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ep3

※この物語は、1DKという名の宇宙船で大銀河を生き抜く、一人の女性の等身大スペースオペラである

21時58分。

アカネハイツ203号の艦長こと私は、満身創痍で帰還した。


今日の外敵(取引先)との砲雷撃戦は苛烈を極め、結果として夜戦(残業)への突入を余儀なくされた。


「……計算が、狂った」


デポ(スーパー)の営業時間は終了。補給路は絶たれた。


だが、この艦には唯一の希望がある。

予約炊飯に成功した、炊きたての「白飯」という名の聖域だ。


「さあ、残存勢力を確認する……」


冷蔵庫の隅。死にかけの玉ねぎという名の敗残兵。

それから、最後の予備弾薬(卵)が一つ。


そして、食料庫の奥底で眠っていた、いつの代のものかも知れぬ「お麩」という名の旧式装備を発見した。


「……ふっ。お前、まだ生きていたのか」


私は金麦のプルタブを引き、冷却を開始する。

今夜のミッションは、これら旧式兵器を統合した「卵丼」の構築だ。


お麩を水で戻し、玉ねぎをスライスする。

フライパンという名の戦場で、わずかな醤油と砂糖が爆ぜる。

そこに、水を含んで重装甲化したお麩を投入。やつは肉の代用という名の「影武者」を立派に務め上げるはずだ。


「溶き卵、投下。……今だ、ハッチ(蓋)を閉じろ!」

数秒後。

黄金色のヴェールに包まれた「お麩入り卵丼」が完成した。


傍らには、インスタントという名の「自動防衛システム」が生成した味噌汁を添える。


「実食」

熱々の白飯と共に、お麩を頬張る。

…………。

……うん、普通。


お麩はどこまで行っても、肉になりきれなかった悲哀を纏っている。

だが、インスタント味噌汁の塩分が、戦い疲れた細胞に染み渡る。


「……悪くない。生き延びたぞ、今夜も」


私は残りの金麦を煽り、意識を「ワープ航法(睡眠)」へと向けた。

艦内の灯火を順次遮断し、203号室は静かな宇宙へと溶けていく。



 ▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【投入資産】    【コスト】 【備考】

 ・高オクタン燃料 : 200円  (金麦1缶。冷却用)

 ・予備弾薬(卵) :  30円  (最後の一個。貴重品)

 ・旧式装備(お麩):  0円  (減価償却済み。遺産)

 ・遺物(冷凍白米):  20円  (減価償却済み。遺産)

 ・自動防衛システム:  20円  (インスタント味噌汁)

 ──────────────────────

 【合計コスト】  : 270円

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【作戦評価】

 枯渇した物資の中、旧式装備による戦線維持に成功。

 白飯の温かさが精神的耐久値を大幅に回復させた。

 明日の補給作戦、及び対外敵戦に備え、全システムを休止する。

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