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訓練終了

 次の日も、オレは、同じようにミツキさんから実戦形式のレクチャーを受けた。


 昨日は防戦一方だったが、少しずつ要領を掴み始めたオレは、回を追う毎に攻撃に転じる場面が増えていった。

 そして、その日の午後以降、十回に一回は、オレがミツキさんに勝つまでになっていた。


「今日は、これぐらいにしておきましょう。本当に、あなたって子は、すごすぎるわ。まあ、それはこの実戦形式のレクチャーに入る前から分かっていたことだけど、実際にこうやって闘ってみると、ハヤタ、あなたはかなり人間離れしているとしか言いようがないわね。」


「師匠のおかげです。本当に六日間、ありがとうございました。」

 オレは、丁重にお礼を言った。


「まだ、スキルを全く教えていないから、ハヤタさえよければ、連休が明けてからも時間を見つけて教えてあげてもいいわよ。この分だと高校生チャンピオンにあなたが勝つというのも、まんざら夢ではなくなってきたからね。」


 オレにとっては願ってもない申し出だったので、当然、オレは二つ返事でお願いすることにした。

「師匠、是非、お願いします。」


「分かった。じゃあ、また、日程なんかは追々調整しましょう。それはそれとして、ともかく、今日で、六日間のレクチャーが終わったんだから、これから二人で打ち上げに行きましょう。カラオケで朝まで歌うから付き合いなさい。もちろん、ハヤタのおごりでね。あっ、心配しなくても、私、明日も有休取ってあるから。」

 ミツキさんと違って明日から学校のあるオレとしては、このミツキさんの申し出を断りたかったが、貴重な連休をオレのために潰したくれたミツキさんに対して、そんなことをできるわけはなかった。



 結局、オレは、朝までミツキさんとのカラオケに付き合う羽目になった。

 オレは、自宅に戻ると、汗でじっとりとした身体のままでいるのは嫌だったので、シャワーだけは浴びて、すぐに学校に向かった。


 教室に入ると、ヒロがニヤニヤした顔をしながら、オレに近づいてきた。

「姉貴との愛の六日間はどうだった?」


「ああ、聞いていたとおりのスパルタ方式だったけど、とても助かったよ。」

 オレは、ヒロの冗談に応じずに、素で返した。


「そういうことを言ってるんじゃなくてさ、お前、昨晩から今朝までずっと姉貴と二人きりでいたんだろう?それで何もなかったのかよ。」


「ああ、師匠は、一晩中、一人でアニソンを歌っていたぞ。それもアルコールなしで。」

 オレは、ヒロの下世話な質問にも動じることなく、素で返した。


「面白くない奴だな、お前は。じゃあ、少なくとも姉貴は、ハヤタの『運命の女性』ではなかったんだな。」


「ヒロ、お前こそ、何を期待しているんだよ。そりゃ、師匠は綺麗な人だけど、十歳も年上なんだぜ。さすがにそれはないだろう。」


「それを聞いたら、さぞかし姉貴が悲しむぞ。あれで、姉貴はハヤタのことがかなり気に入っていた様子だったからな。」

 ヒロが、冗談とも本気とも取れるような口調で言った。



 その後、ミツキさんは、約束どおり、仕事が終わってからの時間や仕事の休みの日を使って、オレにKAZのスキルを教えてくれた。もっともそのレクチャー方法は、全て実戦形式であったが……。


 しかし、オレは、そのおかげで短期間でスキルを身に付けることができた。

 スキルの多くは、仮想空間だからこそ実現するものであった。

 その中でも、オレが気に入ったスキルは、現実の動きを数倍速の速さに変換できるスキルと、攻撃が相手にヒットする瞬間にその打撃力を倍増させるスキルであった。


 オレは、このスキルを身に付けたおかげで、それまで十回に一回であったミツキさんとの対戦勝率を、十回に二~三回にまで向上させることができた。


 それから、さらに約二週間、オレは、ミツキさんの計らいで、KAZ本部道場の練習場を借してもらい、自主トレーニングを重ねた。

 これぐらいで、高校生チャンピオンの綾瀬ミカに勝てるようになったかどうかは甚だ疑問ではあったが、ミツキさん曰く、勝算は五割はあるだろうということであった。


 そこで、オレは、ここらで綾瀬ミカと勝負をするための行動に出ることにした。


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