ep54 ビーフシチュー
……一〇〇〇(ヒトマルマル)。
私は、兵器レンタル工廠の駐機場に立っていた。
召喚したのは、最新鋭の都市型戦闘機、ホンダ・PCX。
「……フッ。……士官学校時代(大学生)のジェンマ250以来の、このエンジンの鼓動……。手が、感覚を覚えている」
そこに、随伴艦のMちゃんが合流。
彼女の愛機は、ヤマハ・トリシティ。
二つの前輪が複雑なリンクを描くその姿は、まるで惑星探査用の重機、あるいは多脚歩行兵器を彷彿とさせる。
「……かっこいい。……そのメカメカしいフロントフォーク、私のメインカメラ(網膜)がゾクゾクと反応しているぞ」
往復100km。
最初は「おっかなびっくり」という名の出力制限をかけていた私だが、風を切り、慣性制御を繰り返すうちに、失われていた「二輪のプロトコル」が再起動した。
目的地は、隣県の道の駅にある「アウトドアカフェ」。
そこは、高価なスノーピークやノルディスクといった「高級装甲」が展示された、私のような節約キャンパーには眩しすぎる軍事拠点だった。
「……だが、料理の値段は想定内だ」
私は、「ビーフシチューとバケットのセット」をオーダー。
ツーリングという名の「高負荷運動」を経た身体に、濃厚なデミグラスソースが染み渡る。
実食。
…………。
「……美味い!!」
なぜ、風に吹かれて走った後の飯は、これほどまでに味覚を増幅させるのか。
アイスティーの清涼感が、ヘルメットで火照った頭脳をクールダウンさせていく。
夕刻。
無事に兵器を返却し、Mちゃんにアカネハイツ203号の至近まで護衛(送迎)してもらい、私の航海は終了した。
「……バイク。……やはり、良いものだ……」
1DKの管制室に戻り、私は再び「脳内13人委員会」を招集しようとしたが、すぐに頭を振った。
「……いや、無理無理無理無理!! ……今の私の予算規模では、維持費という名の『ブラックホール』に飲み込まれるのが関の山だ!」
私は、コスモゼロ3号(22,800円)のタイヤをそっと撫で、現実という名の帰還軌道へと戻った。
▼特別演習・二輪哨戒報告(Touring Report)
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【レンタル兵器】 : ホンダ・PCX(最新型)
【随伴艦】 : Mちゃん(トリシティ125/155)
【作戦距離】 : 往復 100km
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【支出報告】
・レンタル費用(保険込): 約 8,000円
・燃料代 : 約 500円
・ビーフシチューセット : 約 1,500円
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【総評】
・PCXの燃費と加速性能に、アルカディア号との格差を痛感。
・Mちゃんのトリシティへの「メカ愛」が爆発。
・「欲しい」という欲望を、強い意志(現実)で緊急停止。
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