束の間の休息
26話です
「ふぅ、なかなか釣れないもんだな」
全く揺れない餌を見て呟く。 シヴァとの戦いから数日、イデスの手がかりもつかめないまま過ぎていた。
流石に何日も無料でご飯も寝る場所も提供して貰うわけにはいかないわけで。こうして食事面だけでも自分でなんとかしようと思って川で釣りをしているんだが。
釣りを始めてから何時間も経った。どうやら某ゲームのように簡単にはいかないらしい。
「スズキでもいいから釣れてくれ…。 また、お前かー⁉︎てな…。」
俄然餌に魚が食いつく様子はない。俺のテンションは下がっていくばかりだった。
「いくらモガ何でもお茶っ葉じゃモガ釣れないとモグモグ思うぞ」
ひょこっと顔を出すマーティ。 俺とは別行動で山の幸を取りに行ったのだが、マーティの口には多彩な果実が入っていた。
「何で口の中に食べ物入れてんだよ、てかお前今ちょっと食べたろ」
「仕方ないだろう? 私には手も足も無いのだから。 口の中に入れるしかないんだ。それより」
マーティはちらっと餌を見る
「祐介がそんなにお茶っ葉狂だとは思わなかった」
「お茶っ葉馬鹿にすんな。 盛るぞ。」
そんな話をしていると餌、もといお茶っ葉がピクリと揺れる。
「おい、揺れたぞ祐介」
「お茶っ葉を理解できる魚がいるとは…感激だな」
「早くしないと逃げるぞ」
俺は思い切り竿を引く。 釣り上げたのは見るからに巨大で凶暴な牙をむき出した魚だった
「戦うしかないみたいだな」
俺は深緑の剣を創り出し、戦闘態勢をとる。いくら相手が巨大といっても所詮は魚だ。勝てない相手じゃない。
「まて祐介、あれを見ろ」
その時魚も戦闘態勢をとって……いなかった。ビクン、ビクンと痙攣しているかのように見える。
「やはりお茶っ葉には勝てなかったようだな」
「認めねぇ! こんなの認めねぇぞぉぉぉぉ‼︎」
俺の声は虚しくこだました。
ーーーーーーーーーーーーーー
「あっ! 祐くんおかえり!」
「おせぇぞ! こっちは腹減っちまった!」
「私が食べられるもの持ってきたんでしょうね!」
引きこもりどもが喚く(約一名を除いて)。後で部屋の四隅にお茶っ葉を置いておこう。
「どんな食べ物とってきたの……ってすごい魚だね‼︎待ってて美味しい料理にしてみせるから!」
フラムはパタパタとエプロンをつけて台所に行ってしまった。疲れた俺はその場に座り込む。
「いい果実があるぞ……ボエェ」
ゴロンと果実がマーティの口から出てくる。なんて気持ち悪い光景なんだろう。
「うげぇ! 気持ち悪い‼︎ 私それいらない!」
「へっ! お嬢様は大変だなぁ⁉︎ 俺は楽勝だけどよぉ‼︎」
モグモグとグリンは果実を食べる。それにつられて
「わ、私だって食べられるわよ!」
沙月も果実を手に取る。あーあ食べないほうがいいのに。
シヴァとの戦いが終わってからすぐにグリンと沙月は目を覚ました。これがあいつの言ってたもう一つの贈り物なのだろうか。
「「うまい‼︎」」
二人は揃って声を上げる。馬鹿な‼︎ あんな奴の口の中に入っていたものが美味いはずがない。何かの間違いだ‼︎
「祐介は食わないのか?」
マーティはニヤニヤした顔で見る。正直腹がたった。明日のご飯にお茶っ葉を入れといてあげよう。
だが実際旨そうではある。目の前では二人が一心不乱に食べ続けている。それに加えて俺の本能は忠実だった。
「うわ⁉︎ 涎が!」
俺の口の中は涎でいっぱいだった。本能が疼く。これを食べろと。
「く、食ってやらぁ‼︎」
俺は果実を口の中に放り込む。その瞬間俺の意識だけがここから遠く離れた場所にいるような奇妙な錯覚を受けた。今まで味わったことがない感覚。
「う、美味すぎる……‼︎」
横でマーティが優しい顔をしていたことに俺は気づかなかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「はい! お待ちどうさま‼︎ いっぱい食べてね!」
フラムは焼いた魚を持ってきた。
マーティとグリンは一気に食べだすが俺はそんな野暮なことはしない。
「甘いんだよ」
俺はそう呟くとおもむろにご飯に魚の身をほぐしたのを入れ、そしてお茶を入れる。グリンとマーティ、フラムは目を丸くしているがそんなことは気にしない。
「あら? 茶漬けじゃない! 私にも少しちょうだい!」
「おぉ! お茶の良さをわかる奴がここにもいたか。いいぞ、ほら。」
俺はお茶を沙月に渡す。マーティ達は目を丸くさせたままだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はー食った食った」
満腹になったところで俺たちは一休みしていた。
「イデスの手がかりは掴めないもんかね」
そこにバタバタと走る音が聞こえる。その足音の正体はフラムだった。
「どうした? そんない急いで」
フラムは青ざめた顔で
「大変だよ‼︎ リーフェさんがさらわれた‼︎」
27話で会いましょう




