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紗奈とノスリの旅  作者: 槌谷紗奈絵


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2/5

神犬と黄金勾玉

2話

紗奈は、キジが落ちたあたりまで行って耳を()ませた。


もがく羽の音が痛々しい。ノスリの音だ。

「なんだってこんなことになるんだ?」

(から)んだツルを丁寧(ていねい)にナイフで切りながら足から外した。


自由になったノスリは、体をブルっと(ふる)わせて上目遣(うわめづか)いに紗奈を見た。


「あー、もう分かったよ。仕方(しかた)ないなー。(ちが)うの()るか?さっきのキジはきっと元気になるよ。君は腹が減ってるってか?」


紗奈はノスリを指さして言った。


食べ物に時間をかけてはいられない,進まなくては。

紗奈はもっと慎重(しんちょう)にしかも機敏(きびん)に動いた。


ノスリを袋に入れて(かつ)ぐと谷に降り、カエルや岩魚(いわな)(つか)まえてノスリに食べさせた。


自分の分の魚と皮袋に水もたっぷり入れて準備(じゅんび)(ととの)

それから遠吠(とおぼ)えが聞こえた方向にある山頂(さんちょう)に向かって登り始めた。

いくつ山を()えたら辿(たど)り着くのか。

紗奈には、まだ方角しか分からない。


紗奈は、ソレルや踊り子草(おどりこそう)をちぎって食べながら、前に進んだ。

()が高く,紗奈は汗を(ぬぐ)った。

やっと1つの山頂まで登ると開けた景色を見た。


山は(つら)なっていたが、岩の多い山頂もあるし,木に(おお)われた所もある。紗奈が登った山は一際(ひときわ)高い山だったらしく(あた)りが一望(いちぼう)できた。


ここなら夜も月に照らされて良く見えるはず。

しばらくはここで待ってみよう。

きっと何か(つか)める。


夜になるまでに野芥子(のげし)やナズナを()んで、

いつも袋に入れている小さな(なべ)()でておいた。

谷で()った魚を焼いて空腹を()たした。


ノスリはまだ()ているようだ。


ほっといて()りに出よう。

腹が減っては(いくさ)ができぬからな。

紗奈は弓と矢を持って立ち上がった。


ノスリが目を()ますと遠くに紗奈が狩りから帰ってくるのが見えた。切られてスケスケになった羽はすっかり(ととの)い、上空から迎えに行って肉をねだる。


紗奈は「もう飛べるじゃん!治るの早くねぇ?」と口を(とが)らせながらも、

ノスリに獲物(えもの)を分けて食べさせた。


「さて,作戦を()っておかないとな。」

紗奈が起こした火に(まき)()しながら考え込むのを見てから、ノスリは空高く()い上がった。

どこか遠くに遊びに行ったのか。


紗奈の上を旋回(せんかい)して戻ると

「あのー,ぼくも考えるよ。」

随分(ずいぶん)と間が空いてから言った。

「なんだよ,(おそ)いな。今晩、遠吠えが聞こえたら場所を見極(みきわ)めないとな。甲斐犬(かいけん)に気付かれないように偵察(ていさつ)してきてくれるか?」

「そうしようと思ってたよ。紗奈の世話になるばかりじゃ悪いもん。」

「おー!そんな気持ちがあるんか?よしよし。」

紗奈は遠慮(えんりょ)なくノスリの首をグイグイ()でた。


夜になるまでに木で眠れるように、ツルで(しば)って枝を重ねておこう。


向かい側の山の稜線(りょうせん)が夕焼けで金色に光ってる。

紗奈はこれからくる甲斐犬との出会いをこの景色と重ねて想像していた。


ノスリは練習するかのように音もなく飛び立って、遠くの山に消えていった。


(紗奈は今晩,木の上で休むとすれば安心だ。

昨日の月明かりを考えると今日も明るいはず。

(かげ)を落とさないようにしないと甲斐犬に気付かれるな。まずいぞ。

ここは頼んで影をなくしてもらうか。)

ノスリは雲の中にすっぽり入って(だれ)かと会話している。

「そうそう、1 (こく)だけでいいです。お願いします。」

そう言ってノスリは雲から出て急降下した。


点のように小さく映る紗奈にはノスリが遊んでいるようにしか見えなかった。


3話に続く

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