ep55 ファミリーバイク特約
……二三〇〇(フタサンマルマル)。
私は、1DK型宇宙船の管制室で、最新のバイクスペック表と睨み合っていた。
「……いかん。……これは、極めて危険な思考回路だ」
だが、発見してしまった事実は消せない。
アルカディア号の任意保険に付帯できる「ファミリーバイク特約」
これがあれば、125cc以下の機体であれば、維持費の最大障壁である「保険料」を、無視できるレベルまで圧縮できるのだ。
「……さらに。……我が母艦の格納庫(駐輪場)には、まだコスモゼロ3号以外の機体を収容できる空きスペース(余裕)が存在する……」
条件は揃ってしまった。あとは「初期導入コスト」と「日々の運営予算」のみ。
私は、脳内の13人委員会を緊急招集。財務担当者が、血の滲むような「新予算案」を提示した。
「……現在、月4回に設定されている『もやしゲッティ(もやしをパスタに見立てたサバイバル飯)』の配給頻度を、月15回まで引き上げる。……これにより、食費兵站を強制的に圧縮。……その差額を、原動機付自転車二種(125cc)の軍拡資金へ転用する!」
13人の私が騒然となる。
「正気か! 月の半分をもやしで凌ぐというのか!」
「……だが、あの風を、あの加速を再び手に入れるためなら、私はもやしをパスタだと思い込む自信がある……」
窓の外には、静かに佇むアルカディア号。
そして、工廠で出番を待つまだ見ぬ「小型高速機」への憧れ。
私は、画面の中の125ccの機体を見つめながら、甲類焼酎を一口。……心なしか、焼酎がガソリンの匂いに思えてきた。
▼軍拡予算・極限再編案(Survival Budgeting)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【現行兵站】 【改定案】 【期待される余剰】
・標準食費 ⇒ もやしゲッティ重点 +15,000円
・娯楽費 ⇒ バイク雑誌閲覧(無料) +3,000円
──────────────────────
【軍拡目標】
・125ccクラスの小型戦闘機(中古/新車問わず)。
・ファミリーバイク特約の即時発動。
・生体ユニットの栄養失調回避(もやしの限界に挑む)。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




