星月夜
──星が生まれる
ひときわ輝くその星は、星座のように繋がり形を成す
やがて無数の希望が輝き始めるでしょう
今日見た星月夜のように
ガランでの百合の予言から30年近く。
あの日私たちを追いかけて来たマキナの娘は現在、日本のオキザリス本部にいる。
2年前、ガラン危機の時に4人を日本にジャンプさせたのがレイナだ。
研究が進んで、以前より少ない魔法で一度に何人もを転移させることができるようになった。とはいえ、星間転移は熟練のジャンパーでも危険で難しいのは変わらない。
4人を一度にジャンプさせられるほどのジャンパーは彼女しかいない。だから、次のジャンプはレイナと私の2人で行おうと決めた。
廊下を歩いていると後ろから駆けてくる足音がした。
「雲水!」と呼ぶ声、息が弾んでいる。
「君はいつも慌てているな、レイナ」
30年前もこんな風だったなと思い笑みがこぼれた。
「だって! あなたが知りたがっていた事が分かったのよ。話を聞く?」
「聞くよ」
「雲水の親友だったモンドとプレ討伐隊のレティアは、一家でいるところを魔物に襲われて亡くなったと言っていたわよね。1人だけ生き残った子がいるわ。育成所の過去のデータを見せてもらったの」
育成所が入所時に作成したという孤児のデータを受け取った。
児童 5歳男児 クレオ
両親「モンド・エゼキエラ」と「レティア・エゼキエラ」*共に死去
発見場所:西の丘8地区
発見者:西討伐隊 メルジェP
状況:木の枝に引っかかった状態で泣いていた。魔王軍の攻撃で飛ばされたらしい。
「運の良い子ね。クレオは育成所を出て討伐隊に入り、後に結婚したみたい」
「クレオ……討伐隊の名簿を辿ってみようか」
「もう調べたわ。クレオはジャンプしてきた日本人と結婚していた。子供を1人もうけたけど、クレオと妻はその子が6歳の時に亡くなったの」
「ああ……」
がっかりして俯く私の背中を叩いてレイナが言った。
「その子供が真・スターリーナイトよ」
にわかには信じられず、額に手を当てたまま言われた事を反芻した。
親友モンドに孫がいた。一本だけ繋がった命の綱の先に光があった。それが星月夜即真。
「何という事だ……こんな所でモンドと繋がるなんて。ありがとうレイナ」
「良かったわね。母親の名前はオキザリス脱退者データの中にあったわ」
星月夜 和泉
出生地:地球(日本国) 出生年:19××年
性別:女 身長:157cm 能力:魔法使い ✔発動済
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9歳の時に地球(日本国)からオリジン星(ガラン村)へ転移 *ジャンパー/円堂君彦
【経緯】
(脱退につき削除)
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20××年 オキザリス脱退
「スターリーナイトは、母親の旧姓を言い換えたものなのね」
オキザリス創立者だった橘銀河は鑑定魔法が使える能力者だった。
その魔法で、極めて高い能力を保持する獅崎十色、化身美空斗、慈眼是親を見つけ、意図的にガランの同じ地区に送った。
橘氏は、ガランが義兄弟グループでの子育てを採用した事を知らず、全員ガラン協力者の養父母の元にいると思っていた。だから星月夜即真の存在に気づかず、彼が稀に見る能力の持ち主であることも把握していなかった。
真・スターリーナイトは魔法使いとして発現し、ガランの能力者リストに加えられオキザリスの把握するところになったが、その能力が如何ほどかは不明なままだった。
橘銀河がとしおのように名前と顔写真を見ただけで鑑定できたなら、もっと早く計画を実行に移せただろう。
あの日ここオキザリス本部で、私はとしおに星月夜の能力を鑑定させた。目的を言わず騙した形になってしまったのは、目的を言えばとしおが反対するかもしれないと思ったからだ。日本での生活が染み込んだとしおにとって、ガランの悲劇は遠い地の出来事であり、寄り添うべきは日本にいる子供たちの方だろう。しかし私は、是非とも星月夜の能力を知りたかった。
としおの鑑定を聞くまで、考え続けていたことがあった。星月夜がそれほど高い能力ではなかった場合、彼をチームに入れるか否か。
幼馴染であることの絆と信頼が、1人だけ能力が劣るというデメリットを上回るだろうか。魔法の加工技術が進んでいる今、魔法使いは有利に戦えるようになっているという背景も鑑みた。だが、無理をすれば全員の命に関わる。代わりの誰かを新たに探す時間はあるだろうか、人数を増やすことで攻撃パターンを複雑にすることは避けたい……結論は出なかった。
星月夜の能力についてとしおが「先の2人に負けないぐらい高いレベルの能力者」と言った時、私は喜びで震えていた。魔王討伐で確実に勝てるラインを越えた、そう思ったからだ。
星月夜即真の所在を確認する。
現在は養父母の元を出てアパートで一人暮らし。勤務先は広告代理店CRF企画か。協力者の高塚悟がいるから話は早い。
近くに公園があるようだ。そこで待機し、偶然を装って声を掛けよう。ブラック企業から公務員、悪い話ではないと思うが。
話をしながら魔法をかけなければならない。記憶消失の魔法を。
彼が魔王討伐を終えて日本に戻ってきた時にこの魔法は発動する。




