準々決勝
そして、大会二日目の日曜日。
この日も、オレは、誘いもしないのに自宅まで迎えに来たヒロと連れ立って、KAZ本部道場の建物に約束の時間の一時間前には到着していた。
外は、真夏の強い日差しが降り注ぎ、半袖のTシャツ一枚にデニムのハーフパンツという服装でも、少し歩くだけで汗が噴き出してくる。
おそらく外気温は、摂氏三十五度を超えているはずだ。
建物に入ると、空調が効いていて、汗が徐々に引き始めた。
オレは、一階の事務室前の電工掲示板に映し出されている対戦カードを確認した。
どうやら、準々決勝の四試合は、同時に四ヶ所の競技室を使って行われるようだ。
四階から七階までの各階にあるAの競技室が会場となっていた。
オレは、その中から自分の名前を探した。
(小早川ケンVS姫野ハヤタ)
オレは、七階のA競技室に、自分の名前を見つけた。
七階のA競技室は、前回、オレが綾瀬ミカと対戦した競技室だ。
まさか、またここでKAZをやることになるとは、前回の対戦が終わったときには思いもしなかった。
「なんだ、ハヤタ、前と同じ競技室じゃん。縁起がいいな。」
ヒロが、お気楽に言ってくれる。
「じゃあ、オレの代わりにお前が戦ってみるか?」
オレは、少し意地悪に言ってみた。
「バカ言え、オレが出たら、ほんの数秒で負けが確定するぞ。」
ヒロの言うことは、間違いがない。
ベスト八に残るような競技者は、これまでに優勝経験のある世界レベルの競技者ばかりなのだ。
オレは、ミカがこの大会にオレをエントリーすると言った日の数日後には、ミカから、春にKAZ本部の事務局の発表した競技者のランキング上位十名、トップテンのこれまでの試合の動画を借りて、片っ端から観ていた。
当然、このトップテンの中には、「松村ミツキ」、ミツキさんも入っている。
そして、さきほど一階の事務室前の電工掲示板に映し出されている対戦カードで、オレ以外の七名を確認したところ、全員、オレが研究をしたトップテンの中にいた。
この競技では、基本的に番狂わせないらしい。
オレは、自分の対戦相手の「小早川ケン」については、その名前に覚えがあったのだが、どうしても思い出せないでいた。
思い出せないものは仕方がない。
オレは、七階のA競技室に向かおうと、ヒロとエレベーターに乗り込んだ。
そエレベーターの扉が閉まろうとしたとき、1人の女の子が慌てて乗り込んできた。
「ギリギリセーフ!」
その女の子は、オレたちの方を見ながら、笑顔で言った。
よく見ると、それは、オレの中学時代からの女友だちの「小早川アヤ」だった。




