第11話 邪悪なる地
国外追放を言い渡されたミオは、兵士たちに連れられ馬車に乗せられていた。
王都の城壁が遠ざかっていく。
馬車は北へ、北へと進んでいた。
やがて街道は細くなり、周囲の景色も荒れ始める。
森は暗く、空気は冷たい。
しばらくして、馬車は止まった。
「降りろ」
兵士に言われ、ミオは外に出る。
目の前には、大きな谷が広がっていた。
深い谷の上には、一本の橋が架かっている。
ミオは思わずつぶやいた。
「すごい……」
だが、兵士は冷たい声で言った。
「ここから先は邪悪なる地だ」
ミオは橋の向こうを見る。
黒い森が広がっていた。
兵士は続けた。
「魔王が統治すると言われている地だ」
「お前のような魔女が行くには、ちょうどいい」
ミオは小さく眉をひそめる。
「魔女じゃないってば……」
兵士たちは答えない。
橋を渡りきると、兵士はミオをそこで降ろした。
「じゃあな」
ミオが振り返ったときには、もう遅かった。
ギギギギ……
橋がゆっくりと上がっていく。
王国側から、吊り橋が引き上げられていた。
ミオは橋を見上げた。
「……え」
谷の向こうには、もう戻れない。
兵士の声が遠くから聞こえた。
「幸運を祈る」
ミオは呆然とつぶやいた。
「これ……処刑じゃない?」
そのときだった。
森の奥から、低い唸り声が聞こえる。
グルルル……
ウルフだった。
一匹、二匹、三匹。
やがて十匹以上の群れが現れる。
ミオは周囲を見回した。
「武器……ないよね」
もちろん、なかった。
兵士たちは何も持たせていない。
ウルフたちが円を描くように囲む。
牙が光る。
ミオは小さく息を吐いた。
「……やるしかないか」
次の瞬間、ウルフが飛びかかってきた。
ミオは身体をひねる。
ギリギリで回避。
そのまま拳を叩き込む。
カウンター。
ウルフが吹き飛ぶ。
次の一匹。
蹴り。
回し蹴り。
体は軽く、動きは正確だった。
しかし数が多い。
ミオは周囲を見回す。
「石!」
地面に落ちている石を拾う。
投げる。
バシッ!
石は一直線に飛び、ウルフの額に命中する。
もう一つ。
もう一つ。
ミオの投げた石は、すべて正確に急所に当たっていった。
やがて、ウルフたちが一斉に飛びかかる。
ミオは目を閉じ、詠唱した。
「雷よ」
「空より落ちよ」
次の瞬間。
バリィン!!
雷が落ちた。
ウルフたちが感電し、地面に転がる。
ミオは息を切らしていた。
「……半分くらい?」
だが、残りもまだ多い。
魔力も体力も、もう長くは持たない。
「このままじゃ……」
そのときだった。
ぴょん。
ぴょん。
何かが跳ねながら近づいてくる。
スライムだった。
青くて丸い、小さなスライム。
ミオは思わず言った。
「え」
その瞬間だった。
ウルフたちが一斉に伏せた。
まるで王に服従するように。
ミオは目をぱちぱちさせる。
「……え?」
スライムが言った。
「ボク偉いスライムだよ?」
ミオは首をかしげる。
「スライムって雑魚キャラじゃないの?」
スライムはぷるんと震えた。
「そんなわけないじゃん?剣で切られてもすぐ戻るし、強いよ!」
ミオは少し考えてから言った。
「それ、確かに強いかも」
スライムはしばらくミオをじっと見ていた。
そして言った。
「スライムは仲間にしたそうにあなたを見ている」
ミオは思わず突っ込んだ。
「それ口に出して言うセリフじゃないんじゃないかな?」
スライムは楽しそうに跳ねた。
「面白いやつだな」
そして言う。
「魔王様がきっと気に入る」
ミオは首をかしげた。
「魔王?」
スライムは森の奥へ跳ねていく。
「ついてきなよ」
「魔王領を案内してあげる」
ミオは少し考えてから、歩き出した。
邪悪なる地…魔王領の奥深くへ――
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