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第18章 塔と塔の衝突

世界が消えた。

一瞬の間、カナヴィンは何も感じることができなかった。

風もない。

地面もない。

音すらない。

ただ、暗闇だけが存在していた。

奇妙な感覚が全身を包み込む。

まるで距離も時間も意味を持たない場所を、無理やり引きずられているようだった。

骨だけの身体が、重力を失ったように浮かぶ。

思考さえも、自分の身体から切り離されていくような感覚。

そして――

ドォォォン!!

何か硬いものが、背中に勢いよく叩きつけられた。

「痛っ!!」

カナヴィンの声が、見知らぬ空間の中に響き渡った。

彼はそのまま、自分の骨の尻から地面へ落下した。

数秒間。

カナヴィンはその場に座り込んだまま、完全に固まっていた。

「……」

そして、ゆっくりと骨の手を後ろへ回す。

自分の尻を擦った。

「痛い……」

彼は自分の手を見る。

骸骨の顔に、困惑した表情が浮かんだ。

「……待て」

首を傾げる。

「俺、骨だけだよな?」

沈黙。

「……なんで痛みを感じるんだ?」

それは、彼が未だに答えを見つけられていない疑問の一つだった。

魂を得てからというもの。

カナヴィンの身体には、数え切れないほどの奇妙な変化が起きていた。

感情を感じる。

考えることができる。

恐怖を覚える。

そして――

恥ずかしいという感覚まで存在する。

顔の筋肉すらないというのに。

「生きるって……本当に面倒だな」

カナヴィンはため息を吐いた。

その直後。

彼は上を見上げた。

最初に目に入ったもの。

それは天井だった。

巨大な石造りの天井。

傷一つない。

穴もない。

完全に閉ざされている。

カナヴィンの青い炎の瞳が細くなる。

「……え?」

彼は立ち上がった。

「穴……」

天井を見る。

「俺が落ちてきた穴は……?」

周囲を見渡す。

何もない。

ひび割れすら存在しない。

「どこに消えたんだ?」

カナヴィンは天井へ近づく。

そして跳ぶ。

「……」

届かない。

もう一度跳ぶ。

「……」

やはり届かない。

彼は無言で天井を見つめた。

「……」

数秒後。

「……もしかして」

腕を組む。

「天井が自動で修復されたのか?」

少し考える。

「いや……」

首を振る。

「普通、天井は勝手に直らない」

再び沈黙。

「……でもこの世界には巨大な魔物も、魔法も、生きているダンジョンも、神様もいる」

彼は遠くを見る。

「……天井くらい直ってもおかしくないのか?」

恐ろしいほど納得できる答えだった。

その時。

聞き覚えのある音が聞こえた。

「……ピィ?」

カナヴィンは振り返る。

青い炎が少し明るくなる。

そこには――

彼の仲間たち。

彼がこれまで共に戦ってきたモンスターたちがいた。

そして、その中には。

「ルク!」

カナヴィンは手を振った。

「こっちだ!」

小さな姿が彼に気づく。

「ピィ!」

ルクは急いで近づいてきた。

周囲を見回しながら、明らかに困惑している。

カナヴィンは腰に手を当てた。

「うん……」

周囲を見る。

「俺にも分からない」

ルクが首を傾げる。

「ピィ?」

「そう」

カナヴィンは天井を指差す。

「落ちてきた場所は消えた」

そして周囲を見る。

「今、俺たちはここにいる」

ルクはさらに困惑したように鳴く。

「ピィ……」

「だよな」

カナヴィンも頷く。

「俺も理解できてない」

いつもなら。

分からないのはカナヴィンだけだった。

この世界は広すぎた。

ルールは複雑だった。

何もかもが彼を殺そうとしていた。

しかし今は違う。

ルクですら、この状況を理解できていない。

その時――

カナヴィンの頭の中に奇妙な感覚が走った。

ダンジョンそのものが、何かを伝えているような感覚。

彼はメニューを開く。

透明な青い画面が現れた。


【ダンジョン管理システム】

【現在地:不明】

【特殊イベントを確認】

【塔対決が開始されました】


「塔……?」

カナヴィンは眉をひそめる。

さらに画面を見る。

新しい項目が表示された。


【ランキングメニュー】

【0-0】

【Sランク ブラッドタワー】

   VS

【Aランク アスケレトン・クリーチャラックタワー】


カナヴィンは動きを止めた。

「……」

もう一度見る。

そして、さらに見る。

「……待て」

頭蓋骨を擦る。

「Sランク……?」

画面に表示された文字は変わらない。

Sランク。

その言葉だけで、空気が重くなったように感じた。

彼は知っている。

その強さを。

未知の大陸。

そこに存在する人型ドラゴンたち。

普通の存在とは次元が違う力。

強大すぎる存在。

思い出した瞬間。

カナヴィンの身体が震えた。

「Sランク……」

足の力が抜ける。

彼は片膝をついた。

「何……?」

声が震える。

「Sランクの塔……?」

「それと……俺たちが?」

青い炎が揺れる。

恐怖。

かつて感じたもの。

自分より遥か上に存在する者への絶対的な恐怖。

彼は一度、理解してしまった。

この世界には、自分など簡単に消し去れる存在がいる。

「Sランク……」

カナヴィンは俯く。

しかし――

次の瞬間。

彼はゆっくり立ち上がった。

「……なぜだ」

拳を握る。

「なぜ俺が……そいつを恐れる必要がある?」

青い炎が少しずつ強く燃え始める。

ルクが彼を見る。

仲間たちも見る。

カナヴィンはランキング画面を見る。

「Sランクだから?」

首を振る。

「だから何だ」

彼は笑った。

「そいつは……弱い相手としか戦っていないだけだ」

声が強くなる。

「本当に強いなら」

拳をさらに握る。

「なぜAランクを避ける?」

静寂。

「なぜ自分より強い相手を探さない?」

カナヴィンの青い炎が広がる。

恐怖ではない。

決意だった。

「そいつは挑戦者を探しているんじゃない」

「簡単に勝てる相手を探しているだけだ」

彼は前を見る。

Sランク。

ブラッドタワー。

自分たちを下に見ている存在。

カナヴィンの魂が燃える。

神に失敗作と呼ばれた魂。

捨てられた存在。

宇宙で最弱の種族。

それでも――

彼は立っている。

「もし……」

カナヴィンは拳を掲げる。

「そいつが弱い相手と戦いたいなら」

青い炎が、眼窩の中で大きく燃え上がった。

「俺が……」

「無視できない相手になってやる」

塔全体が震える。

そしてカナヴィンは、未知なる敵へ向けて言葉を放つ。

「なら俺が……」

「お前が戦いたくなるほどの強敵になってやる」

すみません、最近投稿できていなくて。

今ちょっと体調を崩していて、病気になっています。


でも、これからも投稿は続けるつもりです。

少しずつ良くなってきているので、安心してください。

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