ep8 スペインの風
※この物語は、1DKという名の宇宙船で大銀河を生き抜く、一人の女性の等身大スペースオペラである
緊急事態発生。
独立航行を旨とする我が203号室に、他星系からの外交官(友人)が乗船するという。
私は直ちに「オペレーション・クリーン」を発動した。
「……まずは、風呂場の深淵に潜む宇宙アメーバ(カビ)を掃討する」
私は化学兵器を装備し、防護マスクという名の擬態を施した。
シュッ、シュッ――。
白い泡がアメーバの触手を焼き切っていく。気分はさながら、未開の惑星で汚染区域を浄化する宇宙海兵隊だ。
「……よし。船内(部屋)の環境維持、完了。外交官を迎え入れる準備は整った」
やがて到着した友人は、強力な「親善物資」を携えていた。
辛口シェリー酒の傑作、ティオ・ぺぺ。
さらに、彼女の手による「ピンチョス」という名の、色彩豊かな小型戦闘糧食。
「……これが、文明の光か」
孤独なサバイバル飯とは対極にある、繊細な手仕事。
私は、冷えたティオ・ぺぺをグラスに注ぎ、彼女と乾杯を交わした。
シャープな酸味と、ピンチョスの塩気が、乾ききった私の感情回路を再起動させていく。
メインスクリーンには、往年のスペースオペラ映画を投影。
巨大な戦艦が銀河を駆ける映像を肴に、私たちは仕事のこと、宇宙のこと、そしてとりとめのない未来のことを語り合った。
「……楽しいな、こういうのも」
やがて夜の帳が降り、私たちはそれぞれの「脱出ポッド(布団)」で眠りについた。
静寂に包まれた1DK。だが今夜の宇宙は、いつもより少しだけ温かかった。
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【投入資産】 【コスト】 【備考】
・化学兵器 : 30円 (カビキラー換算。一掃に成功)
・外交用親善物資 : 0円 (友人からの贈呈品)
・文化教養維持費 : 400円 (サブスク・電気代・つまみ端材)
──────────────────────
【合計コスト】 : 430円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【作戦評価】
他個体とのコミュニケーションによる精神的バフを獲得。
風呂場の環境浄化(カビ撲滅)により、船内の居住性が大幅に向上。
「ティオ・ぺぺ」の有効性を再確認。次回、自力調達の検討に入る。




