表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

第4章 怖れを知らぬ幼児と孤独な雛鳥 暴走する幼児のプライド

暴走する幼児のプライド

頭部が本来あるべき頸椎の真上にパチリと収まった瞬間、赤ん坊のスケルトンの視界は完全に同期した。

レベル12。それは単なる数字ではなかった。その小さな骨のフレームの内部で、かつてないほどの密度を持った魔力がゴロゴロと音を立てて鳴り響いていた。骨の一本一本が、神聖なライトブルーの輝きを帯びて微振動している。それは、世界のすべての物理法則を無視して「自分は無敵である」という絶対的な全能感に満ちた、幼児特有の純粋で圧倒的なプライドだった。

目の前にそびえ立つ二十メートルの巨体など、今の彼には背景の巨大な壁程度にしか見えていなかった。

しかし、対峙する相手であるオブシディアン・ストーム・ロックもまた、ただの大規格のモンスターではなかった。その頭上に不可視のシステムが提示するステータスがあるならば、それは間違いなく「レベル34」を示していた。それは禁じられた大陸の過酷な環境を生き抜く、本物の超弩級の肉体だった。たとえ相手がどれほど怪しく輝く光を放とうとも、その圧倒的な質量と戦闘経験の差は揺るぎない。巨大な怪鳥は怯まなかった。

黄色い悪意のプールのような目が、怒りと戸惑いでさらに細くなった。金属の羽がカチカチと音を立て、いつでもその不届きな白い骨を粉砕する準備を整える。

「いくぞ、化け物」

スケルトンの頭の中で、内なる声が勇敢に、そして完全に状況を無視して叫んだ。それは英雄のセリフだった。少なくとも、本人はそう信じて疑わなかった。

よく言われることだが、子供には恐怖という概念がない。彼らにとって、世界はすべて「自分が中心」であり、目の前にある障害物はすべて「これから倒されるおもちゃ」に過ぎないのだ。恐怖を感じる脳を持たないこのアンデッドの幼児にとって、レベルの差や圧倒的な体格の差など、計算式にすら入っていなかった。あるのは、お腹がいっぱいで、体が見つかって、なんだかもの凄く強い力がみなぎっているという事実だけだった。

ナレーターがこれ以上、事態の無謀さを説明するよりも前に、赤ん坊のスケルトンは行動を起こしていた。

それは鳥に向かって猛然と突進した。

「とりゃあああああ」

小さな骨の足が、レベル12の爆発的な運動エネルギーによって地面の骨を粉砕しながら爆走する。クラッパティ、クラッパティ、クラッパティ。その速度は先ほどまでの比ではなかった。残像すら残しそうな勢いで、それは巨大な怪鳥の、まるで大樹の幹のように太い右足の脛に向かって真っ直ぐに突き進んだ。

そして、その小さな、白い骨の拳を限界まで後ろに引き絞り――全力のパンチを叩き込んだ。

ゴキッ。

静まり返った高原に、非常に乾いた、そして不吉な音が響き渡った。

それは巨大な鳥の頑丈な鱗の皮膚が破れる音ではなかった。ましてや、その肉体がダメージを受けた音でもなかった。赤ん坊のスケルトン自身の拳の関節が、あまりの硬度差に耐えかねて、見事にひび割れ、砕けかけた音だった。レベル12に上がって骨密度が強化されていたとはいえ、相手はレベル34の、黒曜石の鎧を纏った大怪鳥である。ダイヤモンドにチョークを叩きつけたようなものだった。

「あああああ、君はどれだけ硬いんだ」

スケルトンは内なる声で絶叫し、その場で激しく飛び跳ねた。衝撃が腕の骨を伝わって頭蓋骨まで突き抜け、せっかく戻したばかりの頭が少し右にズレた。目の青い炎が、痛みのあまりチカチカと点滅する。筋肉がないため、神経的な痛みそのものは存在しないはずだったが、魂のマトリックスが「大ダメージを受けた」という事実を幼児の脳内に全力でアラートとして流していた。

しかし、この赤ん坊のスケルトンの真の恐ろしさは、ここからの意味不明な適応力にあった。

「痛い。すごく痛いぞ。でも、僕の腕は……こうすればいいんだ」

それは一瞬だけ自分の右手を凝視した。ひび割れた指の関節。普通の生き物なら絶望する負傷だ。しかし、彼は思い出した。自分には筋肉も腱もない。この体は、ただの「骨のパーツの集まり」なのだと。

彼は迷わず左手を伸ばし、自らの右の手首をガシッと掴んだ。

そして。

スポン。

何の躊躇もなく、自分の骨の腕を引き抜いた。

それはまるで、プラスチック製のおもちゃの人形の腕をソケットから外すかのような、あまりにも軽快で、そしてシュールな光景だった。肩の関節から綺麗に切り離された右腕の骨を、スケルトンは左手でしっかりと握り直した。

「よし、これならどうだ」

彼は引き抜いた自らの右腕を、まるで一本の白い短剣、あるいは小ぶりなソードのように頭上で器用に振り回した。ブン、ブン、と骨が空気を切る音が響く。自分の体の一部を武器として再利用するその姿は、狂気の沙汰を通り越して、どこか芸術的ですらあった。

「かかってこい。どうした、怖いのか。弱虫め」

彼は自らの右腕(剣)を巨大な鳥の顔に向けて突き出し、猛烈に挑発し始めた。小さな足で地面を交互に踏み鳴らし、お尻の骨をフリフリと振る。

「べーだ、べーだ、べー。ここまでおいで。君には僕は捕まえられないぞ」

それはまさに、公園の砂場で年上の子供に捕まらないと確信している、たちの悪い幼稚園児のそれだった。二フィートの頭のない、いや、今は頭があるが、腕を一本失ったスケルトンが、二十メートルの神話級の怪鳥に向かって「やーい、やーい」と精神的攻撃を仕掛けている。

その光景は、あまりにも不条理の極みだった。

頂点捕食者の流した涙

巨大なオブシディアン・ストーム・ロックの全身が、小刻みに震え始めた。

それを見た赤ん坊のスケルトンは、自らの挑発が完璧に効果を発揮したのだと確信した。「よし、怒っているぞ。僕の作戦勝ちだ。さあ、僕の華麗なステップで翻弄してやる」と、内なる声はさらにプライドを肥大化させていた。鳥の金属の羽が不規則に擦れ合い、カサカサ、シクシクと奇妙な音を立てる。

しかし、何かがおかしかった。

鳥は、襲いかかってこなかった。怒りに狂ったモンスターが放つはずの、高原を消し飛ばすような突風も、酸性のブレスも、あるいはその巨大な嘴による一撃も、何一つとして繰り出されなかった。

獣は震えていた。しかし、それは怒りからではなかった。

それは、悲しみからだった。

「え……?」

スケルトンの挑発の動きがピタリと止まった。左手に持った右腕の骨が、だらりと下がった。

巨大な怪鳥の黄色い目。先ほどまで世界を呪うような悪意のプールに見えていたその巨大な瞳の端から、大粒の、文字通りバケツをひっくり返したような量の涙がボロボロと溢れ出し、骨で敷き詰められた床へと流れ落ちていたのだ。

ポタポタポタ、ドババババ。

「ピ、ピィィィ……ゥ、ゥゥ……」

それは、先ほどの地鳴りのような咆哮とは似ても似つかない、非常に高くて、掠れた、そしてどこか哀れな鳴き声だった。二十メートルの巨体が、まるで叱られた子犬のようにその場に丸まり、巨大な翼で自らの顔を覆い隠そうとする。

赤ん坊のスケルトンが知る由もなかったが、そしてこの巨大な鳥自身も自覚していなかったことだが、このセヴィイスタの空の支配者は、完全に「独りぼっち」だった。意味としては、文字通り、天涯孤独の身だった。

この残酷な禁じられた大陸において、オブシディアン・ストーム・ロックという種族は、生まれ落ちた瞬間から過酷な生存競争に放り込まれる。この鳥は、親とはぐれたか、あるいは最初から巣を失った孤児だった。そして、この巨大な体躯、二十メートルという圧倒的な質量、レベル34という恐ろしいステータスを持っていながら――この鳥は、まだほんの「赤ん坊」だったのだ。

人間や他の生き物にとっての二十メートルは成体だが、この神話級の怪鳥の寿命と成長曲線からすれば、現在の姿は人間の年齢で言えば二歳か三歳、つまり、目の前で骨を振り回しているスケルトンと精神年齢的には何ら変わらない「幼児」だった。

ただ、成長スピードとご飯の食べる量が桁外れに多かったため、見た目だけが世界の破滅を呼ぶようなモンスターになってしまっていただけなのだ。

二時間かけて必死に集めたお気に入りのオモチャ(魔力の詰まったお肉の山)を、家に帰ってきたら知らない白いピカピカ光る丸いもの(スケルトンの頭)にすべて食べ尽くされていた。それだけでも大泣きする案件なのに、その丸いものが急に走り回って腕を引き抜き、「弱虫、捕まえてみろ」と煽ってきた。

レベル34の怪鳥のメンタルは、完全に限界を迎えていた。

「う、うわああん」と言わんばかりに、巨大な鳥は高原の真ん中で羽をバタバタとさせながら、幼児特有の「嘘泣きではない、ガチの大号泣」を開始した。地面の骨がその巨体の震動でガタガタと揺れる。

「あれ……?」

赤ん坊のスケルトンは、その場で完全に固まっていた。その頭蓋骨の中で、女神によって与えられた複雑な魂のマトリックスが、猛烈な速度でこの新しい状況を処理し始めた。

「どうして泣いているんだ。怒っていないのか。僕のパンチが強すぎたのかな。いや、僕の腕の方が折れたぞ。じゃあ、なんで……」

パズルのピースが、彼の小さな頭の中で一つずつ噛み合わさっていく。

巨体の割に、鳴き声がすごく高い。

お肉の山を隠し持っていた(お気に入りのオモチャを集める行動)。

僕が挑発したら、怒るんじゃなくて傷ついた。

そして、この広い場所に、この鳥以外に誰もいない。

「あ……」

スケルトンの目の青い炎が、驚きで丸くなった。彼はついに、その高度な存在論的推論能力をもって、目の前のパズルを完全に解き明かした。

「……君も、赤ん坊なんだね」

その瞬間、スケルトンの胸の中にあった、あの肥大化した「プライド」は霧のように消散した。代わりに湧き上がってきたのは、同じ「この世界に突然放り出された迷子」に対する、深い、そして純粋な共感だった。彼は自分自身がクレーターの中で目覚めたときの恐怖、あの「ここはどこだ、自分は誰だ」とパニックになった瞬間を思い出していた。この巨大な鳥も、見た目こそ恐ろしいが、中身は自分と同じように、暗い世界で怯えているだけの子供なのだ。

境界を越えた友情の約束

赤ん坊のスケルトンは、左手に持っていた右腕の骨を、そっと自分の右肩のソケットへと差し込んだ。カチッ。 何の引っかかりもなく、腕は元通りに接続された。彼は手をグーパーと動かし、機能に問題がないことを確認する。

そして、彼は一歩、また一歩と、大号泣している巨大な鳥の側へと歩み寄った。

もはやそこには、戦闘の意思も、挑発の意図もなかった。あるのは、ただ純粋な優しさだけだった。

鳥は、近づいてくる小さな白い影に気づいたが、もう攻撃する気力すら残っていなかった。ただ翼の隙間から、涙で濡れた黄色い目でスケルトンをじっと見つめる。

スケルトンは、鳥の巨大な足元を通り過ぎ、その巨体が丸くなっていることで、ちょうど地面に近い位置まで下がっていた鳥の頭部の側へと移動した。二十メートルの鳥の頭は、二フィートのスケルトンにとっては依然として巨大な丘のようだったが、彼は恐れることなく手を伸ばした。

そして、その小さな、白い骨の手で、鳥の嘴のすぐ上、黒曜石のように硬い頭の鱗を、ぽんぽんと優しく叩いた。

「大丈夫だよ」

スケルトンの内なる声は、高原の風に乗るかのように、とても穏やかで、温かいトーンで響いた。それは声帯のない骨の体から発せられた精神の波だったが、不思議なことに、目の前の巨大な雛鳥にはその「意味」が正確に伝わっていた。

「泣かないで。お肉を食べちゃってごめんね。僕が悪かった。君のオモチャを壊しちゃったんだね」

スケルトンは、小さな指先で鳥の涙をそっと拭うような仕草をした。もちろん、骨の手では涙を吸収するだけで、あまり拭えてはいなかったが、その行動に込められた感情は絶対的なものだった。

「ここはすごく暗くて、怖い場所だけど。僕も独りぼっちで、君も独りぼっちなら……」

スケルトンは、自らの頭蓋骨をこつんと鳥の大きな嘴に預けた。

「僕たち、友達になれるよ」

その言葉が精神のテザーを通じて伝わった瞬間、巨大なオブシディアン・ストーム・ロックの鳴き声が止まった。

高原を吹き抜ける風の音だけが周囲を満たす。鳥は、自らを慰めてくれている小さな、光り輝くスケルトンをじっと見つめた。その眼窩の中で燃えるライトブルーの炎は、温かく、そして決して自分を傷つけないという絶対的な安心感を放っている。

レベル34の巨大な雛鳥は、ゆっくりと、本当にゆっくりと、その巨大な頭を上下に動かした。

コクン、と。

それは、言葉を持たない二つの「赤ん坊」が、この世界の頂点において交わした、最初の、そして最も強固な契約の瞬間だった。

果たして彼らは、この過酷な禁じられた大陸を突き進む、最強のチームになるのだろうか。

それとも、さらなる世界の悪意が彼らを引き裂くのだろうか。

それは誰にも分からない。知るためには、もしかしたら次の章を読まなければならないのかもしれない……。

残念だったね……。

さあ、次の章を読みに行くんだ。

そう、今これを見ている君のことに決まっているじゃないか。なぜまだここに留まっているんだ。このページには、これ以上もう一文字も新しいお話は載っていないぞ。早く、彼らの大冒険の続きを追いかけるんだ。GO、GO。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ