第5話 衝撃の幼女
「ソイルインパクト!」
ルルリが振り下ろした巨大なハンマーが、地面を叩く。
その瞬間、地面は激しく揺れて凄まじい亀裂が入り、盗賊たちを飲み込んでいく。
「な、なんだぁ、こりゃあっ!」
あまりにも予想外なことに、盗賊たちも対処がまったくできない。
(ひゅ~……。あのゲームのスキルって、現実で使うとこんな風になるのか。未熟な体から放ったというのに、すさまじい威力だな。これでハンマースキルの最弱っていうんだから、恐ろしいもんだぜ)
技を放った本人であるルルリですら、驚くほどの威力である。
となれば、エピナや騎士たちも驚きで動けないというもの。まるで時が止まったかのように、全員から動きが消えた。
この状況で一番最初に動いたのは、盗賊だった。
「てめぇら! 俺に構わず、そのガキを捕まえろ!」
「へ、へいっ!」
盗賊たちが動き出す。
近づくとあのハンマーの餌食になるということで、遠巻きから小細工をしようとしているようだ。
ルルリはその動きを見逃さなかった。
「間合いに入らなければ大丈夫だなんて思っていませんかね」
そうつぶやいたルルリは、ハンマーを消してしまう。
どういう仕組みかは分からないが、盗賊たちはチャンスと見て、ルルリに襲い掛かろうとする。
だが、すぐにそれが罠だと気付かされた。
「わざわざ飛び込んでくれてありがとう。みんな仲良く吹き飛んでね」
次の瞬間には、ルルリはキャノンを構えていた。
「なんだ、あのばかでかい筒は!」
「ドラゴキャノン。遠距離攻撃用の大筒ですよ」
ルルリはにっこりと笑うと、キャノンに魔力を充填する。
「吹き飛べ! ビーストシャウト!」
技の名前を叫ぶと、ルルリの抱えるキャノンから極太のレーザーのような一撃が放たれ、盗賊たちは吹き飛ばされてしまう。
あまりの後継にすっきりしそうなものなのだが、ルルリはなぜか表情を曇らせている。
「あ、あ……。このガキ、化け物だ……」
自慢の盗賊団を、たったの二撃で粉砕されてしまった盗賊たちは、自信を喪失してその場で気絶してしまった。
追放されたルルリの初勝利である。
盗賊たちは目を覚ます。
ところが、馬車はその場所から動いていない上に、自分たちは縛られていない。一体どういうことなのか、理解するのにしばらくかかってしまう。
「お目覚めかしら、盗賊さんたち」
「て、てめぇはっ!」
目を覚ますと目の前にいたのはルルリ。先程の一方的な蹂躙を食らったこともあり、目が合った瞬間に大きく後退ってしまう。
「逃げないでくださいな。私は交渉がしたいのよ」
自分たちを覗き込むルルリを見て、盗賊たちは恐怖を感じている。
目の前の少女はどう見たってかなり幼い。だというのに、体が震えてしまっているのだ。
後ろにいるメイドや騎士たちに比べて、ひときわ危険を感じてしまっているのだ。逆らったら殺されると。
怯える盗賊たちに、ルルリは近づいていく。そして、目の前までやってくると盗賊たちへと問いかける。
「ねえ、あなたたち。選択肢をあげるから、答えてちょうだい」
「な、なんだ」
「私たちと一緒に来てくれるのなら、今回の狼藉は不問にしてあげる。でも、断るのなら、あなたたちはここで魔物の餌にしてあげる。さぁ、どちらがいい?」
「お、お嬢様、何を?!」
ルルリはにんまりとした笑顔を浮かべて、盗賊的に実に一方的な要求を叩きつける。自分たちと一緒に来いという要求である。
なんといっても、グラトニー領で過ごすには、五人では何をするにも人が少なすぎるのだ。
そこで、それなりの生き残りの術を持っている盗賊を、仲間に引き込もうというわけだ。
普通であれば、子どもの要求など簡単に突っぱねられるものだが、今の盗賊にはその選択肢は取ることはできなかった。なにせ、5歳の子どもに10数人もいながら圧倒されてしまったのだから。
となると、盗賊の返事はひとつである。
「わ、分かりました。お嬢様についていきます」
ルルリの配下に収まることを選んだのだ。
「そう。なら、すぐに準備をして出発するわよ。いい? 変なことをしようものなら、私のスキル【撃神の砲槌】で懲らしめてあげるから」
「め、滅相もございません」
再びハンマーを取り出したルルリを見て、盗賊たちは全員震え上がっている。
「そ、それで、どこに向かわれるというのですかい?」
「行き先は、グラトニー領。魔物たちがたくさんいる、呪われた土地よ」
「ひっ!」
行き先を聞いて、盗賊たちは頭が真っ白になった。
結局どちらを選んでも魔物の餌になると思ったのだ。それはそうなるというものである。
だが、ルルリだけはとても楽しそうだ。
「ふふっ、私を追放することを決めたお父様を見返すことができるわ。私のこのスキルで、魔物たちなんて蹴散らしてあげるから、あなたたちも安心なさい」
ハンマーを地面に置きながら、ルルリは盗賊たちに話しかけている。
乗ってしまった泥船だ。こうなったらどこまで行けるのか、付き合ってやろうじゃないか。盗賊たちはもはややけになっていた。
こうして、自分たちを襲ってきた盗賊を仲間に加え、ルルリたちはグラトニー領へと向けて再び歩を進め始めた。




