08
◆
魔書を開くと中から魔力の奔流が溢れ出す。
だが予め結界を張っていたので自身に影響は無くこの部屋から漏れる事もない。
魔書からは怨念の様な思念が届いて来る。
『我に従え、我に従え、我に従え、殺せ、コロセ、ころせ、こロセ、コロせ、ころ………』
と延々と流れて来る。
だが自身には神聖魔法をかけている為に影響は受けない。
だが念の為に「《精神強化/メンス・ホプリゾーン》」と精神強化魔法をかける。
先程まで雑音の様に聞こえて精神に負荷を与えていた怨念の声は今では殆ど効果を発揮せず。
ただの魔力の篭った本にしか見えなかった。
自分に屈しないと魔書もわかったのか問いかけて来た。
『おい!おい!聞こえないのか?聞こえてるだろ!』
何か話しかけて来たけど面倒いな。
無視しよう
無視して頁をめくろうとするがそれに抵抗するかの様にバタンと本が閉じた。
『無視をするな!無視する酷い奴には読まへんぞ!』
イラっとしたので手に火を灯し魔書に近づける
「《灯火/トーチ》」
『お、おい!やめろ!燃える燃える!あ、アチィ!こ、このやろまじでやりやがったな!呪い殺してやる!…すいません嘘です。なので火力を上げないで下さい』
鬱陶叱ったので火球を出すと大人しくなった。
『あ、あの…何故喋れるとか興味は無いんですか?』
「え、だって面倒いだろ?だから黙っとけばいい」
『そ、そんな理由で⁉︎』
魔書に目があるのかわからないが視線を感じて鬱陶しいな
「何?そんなに見つめて?」
『い、いえ久しぶりに解放されたのでその解放した貴方様がどんな人なのか観察しておりました。はい』
一気に低姿勢になったな。
「ふーん、まあいいけど。観察されるのは好きじゃないからやめて。後今度は邪魔するなよ」
『わ、わかりました』
今度は邪魔される事なく頁を開けた。
中に書かれている魔法は見た事無いものばかりだ。
多分古代の魔法や禁忌魔法だな
「全然読めん」
一通り目を通したが字が読めない。
書斎にあった古代語の物よりももっともずっと古い字だ。
困っていると魔書が話しかけて来た。
『あ、あの自分と契約してくれれば全て読める様になりますよ?』
「ん?契約………代償は?」
『は、はい。その魔力を定期的に分けて貰えればそれで…」
ジィーと魔書を見つめる。
「何それだけ?先程まで俺に従えとか五月蝿かったのに?」
『そ、それは私を封印した奴らが死ぬ程憎くて…其奴らを始末しようにも私単独では十分な力を発揮出来ないので、その為には魔力を持った依代が必要でして封印を解除出来る力量があれば十分な人材だと思い……その者を利用しようかと……』
「ふーん、成る程ね。魔力を分け与えるのはさして問題は無いけどそれだけ?」
『は、はい。後は私の力に耐えられるかですね』
「耐えられ無かったらどうなるの?」
そう問いかけるも焦った様な雰囲気になった。
『い、いえ、それは……』
「何だ?言えないのか?」
訝しんだ視線を向けると素直に白状した。
『私グリモアの力に耐えられなければ最悪は発狂死して…良くても植物人間になります』
「で、耐えられたら?」
『耐えられれば私の知識は全て貴方の物にそして魔力も増大します』
うむ、どうしようかな?耐えられたら夢に一歩と言わず10歩ぐらい一気に近づくしなぁ。
「よし、夢の為にもその試練乗り越えてみせよう!」
『あの、因みに貴方様の夢とは?』
魔書を手に入れたい者の夢は大体が権力や金の為にだ。
今回も幼いとはいえ、大体そんな感じの夢だろうと思ったが聞いて見た。
因みに過去の挑戦者は殆どが廃人になっている。
中には死んだ者も含まれる。
「ん?俺の夢はダラダラと怠惰に過ごす事だ!」
『っえ?そんなしょうもない事が夢?』
確かにそんなにダラダラと怠惰に過ごすにはある程度の金はいるが正直その程度の夢とは思わなかった。
「しょうもないとは何だ!俺は働きたく無いのだ!それでいて人生の大半をベッドの中で寝て過ごしたいのだ」
『り、理由は?何故そこまでその事に拘るのだ?』
何を不思議な事をと顔に出しながらも渋々と理由を教えてあげた。
「何当たり前の事を聞いてるのだ?そんなの怠いからだろうが?何故そんなに頑張らなければならないんだ?それにもし御母様が弟を産んだらその者を次の我が家の当主にでも据えて俺は移住食全てを賄ってくれればそれで良い。ああ、後は召使いも数人必要だな。そしてこれが一番魔書を求める理由だが、仮に俺が当主になった場合は貴族社会と言う窮屈で息苦しい世界で生きなければいけないからな、それで煩わしい事に惑わされ無いようそれを排除する手段が必要だろう?俺が怠惰に生活する為にそんな者に振り回されたく無いからな。静かで隠居した生活をしたいんだよ」
『そ、それが理由か……ま、まあ人それぞれだしな。……うん』
「では、納得した所でどうすれば契約出来るのだ?」
『ああ、それは簡単だよ。血を一滴与えてくれればそれで良い』
「わかった」
風魔法を使い手を少し切る。
そして切った手を魔書に翳して血を魔書に垂らす。
魔書に血が当たると魔書が光り出す。
すると頭に大量の知識と体に大量の魔力が流れ込んで来る。
「グッ!あっ!頭が!……」
あまりの激痛にベルホルトは意識を失った。
♢♢♢♢
暫くすると意識を取り戻した。
「…う……うん?……此処は……」
キョロキョロと辺りを見回すと自分の部屋だと認識した。
そうか、気を失っていたのか。
ゆっくりと起き上がり身体の状態を確認していく。
問題は無いようだ、寧ろ頗る調子が良い。
『おめでとうございます。これで晴れて貴方は私の契約者マスターとなりました。今なら読めますよ』
グリモアに言われた通りに魔書を開くと字が読める様になっていた。
だが違和感もあった。
何故か目に魔力が籠っている感じがして近くの鏡を見ると目の色が変わっていてまるで銀河系の様な色になっていた。
その中心には五芒星が浮かび上がっていた。
「こ、これは何だグリモア?」
『それは魔眼と呼ばれる物でマスターのは魔眼の最上位の一つ【天王眼】全てを見通す眼です』
『そして全てを支配する眼でもあります』
「何故この事を黙っていた?」
『いえ、これは特に代償は必要ありません。使用するのに魔力が大きく削られる代償に数多の恩恵を与えてくれるのですから』
「まあ、確かにそうだろうが、黙っていたのが気に食わないな」
そう言い再び魔書を炙る。
『す、すいません!許して下さい!以後気をつけますので!』
必死に許しを請う魔書。
側から見たら本を炙っている変人だ。
それが暫く続き漸く苛立ちが治った所で解放してやる。
「ふん、今後気をつけるんだな」
『は、はい……』
「で、これはずっとこのままなのか?」
『い、いえ御自身の意思で発動のオンオフが可能です』
言われた通りに天王眼を閉じる様に意識すると消えた。
それを何回かした後魔書を再び開いて一頁毎ゆっくりと呼んでいく。
だが流石に夜も更けて来たので名残惜しいが途中で読むのをやめる事にした。
それにしても良い魔法が見つかった。
その魔法は魔力封と言い術者の意のままに魔力を封印出来る魔法だ。
解除するのも簡単な為に急に上がった魔力を隠す目的の為に早速自身の魔力の大半を封印する。
これにはメリットもあり封印期間が長いほど魔力の質が上がっていくらしい。
なので本当に必要になった時に解除したら良いだろう。
明日の魔力測定検査は封印して向かうつもりだ。
例え低い数字が出ても気にはしないのだから。
それにしても今日は疲れたなぁ
寝る前に結界を解除する。
魔書はアイテムボックスに入れようとしたが魔書曰くそれをしなくても大丈夫らしく収納と唱えれば良いらしいので早速してみる事にする。
「収納」と言うと魔書が身体の中へと入っていった。
そして出す時は念じるだけで良いらしくそれを何回か試して見た。
ふーん何か不思議な感じだな
一通り試すとベッドに入り眠りについた。




