ep4 桜ちらし寿司
※この物語は、1DKという名の宇宙船で大銀河を生き抜く、一人の女性の等身大スペースオペラである
四月。
外界では「お花見」という名の、大規模な観艦式が挙行されているようだ。
だが、アカネハイツ203号の艦長たる私は、その狂乱に身を投じることはない。なぜなら、この艦の観測窓(ベランダの窓)からは、近所の公園の桜という名の「精鋭艦隊」が視認できるからだ。
「……私も、式典に参加すべきだろうな」
私はホワイトホールの深淵を覗き込んだ。
そこにあったのは、卵。そして……「紅生姜」という名の、かつて牛丼作戦で徴用された端役の兵士。
「紅生姜……。この鮮烈な赤。これを、桜の代用品として偽装する」
まずは「冷凍睡眠」から目覚めさせた白飯を解凍する。
そして、紅生姜を細かく刻み、その抽出液(汁)を卵液へと投入。
砂糖、顆粒出汁、そして紅生姜のエッセンス。
フライパンという名の工廠で薄く焼き上げれば、そこに現れたのは、淡いピンクに染まった「桜色の装甲」だった。
「……美しいな」
白飯の上に刻んだ紅生姜を散らし、その上から桜色の薄焼き卵を敷き詰める。
見てほしい。1DKの薄暗いキッチンに、突如として「ちらし寿司」という名の春が到来した。
「これは……緊急事態だ。通常燃料では、この美学に釣り合わない」
私は予備費という名の「隠し金庫」を開けた。
取り出したのは、黄金に輝く高オクタン燃料……「エビス」。
今日この瞬間のためだけに、私はこの最強の触媒を保存していたのだ。
「独り観艦式、開始。……乾杯」
ベランダの窓を開け、夜風に吹かれながらエビスを煽る。
ピンクの偽装寿司を口へ運ぶ。
…………。
……うん、普通。
ただの「紅生姜味の卵ご飯」だ。
だが、エビスのコクが、そのチープな味を無理やり特等席のディナーへと押し上げていく。
夜桜の散る様を見ながら、私は贅沢な独り占めの勝利に酔いしれた。
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
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【投入資産】 【コスト】 【備考】
・最強燃料: 280円 (観艦式用・特別予算)
・偽装素材(卵) : 30円 (ラスト一機)
・桜色の残滓(生姜): 0円 (牛丼作戦の生き残り)
・冷凍睡眠(白飯) : 40円 (電力量換算)
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【合計コスト】 : 350円
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【作戦評価】
ビジュアル面での最高評価(Sランク)を達成。
特別予算の投入により、精神的充足度は極めて高い。
明朝からの通常航行に備え、速やかにワープ航法へ移行する。




