④これは……お腹の音じゃない!
村を出て、白くて高い山に向かって一直線に歩いている時だった。
「なんかさ、天気あやしくない?」
「そうね、風が出てきたわね」
冷静ですね、シズネさん。
俺にはわかるんだよ。肌で感じるんだよ。
なんていうか、こう、気圧が落ちる感じ? っていうのがさ。
今もパラパラと雪が降ってるけど、風が出てきたということはヤバイことになる予感。
「ねえ、村に戻った方がいいんじゃない? コレ絶対に吹雪くよー?」
「何言ってるのよ。吹雪いたって死ぬわけじゃないんだから」
いや、シズネは死なないかもしれないけどさ。
俺みたいな可弱い普通の猫にとって、寒さがどれだけ大敵かわかりますか?
「そりゃさ、俺だって付いていくって言ったよ。でもシズネ、雪山を舐めたらいかんですよ」
「トラジは雪山の怖さを知ってるの?」
「し、知って……ますとも」
「ほほう、じゃあ私からひとつだけ言わせてもらうわね」
「はいなんでしょう」
「わ、私のそばにいればこれくらい大丈夫よ」
なんだそりゃ! なんで頬を少し赤らめて根拠のないこと言ってるんだ!
という会話をしたのが恐らく二時間くらい前のことだと思う。
見事に俺の予感が的中して、めっちゃ吹雪きました。
そう、回想したということはつまり……はぐれたんですよ。
もう周りを見渡しても四方八方吹雪いてる景色だけ。シズネの姿なんてどこにもない。「目視と匂いと気配でしか見つけられないのよ」って言葉を思い出す。
絶望だ……。
「シズネー! シズネー!」
叫んだところで吹雪きの音に一瞬で掻き消されていしまう。
俺の上に降り積もっていく雪が冷たくて冷たくて、もう耳先の感覚とか全然ない状態。
ゴゴゴゴゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴゴ……
そういえばお腹すいたなぁ。
お腹の音が鳴っちゃったよ……。
ゴゴゴゴゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴゴ……
じ……地鳴り!?
ってことはつまりこれは……お腹の音じゃない!
恐る恐る斜面の上を見上げると案の定――
「雪崩かよ!?」
叫んだ時にはすでに時遅く。
俺の小さな体は規模の大きさすらわからない雪崩に吸い込まれて行った――
シズネとはぐれてしまったトラジ!
次回あの男が現れて急展開!?




