ep51 脳内会議
……一八〇〇(ヒトハチマルマル)。
私は、コスモゼロ3号のペダルを軽快に踏み込み、アカネハイツ203号へと続く「帰還航路」を滑走していた。
「……フッ。……予算に余裕がある。……この心地よい万能感、久しぶりだ」
私の脳内では、現在「第十三次・新年度軍拡会議」が絶賛開催中である。
議題:【野営能力の拡張について】
• 主戦論者A: 「テント、寝袋、マットの三種の神器を即刻導入すべきだ! アルカディア号(車中泊)に依存しすぎるのは、戦術の硬直化を招く!」
• 現実主義者B: 「馬鹿を言え。アルカディア号こそが最強の睡眠ポッドだ。テントなど設営の手間が増えるだけだ。……しかし、車中泊禁止の停泊地(キャンプ場)があるのも事実……」
• 財務担当C: 「軍資金はある。……だが、買い急ぐのは得策ではない」
13人の小さな私が、脳内の議場で怒号を飛ばし、資料を投げ合っている。
だが、その喧騒を切り裂くように、一人の私が静かに発言した。
「……軍拡もいい。……だが、コールドスリープ装置(冷凍庫)を占拠している『おからパンケーキ』の大群、あいつらをどうにかするのが先ではないのか?」
……沈黙。
そうだ。あの「白き砂漠」から精製された積層装甲たちが、今や冷凍庫という名の宇宙港を完全に圧迫。
このままでは、新しい補給物資(肉やビール)の受け入れが不可能となる。
「……明日から、毎朝の補給(朝食)はパンケーキの集中投下とする」
私は、コスモゼロ3号を駐機(駐輪)し、203号室のハッチを開けた。
軍拡の夢と、凍りついたおからの現実。
両者を抱えながら、艦長の夜は更けていく。
▼軍拡会議・検討中リスト(Shopping Cart Log)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【検討項目】 【予測コスト】 【優先度】
・軽量ソロテント : 15,000円~ (☆☆☆)
・ダウン寝袋 : 20,000円~ (☆☆★)
・エアマット : 5,000円~ (☆★★)
──────────────────────
【現在の最優先任務】
・「おからパンケーキ」の計画的消費。
・コスモゼロ3号の整備(チェーンへの注油)。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




