ep26:大葉ラー油豆腐
……警告。
母船・アカネハイツ203号の艦内温度、上昇。
北の大地で得た「涼」のバフは既に霧散し、私のバイタルは酷暑という名の重力に押し潰されようとしていた。
「……食欲不振か。……否、これは適切なエネルギー供給が滞っているだけだ」
私は、冷蔵庫という名の小銀河を索敵。
確保したのは、特売の「大葉」と「豆腐」。これらを、この熱地獄を生き抜くための冷却ユニットへと改造する。
まず大葉を精密に刻み、ビニール袋内で胡麻油、醤油、顆粒出汁という名の「化学反応剤」と共に揉み込む。
そのまま冷蔵庫へお返りいただく。
その間に、私はシャワーを浴び、社会という戦場を生き抜くための「乙女への擬態」をパージした。
冷え切った豆腐を皿という名のカタパルトへ。
そこに、寝かせ終えた翠緑の「大葉漬け」を装填し、ミッション開始。
実食。
…………。
……美味い。……いや待て。
私はここで、禁断のブースター「ラー油」をひと垂らし投入した。
「……む、……むぉぉぉ……!! 美味い!!」
ラー油の辛味が、大葉の香りと豆腐の冷却性能を爆発的に増幅させる。
PBの安ビールという名の「低品質冷却水」が、火照った喉元を蹂躙し、体内の熱を強引に奪っていく。
「……ふぅ。……胃壁の再起動を確認。……予備兵糧(素麺)の投入を許可する」
私は鍋に火をかけた。
1DKという名の宇宙船は、今夜もまた、熱帯夜という名の暗黒星雲を静かに航行していく――。
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
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【投入資産】 【コスト】 【備考】
・冷却素体(豆腐) : 38円 (三丁パックの一丁)
・香味装甲(大葉) : 50円 (特売品を贅沢に)
・代替燃料(PBビール): 98円 (今夜は二本目も視野に)
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【合計コスト】 : 186円
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【作戦評価】
夏季限定メニュー「大葉ラー油豆腐」の開発により、食欲の回復を確認。
素麺の茹で作業に伴う「室温上昇」という副作用への警戒が必要。




