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彼の先輩がカッコイイ話

翌朝、真田に殴られた。

鮮烈な痛みが頬を刺す。


「この馬鹿!!!」


「ッツ」


周囲の生徒は遠巻きに眺めるだけだった。だれも止めようとはしない。


「霧島さん泣いてたぞ…お前!!」


俺はただ殴られる。

殴り返す気力も無ければ、『やっぱりか』といった罪悪感に苛まれていた。


「痛いよ」


俺は馬鹿だ、ああ。真田の言う通りだ。

けどこれだけは言いたかった。

これだけは不服だった。


「何で裏切った」


口の端が切れたのか血の味がする。


「何で裏切った?」


再三問い掛ける。


「俺は懐の助けに…!」


「そういうの、良いから」


真田の目が驚愕に見開かれる。

やがて騒ぎを聞きつけた榎本先生によって仲裁され、俺は保健室に運ばれた。


保健室で一人、考える。

また仕出かした。


真田に悪気が無いのを俺はこれ以上なく良く知っている。

ラブコメ同盟は八割がた真田の善意で成り立っていることも。

今日、俺はそれを拒絶してしまった。


「……」


ただ、今は。今だけは眠ろう。

疲れた。




■■■■■■



「ナツミン!!」


騒がしい声で目が覚めた。


「神楽坂先輩か…」


「キョンキョンが指導室に行ったって聞いてBL的な嗅覚で保健室攻めたらドンピシャだったにゃ!」


「キョンって何かハ●ヒっぽいですね」


「そんな事言ってる場合じゃにゃいよ!!昨日は切嗣が泣いてるし、今朝はキョンキョンが指導室行きになって、ナツミンは保健室だしよくわからにゃいの!!」


そういって先輩は鞄から原稿用紙を取り出した。


「これは…?」


「ゴブリンとドワーフ改…にゃ」


どうやら読めという事らしい。不承不承と言った具合で原稿用紙を手に取り文章に目を這わせる。


相変わらずシュールで場面一つとっても汚さと良くわからない笑いが込み上げてくる。

成る程、ぶっ飛んだ方向に突き抜けたようだ。


「流石先輩ですね」


「でも、この小説。一人では書けなかったにゃ」


「え?」


まさかのゴーストライター疑惑。耳は聞こえると思うが、これはどういった事だろう。

意味を測りかねてしまった。


「当然にゃ。二人にウケたから本格的なBLものより画面の笑いに特化した小説を書いたのにゃ」


「…感想も含むから独りじゃない、と?」


「そうにゃ。ナツミンの事だし、小説の不調がモロに出るタイプだとおもってにゃ。アタシの予測だと一人で思いつめたんじゃにゃーの?」


図星だった。

俺は小説は一人で書くものだと思っていた。

速報や、他サイトの情報に踊らされて一人で書くのだと強迫観念に突き動かされてきた。

そのツケが今になって来たのだ。


「そう…ですね」


「でしょ、だから…さ。キョンキョンと仲直りして二人で小説を書くのにゃ。きっとそれが一番良いと…アタシは思ってるのにゃ」


そう、言いたいだけ言うと原稿用紙を鞄に仕舞い、去ろうとした。


「待って下さい」


「何だにゃ?」


「俺は仲直りできるでしょうか」


少しの沈黙の後、先輩は口を開いた。


「知らにゃい。でも…アタシは男子同士くんずほぐれつ仲良くするのが良いにゃ!あ、今のアタシ的にポイント高い!にゃ!!」




「有難うございます」


「別に、可愛い後輩の為にゃ」


先輩…カッコイイじゃん。

俺もああなれたら。

そうしたらもっとマシな男になれるだろうか。勿論BL的な意味ではなく。


やるべきことは見えた。

後は男気と根性だけだ。


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