ep2 マヨポン鶏
※この物語は、1DKという名の宇宙船で大銀河を生き抜く、一人の女性の等身大スペースオペラである
21時03分。
本日の残業という名の「泥沼戦」を終え、私は1DK型宇宙船のコックピットに滑り込んだ。
脳内レーダーが警告を発している。エネルギー残量、危険域。
「……補給、開始」
まずは儀式だ。冷蔵庫の最前線から「青金の円筒(金麦)」を引き抜き、内圧を一気に解放する。
カシュッ。
この音こそが、私を「社会人」から「艦長」へと切り替えるスイッチだ。
さて、今夜の戦力(食材)は。
私は冷凍庫という名の「氷河期エリア」へ指を伸ばした。
霜に覆われ、正体不明の化石と化した銀色の包み。……推定、二週間前の鶏むね肉。
「……再起動を開始する」
レンジという名の粒子加速器へ投入。
解凍。それは、凍てついた時間を無理やり現代へと引き戻す、禁断の儀式だ。
「……ピー」
蘇った肉は、どことなく「頼りない」質感を見せている。
私はそれを削ぎ切りにし、片栗粉という名の「防護コーティング」を施した。
今夜の戦術は、マヨネーズとポン酢による「酸味の飽和攻撃」だ。
フライパンの上で、氷河期の遺産が黄金色の装甲を纏っていく。
立ち上がる香ばしい匂い。これだ。これが1DKの夜を支配する香りだ。
「実食」
マヨポン鶏を口へ運ぶ。
……。
……うん、普通。
いや、むしろちょっと硬い。解凍の仕方を誤ったか。だが、この「噛み応え」こそが、今日という一日を噛み締めるための抵抗だ。
ミッション完了。
ここから先は、慣性航行へ移行する。
除染、重力洗浄、そして残りの燃料(金麦)を流し込み……。
私は「睡眠」という名のワープ航法へと入り、明日という名の銀河の果てを目指した。
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
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【投入資産】 【コスト】 【備考】
・高オクタン燃料 : 200円 (金麦1缶。ブースト用)
・氷河期の遺産 : 120円 (鶏むね肉。二週間前の化石)
・防護コーティング: 5円 (片栗粉、マヨネーズ等)
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【合計コスト】 : 325円
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【作戦評価】
冷凍物資の有効活用を確認。
咀嚼回数の増加により、満腹中枢への刺激に成功。
明日の補給ポイント(スーパーの特売)を目標に航行を継続する。




