準決勝の相手
思っていたよりも試合が早く終わったので、オレは、早めに昼食を取ることにした。
次の試合までは、二時間以上ある。
観覧席にいたヒロと合流し、外に食事に行くことにした。
アヤの姿は見当たらなかった。
ヒロの隣で試合を見ていたらしいが試合が終わるとすぐにどこかに消えてしまったらしい。
「せっかく、アヤちゃんとお近づきになれると思ったのに。」
ヒロは悔しがっていた。
オレとしては、アヤの兄を打ち負かしたばかりで、正直アヤとは顔を合わせづらいと思っていたので、アヤがいないのを知って少しほっとした。
そこに、綾瀬ミカが現れた。
「ハヤタくん、見てたよ。すごいね。ケンさんを相手にしていなかったね。」
「そんなことないよ。ギリギリ勝てたって感じかな。」
オレは、正直に思ったことを口にした。
アヤがいなくなってくれていたのは幸いだった。
アヤとは本当に友だちにすぎないのだが、これまでの流れで、ミカがそれを簡単に信じてくれるとは思えない。
「これからヒロとランチに行くんだけど、ミカも一緒にどう?」
オレは、ヒロに相談もせずに、ミカを誘った。
「行きたいのはやまやまだけど。先約があるのよ。」
ミカが申し訳なさそうに言った。
「先約って?」
「ミツキ先輩と一緒にランチする約束をしているのよ。」
「ミツキさんと?」
「そう、さすがにハヤタくんは、いくら師匠とはいえ、次の準決勝で対戦するミツキ先輩と一緒にランチはしないでしょう。」
「へっ、次の対戦相手はミツキさんなの?」
「なに、ハヤタくん、自分の対戦相手も確認していなかったの。」
「勝てるかどうかなんて分からなかったので、とりあえず、準々決勝の相手以外見ていなかったよ。」
「ミツキ先輩、ハヤタくんとの対戦、かなり楽しみにしているみたいよ。私も、すごく楽しみだけどね。」
簡単に言ってくれるものだ。
さすがに、師匠と戦って、簡単に勝てるわけがない。
ミカとの対戦のための特訓を受けていたとき、ミツキさんに対する最終的な勝率はせいぜい、四割程度だった。
しかも、ミツキさんが本気を出していたかどうかすら分からない。
「ハヤタくん、勝ってくれるよね。」
ミカが悪戯っぽく微笑みながら言った。
「善処します。」
オレは、冗談ぽく返したが、心中は穏やかではなかった。




