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紗奈とノスリの旅  作者: 槌谷紗奈絵


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1/5

旅の始まり

天界では、大(さわ)ぎの出来事が起きていた。


天つ上神(あまつうつわがみ)が人の世に降りた時、地球に届く太陽の熱を冷ます呪文(じゅもん)を書いた(ふだ)を間違って持ってきてしまった。

それで、考えたあげく札を黄金(こがね)勾玉(まがたま)(かく)し、

神獣(しんじゅう)で守り神の甲斐犬(かいけん)の首に掛けたのだった。

これで天に帰るまでは安心!と、たかをくくっていたのだが・・・

あろうことか、その後、甲斐犬ごといなくなってしまったという。


このままだとやがて地球は焼けただれ生き物が住めないところになってしまう。


勾玉は神々の目には映らず、人間に勾玉を(さが)させなければさらない。


世の初めからおわす神々であられる、三柱神(さんちゅうしん)、慌(あわ)て者の天つ上神を(いさ)めたが、即刻(そっこく)、黄金の勾玉を探さねば時間がない!


人間の一生は神々の一週間ほどである。


三柱神は(だれ)にそれを(たく)すか決めようと集まった。

神産巣日神(かみむすひのかみ)が、口火(くちび)を切って、こう(おお)せになった。

「おてんばで、おのこのようじゃが、知恵に()け,の山を()(めぐ)る紗奈はどうじゃ?

人間の姿で産まれてからは,まだ13年じゃが。」

提案(ていあん)した。


天御中主(あまのみなかぬしの)神と高御産巣日神(たかみむすひのかみ)も賛成し、

天つ上神に罰として人間となり、紗奈に(めい)を伝えることとした。


人間の上皇になった天つ上神。さっそく遣いを出して、紗奈を呼んだ。

突然、宮殿に()された紗奈は、驚き(おどろ)きつつも、なんかこう言うこと前にもあったみたいな

(かす)かな記憶があった。

命を受けた紗奈は、黄金色の勾玉を首に掛けた甲斐犬を探しに旅立った。


途中、(おさな)いノスリが人間の手で羽を切られて、飛べなくなっているのを見た。

(たか)のくせに弱っちいな。」

(ひざ)の上に乗せて、ラベンダーで痛みを取ってからメリッサのクリームを()った。


紗奈が、持っていたうさぎの肉を分けて一緒に食べた。

ノスリは、少し元気が出た様子。

さて、また,旅の続きに行こう。

すると・・・


ノスリが、「()いてっちゃダメ」と小さな声で言った。


小さな声に聞き返す紗奈。

「えっ?なんて言ったの?」

「置いてっちゃ ダメ!」

「ダメって!あー,分かった!このままだとキツネにやられるしな。

この袋に入りな!(かつ)いでいくよ。飛べるようになったら行くんだぞ!」


ノスリは、紗奈の担ぐ袋に入る時、目は天に向かって青く光っていた。しかし,紗奈は食事後の火消しをしていて気付かなかった。


森から森へ谷を渡り,(あた)りは夕日に照らされた。

「何か聞こえる!」紗奈は耳を()ませた。

遠吠(とおぼ)えだ。


「おい!聞こえたか?」

「・・・」

「なんだ!寝てるのか。」

紗奈は、もう一度耳を澄ませた。


遠吠えがかなり遠くから,それも風下から。

2つくらい向こうの(みね)から聞こえるのが分かった。

甲斐犬は、紗奈の場所からずっと向こうの山にいるのだ。

闇雲(やみくも)に進まないで、星を見てからにしよう。


今日は、ここでゆっくり休むぞ!

紗奈は火を起こした。

太陽がすっかり隠れる頃、ノスリは袋からヨチヨチ出てきて,紗奈に肉をねだった。


「まだ自分で()れないか?しょうがないな。」

紗奈は、肉を分けた。ノスリは紗奈の手から肉を(うば)うように食べた。

紗奈の手にはケガひとつさせなかった。

紗奈はノスリの首をそっと()でた。


南に木星が双子座(ふたござ)(はさ)まれている。

南西にオリオンと金星

北に大(くま)、小熊か


(かがや)く星空を確認した紗奈は、腹も()ちて火の(ぬく)もりに包まれ眠り込んだ。


すっかり夜も()けた頃、(となり)の竹林を()るボクッ!ガサッ!バキバキっという音。

多くの群れが走る音。何かから追われている!

紗奈は、(つか)れて熟睡中(じゅくすいちゅう)

ノスリは、紗奈の足元から立ち上がった。

目は青く輝き、音のする方を()らすように見た。

イノシシが竹の根を食べる音。キツネに追われ,()(まど)鹿(しか)たち。

「紗奈!起きて!ここにいたら()まれる!

木の上に行こう!キツネも届かない!紗奈!起きて!」


ノスリは紗奈の腕をくちばしに挟んで(ひね)った。

「いっっ!いってー!何するんだよ!」

一気に目を()ます紗奈。

(かま)いなしにノスリは言った。

「早く!木の上へ!」

紗奈は、ただ事ではない音とノスリの(うった)えに反応して木に登った。

木登りは得意(とくい)だ。

下を鹿の群れが走り抜け、子鹿が1頭キツネに(ゆか)まったのだった。


紗奈はため息をついた。

子鹿の命。キツネだけではなく、こうして生きて行かなばならない自分やノスリ。

今日は()りをして何か食料をゲットしないと。


紗奈は木の上で休んでから、まだ薄明(うすあ)かりの竹林に向かった。

(きり)に包まれる竹林。()られて()かれた竹が()れている。

ちょうどうまく裂けている竹を選んで、石で作ったサバイバルナイフで切った。

弓と矢を3本。

「これでいい。」


紗奈は木の上で待っているノスリを下で呼んだ。「ヒューー!」

ノスリは傷んだ羽を広げて落ちてきた。

しっかり受け止めた紗奈。

「まだか。」

ノスリを袋に入れて担いだ。

「キジかヤマドリ(ねら)うぞ!お前も追い出すことくらいできるだろ?」


ケケーーーン!ケケーーーン!

あっちで鳴いた!

紗奈はキジの方に向かった。

少し(はな)れたところで、袋からノスリを出して()せた。ノスリは注意深く(やぶ)を進んで一気に羽を広げてジャンプした。

幼いとはいえ鷹はキジにとって(こわ)い。

ケケーーーン!飛び出した。

1発で仕留(しと)めないと!

弓を(かま)えた紗奈は、素早(すばや)く矢を(はな)った。


急所は外れたが矢は当たった。

キジは、落ちた近くに(ひそ)んでいるはず。

紗奈は、「私が動くとキジは、もっと(かく)れようとするだろう。お前が近づけ。血の(にお)いがするだろう?」


ノスリは血の匂いでお腹がぺこぺこなのを感じた。「捕らなくちゃ!」


「あっ!いたいた!あんなところに隠れてる!」

()(しげ)ったつる草の中にうずくまっているキジ。肉の匂い。

「やるしかない!」

ノスリは飛びつこうとした。

しかし、つる草がノスリの足に(から)みついて宙吊(ちゅうづ)りになってしまった。


待っても帰らないノスリ。

紗奈はいささか心配になってきた。

(まか)せるのは早かったか。

紗奈は竹林に(もど)って素早くもう1本矢を作った。

生竹は長持ちしない。

早く次を探さないと。

ノスリはどこに行ったんだ?


2話に続く

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