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第19章 塔対決――白き宝石を守る者

カナヴィンはゆっくりと周囲を見渡した。

そこは巨大な円形の部屋だった。

壁は一切の継ぎ目がなく、まるで巨大な一つの石から削り出されたような構造をしている。

天井は遥か高く、上を見上げても終わりが見えない。

広さだけで言えば、小さな街の広場ほどある。

「……広いな」

カナヴィンの声が静かに響く。

彼は部屋の中央へ歩いていく。

カタ……カタ……。

骨だけの足音が、巨大な空間の中で何度も反響する。

そして――

彼はそれを見つけた。

部屋の中心。

そこに存在していたもの。

巨大な宝石。

それは塔の心臓とも言える存在だった。

高さは数メートル。

まるで巨大な水晶の柱。

しかし、普通の水晶とは違う。

内部には神秘的な光が流れており、生きているかのように脈打っている。

カナヴィンはその宝石の前に立った。

彼の青い炎が、その白い輝きを反射する。

「……」

しばらく眺める。

そして首を傾げた。

「……白色か」

彼は自分の身体を見る。

白い骨。

白い宝石。

「まあ……俺のテーマには合ってるな」

少し満足そうに頷く。

もし赤かったら、もっと血の王みたいな雰囲気になっていただろう。

もし黒かったら、なんとなく強そうだっただろう。

しかし白。

スケルトンである自分には、これが一番自然だった。

「でも……」

彼は宝石に触れる。

「そもそも、この宝石は何のためにあるんだ?」

その瞬間。

頭の中に音が響いた。

ピコン。

いつものダンジョンメニューだった。


【チュートリアル開始】

【塔対決モードについて説明します】

【進行率……99%】


カナヴィンは目を細めた。

「……99%?」

一瞬待つ。

「なんで100%じゃないんだ?」

沈黙。

「そこ気になるんだけど」

しかし、メニューは無視した。


【現在、あなたは『塔VS塔』特殊戦闘モード】

【ジェムデストロイヤーに参加しています】


【ルール】

【自身の巨大ジェムを防衛しながら、敵側の巨大ジェムを破壊してください】


カナヴィンは画面を読む。

「なるほど……」

説明は続く。


【塔には複数の防衛地点が存在します】

【左レーン】

【中央レーン】

【右レーン】

【それぞれに小型ジェムが配置されています】

【小型ジェムも防衛対象です】

【しかし最優先で守るべきものは中央の巨大ジェムです】


「つまり……」

カナヴィンは中央の白い巨大ジェムを見る。

「本命はこれってことか」


【勝利報酬】

【勝利トークン×1】

【交換可能】

【1勝利トークン=350ダンジョンポイント】

【また、勝利トークンショップで特殊アイテム購入可能】


「350ポイント……」

カナヴィンは少し考える。

悪くない。

今までの冒険で手に入れてきたダンジョンポイント。

それは強化や進化に必要な重要な資源だった。

しかし、まだ説明は終わっていない。


【戦闘中に死亡した場合】

【1分後に復活します】


カナヴィンは少し驚いた。

「復活できるのか」

普通なら死は終わり。

だが、この特殊ルールでは違う。

「つまり……」

彼は腕を組む。

「多少無茶はできるってことだな」

その時。

一つの疑問が浮かんだ。

「じゃあ……」

カナヴィンは小型ジェムについて考える。

「もし小さいジェムを全部無視して、大きいジェムだけ守ったら?」

すぐに答えが返ってくる。


【質問への回答】

【小型ジェムを無視した場合】

【巨大ジェムの耐久値が増加します】


カナヴィンは黙る。

数秒。

「……」

そして頷いた。

「つまり」

指を三本立てる。

「小型ジェムも重要」

さらに巨大ジェムを見る。

「でも本命はこっち」

戦略として理解した。

敵はこちらの小型ジェムを狙う。

こちらも敵の小型ジェムを破壊することで有利になる。

単純だが、重要なルールだった。

そして――

画面が変化する。


【戦闘開始まで】

【残り時間】


カナヴィンは周囲を見る。

まだ試合は始まっていない。

準備時間。

ならば。

「配置を決めるか」

彼は自分の仲間を見る。

今回の戦い。

ただ力で押し切るだけでは勝てない。

相手はSランク。

敵の戦力は未知数。

ならば、自分の強みを使う。

彼は指示を出した。


右側。

そこには――

スケルトンナイト。

「お前は右を守れ」

スケルトンナイトは静かに頷く。

左側。

そこには大量のスケルトン。

「30体は左だ」

カタカタと骨の音が響く。

大量のスケルトンホードが配置につく。

そして中央。

「ルク」

「ピィ!」

小さな仲間が中央へ向かう。

「お前はここを頼む」

ルクは元気よく鳴いた。

残るのは――

カナヴィン自身。

彼は一人だった。

「俺は……」

自分の手を見る。

「攻撃側だ」

彼のクラス。

それはアサシン。

正面から戦う戦士ではない。

影に潜み。

気配を消し。

敵の弱点を狙う。

「俺にはこれが向いている」

彼は腰から武器を取り出す。

毒の短剣。

その刃は薄暗い塔の中で怪しく輝いた。

「正面突破は必要ない」

青い炎が静かに燃える。

「敵の心臓を直接狙う」

その瞬間。

戦闘開始。


【BATTLE START】


カナヴィンの身体が薄暗い影へ沈む。

「スキル」

「ステルス・オブ・シャドウ」

瞬間。

彼の姿が消える。

影。

闇。

その全てが彼の味方になる。

敵に見つからない。

音を出さない。

存在そのものを隠す。

それがアサシン。

カナヴィンは敵陣へ侵入した。

まず狙うのは――

左側。

敵の小型ジェム。

しかし、その前に守護する敵モンスターがいた。

カナヴィンは影から覗く。

「……」

そして目を疑った。

「……え?」

そこにいた敵。

そのレベル。

「A+……?」

彼は自分の部隊を見る。

通常のスケルトン。

レベルD。

「……」

そして敵を見る。

A+。

「いや……」

少し沈黙。

「差がありすぎないか?」

しかし。

逃げる理由にはならない。

相手が強いなら。

弱点を突けばいい。

それがアサシンだ。

カナヴィンは影から飛び出した。

一閃。

毒短剣が敵の身体を掠める。

「……これでいい」

大量のダメージではない。

しかし――

毒が入った。


【毒効果発動】

【最大HPの20%ダメージ】

【15646ダメージ】


数字が表示される。

カナヴィンは確認する。

「やっぱり」

彼の毒。

それは直接攻撃力ではない。

相手の最大生命力を削る。

一度でも傷を付ければいい。

「少しでも切れば……」

敵は逃げられない。

7秒。

また毒ダメージ。


【15646ダメージ】


さらに7秒。


【15646ダメージ】


敵は苦しむ。

しかし、カナヴィンには敵意が向かない。

なぜなら。

一撃で大量ダメージを与えているわけではないから。

敵からすれば。

何が起きているのか分からない。

「気づかれない……」

カナヴィンは影の中で笑う。

「これが暗殺だ」

7秒ごと。

7秒ごと。

彼は影から現れ、敵を切る。

そしてまた消える。

時間制限はない。

敵が死ぬまで続く。


しばらく後。

最後の敵が倒れた。

ドサッ。

カナヴィンは周囲を見る。

「終わったか」


【敵モンスター撃破】

【報酬】

【300ダンジョンポイント獲得】


「300か」

悪くない。

しかし、目的はまだ残っている。

彼は巨大な小型ジェムを見る。

「次はこれだな」

短剣を構える。

そして攻撃。

一撃。

二撃。

三撃。

しかし――

「……」

宝石は壊れない。

「……」

もう一度。

「……」

さらに攻撃。

「……」

沈黙。

そして。

「WHY!?」

カナヴィンの叫び声が塔内に響いた。

「なんでジェムの耐久力こんなに高いんだ!?」

敵モンスターより硬い。

いや。

下手をすれば、壁より硬い。

「宝石だろ!?」

彼は必死に攻撃する。

カン!

カン!

カン!

骨の暗殺者が、巨大宝石をひたすら殴るという奇妙な光景が続く。

しかし。

時間をかければ。

いつか壊れる。

そして――

ついに。

ヒビが入った。

「!」

最後の一撃。

バキィィィン!!

小型ジェムが砕け散った。


【左レーン小型ジェム破壊】

【報酬】

【ダンジョンポイント獲得】


カナヴィンは自分のポイントを見る。


【現在ダンジョンポイント】

【925】


「925……」

彼は計算する。

「あと……」

指を動かす。

「75ポイント」

目標まであと少し。

カナヴィンは敵陣を見る。

まだ終わっていない。

中央。

右。

残りのジェム。

そして敵の巨大ジェム。

彼は再び影へ沈む。

「次は……」

青い炎が暗闇の中で輝く。

「中央側だ」

そして。

カナヴィンは影の中へ消えた。

だんだん上手くなってきたので、今まで1話ずつだったのを。

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