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54/61

ep54 ビーフシチュー

……一〇〇〇(ヒトマルマル)。


私は、兵器レンタル工廠レンタルバイクの駐機場に立っていた。

召喚したのは、最新鋭の都市型戦闘機、ホンダ・PCX。


「……フッ。……士官学校時代(大学生)のジェンマ250以来の、このエンジンの鼓動……。手が、感覚を覚えている」


そこに、随伴艦のMちゃんが合流。

彼女の愛機は、ヤマハ・トリシティ。

二つの前輪が複雑なリンクを描くその姿は、まるで惑星探査用の重機、あるいは多脚歩行兵器を彷彿とさせる。


「……かっこいい。……そのメカメカしいフロントフォーク、私のメインカメラ(網膜)がゾクゾクと反応しているぞ」


往復100km。

最初は「おっかなびっくり」という名の出力制限リミッターをかけていた私だが、風を切り、慣性制御バンクを繰り返すうちに、失われていた「二輪のプロトコル」が再起動した。


目的地は、隣県の道の駅にある「アウトドアカフェ」。


そこは、高価なスノーピークやノルディスクといった「高級装甲ギア」が展示された、私のような節約キャンパーには眩しすぎる軍事拠点だった。


「……だが、料理の値段は想定内だ」


私は、「ビーフシチューとバケットのセット」をオーダー。


ツーリングという名の「高負荷運動」を経た身体に、濃厚なデミグラスソースが染み渡る。


実食。

…………。

「……美味い!!」


なぜ、風に吹かれて走った後の飯は、これほどまでに味覚を増幅ブーストさせるのか。

アイスティーの清涼感が、ヘルメットで火照った頭脳をクールダウンさせていく。


夕刻。

無事に兵器バイクを返却し、Mちゃんにアカネハイツ203号の至近まで護衛(送迎)してもらい、私の航海は終了した。


「……バイク。……やはり、良いものだ……」


1DKの管制室に戻り、私は再び「脳内13人委員会」を招集しようとしたが、すぐに頭を振った。


「……いや、無理無理無理無理!! ……今の私の予算規模では、維持費という名の『ブラックホール』に飲み込まれるのが関の山だ!」


私は、コスモゼロ3号(22,800円)のタイヤをそっと撫で、現実という名の帰還軌道へと戻った。



 ▼特別演習・二輪哨戒報告(Touring Report)

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【レンタル兵器】  : ホンダ・PCX(最新型)

 【随伴艦】     : Mちゃん(トリシティ125/155)

 【作戦距離】    : 往復 100km

 ──────────────────────

 【支出報告】

 ・レンタル費用(保険込): 約 8,000円

 ・燃料代       : 約 500円

 ・ビーフシチューセット : 約 1,500円

 ──────────────────────

 【総評】

 ・PCXの燃費と加速性能に、アルカディア号との格差を痛感。

 ・Mちゃんのトリシティへの「メカ愛」が爆発。

 ・「欲しい」という欲望を、強い意志(現実)で緊急停止。

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