクナに言う


「うん!わかったよ!シン!」

「じゃあ‥‥モク監督

交代してもいいですか?」

「3セット目の途中からならいいぞ!」


モク監督の返答に

えぇって感じの顔をシンはする

そんな顔をしているシンにサリが詰め寄る


「本気でやりなさいよね!シン!」

「やってないって事はないと思うけど」

「右で打ってるのに

アレだけの変化しかしないって

爪灰の真似事みたいじゃないのよ」

「なんでアレだけしかしないって言うのは‥‥」


シンが何か言おうとして考え込む

アヤノとリンは

その様子を見ながら、次の言葉を待っていた


「アレぐらいで取れなくなるとは

思わなかったからかな」

「どういう事なんですのよ」

「2セット目にカウンターとか

考えてくるかなっと思っただけ」

「それを警戒して

全力でやらなかったの」

「まぁ‥‥そんな所かな」


シン、リン、アヤノの会話を

モク監督は黙って聞いていたが


「ならイケそうか」

「1セットくらいなら

クナ!イケるわよね?」


モク監督とシンが話すと

クナが、ハイッ!と元気よく答える


「シンとクナが交代だ!

駄目だと判断したら

またすぐに交代だからな!

全員!気合い入れていけ!」


モク監督の言葉に

クナとバレー部員達がハイ!と答えた



〔おかしな光景になっております!

3セット目が始まって

開法学院の蠍ちゃんと代わって入った選手!

1セット目とは別人のような動きで

狼敬中学に点を与えない!

そして、攻撃でも翻弄しております!

さぁ!赤壁が構えて打ち出すボールを

飛んだ狼族の選手が打ち返して!入った!

蠍ちゃん以外にもできる選手がいたのか!

それに蠍ちゃんと違って、連続で正確に!

狼敬中学のコートを打ち抜いていく!

開法学院が3セット目もリードしています!〕



「シンちゃんはキチンと

わかってるみたいだね」

「そうだ!こういうのが大事なんだ!

こういうのをやっておかねえとな!

特に家族にはよ!」


画面越しにバレーの試合を見ながら

気分良く言ったルカの祖父母が

杯に入った酒を呑む


「どんな形にせよ

どんな場面にせよ

心配しちまうのが家族ってもんだからな」

「過保護すぎんのもイケねぇがな」


アヤノの祖父とウイの祖父が

煙をゆっくりと吐きながら

開法学院の追加点が入るのを見ていた


「シンちゃんは原種との付き合い方が

本当に上手くなっていくね」

「周りに騒がしい奴があんだけいりゃね」


リンの祖父とポーの祖母が

焼肉をつまみながら酒を呑む


「けどまぁ

こういうのをゆっくり見ていられるように

なってきたのね」

「ワシらも落ち着いてきた証拠かのぉ」


アヤノの祖母は

お茶が入ったコップを見つめ

双子の祖父は酒を呑んでいる


「アッチの結果はどうなってるの?」

「気になるわ!どうなったの?」


双子の祖母とウイの祖母がポーの祖母に聞く


「ああ‥‥次は開法学院でやるだとさ」

「だいぶ素っ気ないわね」


ポーの祖母が携帯を見ながら答えると

アヤノの祖母がため息混じりに言う


「それにしても二刀を教えたのは

どういった風の吹き回しかしら?

よぉく似てるわよ、アナタと」

「別にどうって事ないよ

相手してたら勝手に覚えただけさ」


サリの祖母が聞くと

ポーの祖母は笑みを浮かべて酒を呑む


「二刀で相手しなきゃならんほどとはのぉ」

「そりゃあ!相手が気の毒だぜ!

なんせ!伝説のお墨付きだからなぁ!」


双子の祖父とルカの祖父が笑いながら

ポーの祖母に向かって杯を掲げた



私達だって小学生の時は

それなりに活躍して

二つ名をもらって成績も残して

妹に追いかけてもらえる姉であったはずだった


中学に入ってからは、ずっと補欠だった

なんでかはわかっている

他がスゴイのもあるけども

私達が敵わないのだと

勝手にわかってしまったのだ


そんな時に妹が全国大会で

3位を獲得してきて

憧れが取れなかった3位だと喜んでいた


憧れが誰かなんて聞かなくてもわかっている

人族が団体競技で

種族違いの二つ名までもらって

妹が同じような事をやって

全国3位にまでなったのだ


シン・フジムラ

話題になっていたが

私達の間では世間とは違う形で話題になった


バレーなら活躍できる


先輩にも同級生にも敵わない

後輩にも敵わない奴が入ってきたら

燻ったまま

何もできないままに

中学時代を過ごしてしまう

私達は妹とバレーをやってた経験がある

悩んだ末にやる事にした


私が一生懸命にやってるのは

そんな簡単なモノじゃない


妹は

クナは真剣に私達にそう言っていたが

バレー部に入ってすぐにレギュラーになった


私達は調子に乗っていたのかも知れない

クナは開法学院のスポーツ推薦で入学した

私達は止めたのだが聞かなかった

壁に挑戦しに行った

憧れを超えに行ったのだと思った


後輩にクナが負けた相手が入ってきた

スゴイ子だと思ったけど

わかってしまった

レギュラーになりたくて

ここに来たんだろう


爪灰は腐ってはいなかった

私達だってバレーに移る時に

覚悟をしてきたんだ

死にものぐるいで練習して

アッサリと全国にたどり着いた


爪灰の力が大きい

それはわかっていたが

こんなもんなのかと思うほどだった


全国大会の1回戦、2回戦は

接戦になったが突破できた


3回戦

開法学院とやる事となり

クナがいて、蠍がいなかった


「チャンスです!先輩!」


爪灰が連続で点を重ねていく

クナは爪灰のボールを取れなかった


爪灰の打ったボールは

相手の手元で変化する

私達だって取るのに

今でも3回に1回は失敗するんだ


クナが膝をついて悔しそうな顔をするのを見て

選んだ群れが悪かったんだ

いつでも帰ってきなよ

慰めてやるから

そう思っていたら

シン・フジムラがクナと交代した


コイツがクナを誑かした奴だ

クナはあんなに弱々しくなかった

お前がいなければ開法学院に行く事もなかった

今頃は私達と一緒にやっていたんだ

オマエが負ければクナも目が覚めるだろ


あっと言う間の2セット終了だった

訳がわからないくらいに

雷姫が赤壁が緑壁が

開法学院が機能し始めた


1点も入れれなかった


爪灰が打ち込んでも打ち込んでも

赤壁と緑壁の双璧が止めるか

シン・フジムラがボールを上げる

上げたボールを速攻で

雷姫か双璧が打ち込んでくる


それだけでも止められないのに

シン・フジムラが打ち込んでくるボールは

1回目は変化しなかった

2回目からは爪灰の‥‥いや

変化の仕方は爪灰より多彩でエグい


折れかけてる爪灰

私達も諦めかけた時に

シン・フジムラがクナに交代した


明らかにナメている


今までで1番怒りを覚えた

そんな瞬間だったかもしれない

もう終わったから

振り返って考えてみるとそう思える


3セット目は開法学院に取られて負けた

何度も爪灰が点を取ってくれたが

それ以上にクナが打ったボールを

私達が取れずに点を取られてしまった


セットの半ばからは爪灰が点を取れない程に

クナが爪灰のボールも取っていた


妹の成長は悔しいが嬉しい

あんな奴に誑かされずに

私達が育てていたら

私達の姿を見て成長していたら

もっと‥‥もっと‥‥そう考えたけれど


悔しいけど

これほどのクナは見れなかった

なんて顔で笑うんだよ

安心しちゃうじゃない


ろくでもない奴に憧れて出て行ったと

アナタが選んだ人族を憎んでもいたんだ


もう憎めないけど

シン・フジムラを鬱陶しくは思う

大事な家族を変えてしまった

マジで鬱陶しい


あの可愛い妹を返して欲しい

私達の後ろをチョコチョコと付いてきて

お姉ちゃん達はスゴイって

可愛い笑顔で言ってくれた妹を返してよ


けどまぁね

ちょっと引き攣ってるけどさ‥‥

ホントにステキな笑顔なんだよ!クナ!



「あり?クナは?どこ行った?」


試合が終わって

ベンチの荷物を持とうとしたアヤノが聞くと


「トイレですわね」

「走って行ったけど間に合うかしら」

「まぁまぁギリだったわね」


リン、サリ、シンが

少し多めの荷物を持ちながら

呆れたように体育館の出口へと歩いて行った




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