⑧世界で一番強い猫
俺はね、侮っていたよ……。
こいつら数年間ゲームしてただけあるわ……。
そう、こいつらはゲームをしてただけなんだわ。
「お前ら弱すぎだろっ!」
どう考えても勝つ気でゲームをしてない。気持ちは入っているが、学習をしていない。かろうじてルールは守っている程度のレベルだ。
ゲーム音痴? とんでもない。
ゲームに嫌われし者たち、で間違いない。
「ほいっ」
たった今、オセロの石が全て黒に変わった。
俺は自分の手ではゲームができないため、魔王にオセロの石をひっくり返してもらっているが、その手は悔しさと怒りで震えていた。
全ての石と表現したが、盤面は空白がまだ多く残っている。俺が勝ったのは九手目だった。石の総数は十三個。綺麗な正方形だ。
もしかしてコレ、最短で勝ったんじゃね?
「どうしてその前の手であそこに打っちゃったの? バカなの? そうなの?」
その前の手、というのは負ける寸前に勇者と魔王がニ十分くらい話し合って決めて打ったところだった。
「いや、裏の裏の裏の裏の裏を読んだらこうなったんだよ」
「もうなんか、よくわかんねぇ」
もはや自信を喪失している両者の言い分は、表とか裏の問題では到底なかった。
「もういいよ」
唐突に勇者が吐き捨てるように言う。
「俺ももういい」
魔王も同じく吐き捨てるように言い放つ。
「なにが」
俺の問いに対して数秒の間をおき、そして――
「「勇者はお前 でいいよ
魔王はてめぇでいいよ」」
二人で綺麗にハモる。
…………。
…………。
…………は?
「もうお前には勝てない。俺は勇者失格だ」
「もうてめぇは世界で一番強い存在だ。魔王を自由に名乗りな」
いやいやいやいや、ちょっと待て!
俺は別に勇者になりたくてゲームをしたんじゃないし!
当然魔王になりたくてゲームをしたんじゃないから!
こいつら弱すぎだから、ちょっとからかってやろうと思っただけなのに……。
「あの……?」
「お前は強い。だからつまらん。コレやるからもう出てってくれ」
勇者が自分のマントの襟元に付けていたバッチを俺の首輪に付けた。
「チッ、コイツも持っていけ」
舌打ちしながら魔王も白いローブの肩の部分に付けていたバッチを外して、俺の首輪に付ける。
「え、うん。なんかよくわからんけどありがとう?」
首輪につけてもらったバッチは自分の目では確認できない。だけど、もらいものはなんとなく悪い気がしない。
「じゃあな。俺たちはケリをつけてここから出るから」
「てめぇのことは忘れねぇよ」
勇者と魔王に見送られ、ふっと意識が飛んだ。
瞬間、俺は一面銀世界に舞い戻っていた。
「な、なんだったんだ……?」
そう、まるで夢でも見ていたかのような感覚……。
「うおっ、さぶっ!」
そして唐突に訪れる現実の感覚。
なんかよくわからんけど、とりあえず戻ってきたみたいだ。




