ep57 豆腐もやしバーグ
……二〇〇〇(フタマルマル)。
一か月に及ぶ「整備ドック(リビング)」での籠城戦が終わった。
キャブレターは銀河の星々のように磨き上げられ、スパークプラグは鋭い火花を散らす。
タイヤ、チェーン、灯火類……全てのシステムが「オールグリーン(正常)」を指している。
「……五万で購入し、整備に三万。計八万。……アルカディア号の修繕費に比べれば、星屑のような微々たる損害だ」
だが、代償はあった。
私の1DK型宇宙船の気圧調整システム(換気)を潜り抜け、オイルの匂いがカーテンの裏まで浸透している。
「……乙女の部屋の匂いではないな。……だが、嫌いではない。……いや、いかん。擬態が剥がれすぎている」
私は、空っぽになった財布(兵站)を補填すべく、伝説の極貧レシピを再起動した。
ターゲットは、「豆腐もやしバーグ」。
1.もやし: 刻んで質量を水増し(ボリュームアップ)。
2.割引豆腐: 繋ぎ兼、タンパク質の供給源。
3.少量の挽肉: 唯一の「肉感」を司る。
4.大量のスパイス: 安価な食材たちの「大豆感」と「青臭さ」を、強引に戦場の焦げ跡(旨味)へと変える。
実食。
…………。
「……うん、普通に美味い(安定の着陸点)」
もやしのシャキシャキとした食感が、肉の少なさを補う「偽装工作」として完璧に機能している。
コスモゼロ4号のキャブレターを磨いたこの手で、今度は豆腐を練る。
「……これもまた、銀河を生き抜くためのマルチタスクだ」
私は、爪の間に残った黒いオイル(グリス)を、石鹸という名の「特殊洗浄液」で入念に洗い流した。
明日は司令部(会社)で、再び「しとやかなOL」という名のステルス任務が待っている。
だが、そのジャケットの袖口からは、微かに2ストロークエンジンの鼓動(匂い)が漏れているかもしれない。
▼バーディ80・完全換装報告(Final Commissioning)
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【取得&整備費】 : 合計 80,000円
【機体コンディション】: 極上(即時進宙可能)
【部屋の状態】 : ガソリンスタンド風(要換気)
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【今夜の配給メニュー】
・豆腐もやしバーグ : 約 120円
・甲類焼酎(炭酸割): 約 60円
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【結論】
・財布は軽くなったが、心は2ストの加速のように軽い。
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