表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
治癒魔法に見捨てられた辺境から始まる「現代医療」チート~寿命を全うした大先生は、隠居を諦めて最強の病院を創るそうです~  作者: RIU


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/38

第14話「大先生の目覚めと、押し付けられた大豪邸」

深い泥の底に沈んでいたような感覚から、ゆっくりと意識が浮上していく。

次に目を開けた時、私の視界に飛び込んできたのは、見慣れたギルドのすすけた天井ではなく、精緻な彫刻が施された天蓋付きのベッドだった。


「……また天国がランクアップしておるな。今度はスイートルームか」


私がぼんやりと呟きながら身をよじると、ベッドの脇でとんでもない光景が繰り広げられていた。


「おおおおっ! 先生が! 先生がお目覚めになられたぞぉぉっ!」


むさ苦しいドワーフ(グズガル)が号泣しながら叫び、気弱な薬師テティアが「神様、仏様、先生様……っ!」と祈りを捧げている。

そして、私の顔を覗き込む犬耳の少年ザッシュの目からも、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちていた。


「先生……! よかった、本当によかった……!」

「やかましいわ。病室(?)では静かにせんか。……儂はどれくらい寝ておったんじゃ?」

「丸五日です」


部屋の隅で腕を組んでいたオスウェルが、静かに答えた。彼の目の下にも深いクマがある。私が倒れてからずっと、不眠不休で護衛をしてくれていたのだろう。


「五日か。……まあ、10歳の体で三日も徹夜すればそうなるわな」


私はゆっくりと上半身を起こした。

体は羽のように軽く、視界もクリアだ。ただ、猛烈に腹が減っている。


「……して、ここはどこじゃ?」

「街の中心部、領主様が所有する別邸の一つです」


オスウェルの説明によれば、私が倒れた後、事態は劇的に動いたらしい。

『黒死吐き』のパンデミックを、魔法なしで完全に制圧した幼女の噂は、下層スラムの住人たちから爆発的に広まり、ついには街の領主の耳にまで届いた。

逆に、事態を放置して真っ先に逃げ出した教団の治癒士たちは、領主の怒りを買い、街から事実上の追放処分を受けたという。


「領主様は、先生の功績を高く評価されています。この屋敷と、莫大な支度金……そして『街の医療の全権』を先生に委ねると」

「は……?」


私はポカンと口を開けた。


「全権? 莫大な支度金? ……待て待て待て! 儂は森の奥でスローライフを送るんじゃ! こんな目立つ場所に屋敷なんか構えたら、毎日患者が押し寄せて休む暇もなくなるじゃろうが!」


慌ててベッドから降りようとする私を、ザッシュが必死に止める。


「で、でも先生! もう街の人たちは、先生の『科学』しか信じていないんです! 先生がいないと、また怪我や病気で死ぬ人が出ちゃいます!」

「知ったことか! 儂は前世で散々働いたんじゃ! 今世は絶対に、何がなんでも隠居……」


『大先生ェェェーッ!!』


その時、屋敷の外から地鳴りのような歓声が聞こえてきた。

窓を開けて下を見下ろすと、屋敷を囲む鉄柵の外に、見渡す限りの群衆――スラムの住人から、上層の商人、冒険者たちまで――が押し寄せ、大合唱を巻き起こしていたのだ。


『大先生、万歳!』

『ルンデルの救世主! 小さな大先生!』


「…………」


私は無言で窓を閉め、分厚いカーテンを引き、ベッドに潜り込んでシーツを頭から被った。


「オスウェル。馬車を用意しろ。夜逃げじゃ」

「諦めな、小さな大先生。あんたの手が神に等しいと、世界が気づいちまったんだ」


オスウェルの容赦ない宣告が、豪華な寝室に虚しく響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ