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57/61

ep57 豆腐もやしバーグ

……二〇〇〇(フタマルマル)。


一か月に及ぶ「整備ドック(リビング)」での籠城戦が終わった。

キャブレターは銀河の星々のように磨き上げられ、スパークプラグは鋭い火花を散らす。

タイヤ、チェーン、灯火類……全てのシステムが「オールグリーン(正常)」を指している。


「……五万で購入し、整備に三万。計八万。……アルカディア号の修繕費に比べれば、星屑のような微々たる損害コストだ」


だが、代償はあった。

私の1DK型宇宙船の気圧調整システム(換気)を潜り抜け、オイルの匂いがカーテンの裏まで浸透している。


「……乙女の部屋の匂いではないな。……だが、嫌いではない。……いや、いかん。擬態が剥がれすぎている」


私は、空っぽになった財布(兵站)を補填すべく、伝説の極貧レシピを再起動した。


ターゲットは、「豆腐もやしバーグ」。

1.もやし: 刻んで質量を水増し(ボリュームアップ)。

2.割引豆腐: 繋ぎ兼、タンパク質の供給源。

3.少量の挽肉: 唯一の「肉感」を司る。

4.大量のスパイス: 安価な食材たちの「大豆感」と「青臭さ」を、強引に戦場の焦げ跡(旨味)へと変える。


実食。

…………。

「……うん、普通に美味い(安定の着陸点)」

もやしのシャキシャキとした食感が、肉の少なさを補う「偽装工作」として完璧に機能している。


コスモゼロ4号のキャブレターを磨いたこの手で、今度は豆腐を練る。


「……これもまた、銀河を生き抜くためのマルチタスクだ」


私は、爪の間に残った黒いオイル(グリス)を、石鹸という名の「特殊洗浄液」で入念に洗い流した。


明日は司令部(会社)で、再び「しとやかなOL」という名のステルス任務が待っている。

だが、そのジャケットの袖口からは、微かに2ストロークエンジンの鼓動(匂い)が漏れているかもしれない。



 ▼バーディ80・完全換装報告(Final Commissioning)

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【取得&整備費】  : 合計 80,000円

 【機体コンディション】: 極上(即時進宙可能)

 【部屋の状態】   : ガソリンスタンド風(要換気)

 ──────────────────────

 【今夜の配給メニュー】

 ・豆腐もやしバーグ : 約 120円

 ・甲類焼酎(炭酸割): 約 60円

 ──────────────────────

 【結論】

 ・財布は軽くなったが、心は2ストの加速のように軽い。

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