ep6 トマトリゾット
※この物語は、1DKという名の宇宙船で大銀河を生き抜く、一人の女性の等身大スペースオペラである
月曜、午前七時。
非常ベル(目覚まし)という名の、容赦なき空襲警報が私を覚醒させる。
意識はまだ、週末という名の深い星系に置き忘れたままだが、社会という名の重力圏はそれを許してはくれない。
「……起床。ミッション、開始」
重い四肢を引きずり、私はコックピット(キッチン)へと向かう。
今朝の戦略目標は、最短時間での「エネルギー充填」だ。
「……ストックを確認する。オートミール、そしてトマトジュースか」
ダイエットという名の「軍縮競争」に敗れ、食料庫の奥底に死蔵されていたオートミール。そして、お歳暮という名の「同盟国からの物資」として届いたトマトジュース。
私はフライパンという名の反応炉に、真っ赤な液体を注ぎ込んだ。
「コンソメ、投入。……そして、この乾燥した粒子を流し込む」
数分後。
粉チーズという名の「ホワイトパウダー」を振りかけ、簡易トマトリゾットが完成した。
一分一秒を争う出撃前、これが私の精一杯の抵抗だ。
「実食」
…………。
……うん、普通。
「……ハムか、ウィンナーか。肉という名の『弾力』が、決定的に不足しているな」
口の中に広がるのは、健康という名の少し物足りない正義。
だが、腹が満たされればそれでいい。
私は鏡の前に立ち、戦場(現代社会)に相応しい「擬態」を施す。
「……デプロイ(展開)。」
私はハッチを開け、眩しすぎる朝日の中へと飛び出した。
一週間という名の、長い遠征が始まった。
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
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【投入資産】 【コスト】 【備考】
・同盟国からの支援 : 0円 (お歳暮のトマトジュース)
・軍拡の遺産 : 30円 (使いかけオートミール)
・ホワイトパウダー : 10円 (粉チーズ。換算)
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【合計コスト】 : 40円
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【作戦評価】
低コスト、かつ短時間でのエネルギー補給に成功。
味覚的満足度は低いものの、空腹による機能低下は回避。
次回の朝食ミッションに向け、タンパク質(肉)の徴用を検討する。




