96 1人目②
次の日、ストーカー事件の事は会社で話題になっていた。
結城さんは気丈にも出勤していたよ。
あんな事あったのにね。
最初見たときに、思わず反応してしまって思わず手を隠してしまった。
だって手の平を怪我してちょっと包帯巻いていたから。
しばらくは会わないようにしとかないと。
昼休憩に食堂に行った時にも話題になっていた。
クリスは女子社員と食事してたので、見つからないように施設課の連中と飯食いながら、ぼ〜っと。
時々聴こえてくる話といえば、ストーカー怖いねとか、私狙われたらどうしようとか、〇〇ラインの△△君やってそうだよね〜とか言いたい放題。
チラ見しながら、あんたは狙われないと思うから大丈夫だよ〜と心で突っ込んでた。
言葉に出したら炎上しちゃうから、グッと堪える。
結城さんがこちらを見つけて近寄ってきた。
「あの課長、その手の傷は?」
「・・・ああこれ?昨日料理してた時に間違って包丁を思いっきり握っちゃってね、いや~恥ずかしい」
しばらく考え込み
「昨日、襲われたときに誰かが助けてくれたんですよ。
名前は言わず去って行ったんですが、取っ組み合いしている時に微かにですが”かわさん・くり”って呼び合っている声が聴こえてきたんで何か知ってるかなと思いまして」
「そうなのかい?いや~知らないなぁ。
俺もそんなヒーローみたいな事が若いうちに出来る人間だったら、もっと別の人生歩めたかもな」
笑いながら否定した。
「これを機に本当に護ってくれるいい男を見つけなよ?」
「!!!・・・」
クリスを見つめた後、手の包帯を見てから黙って頷き席に戻っていった。
『昨日の人と同じこと言っている・・・これは偶然?』
横から空野が意識に割り込んできた。
「課長いいですか?」
「ああ、何?」
「クリスさんへのアプローチなんですが、今度映画にでも誘いたいんですけど良いですか?」
イケメン君まだ諦めてないのか、頑張るな。
「それは良いけど、他にも若い娘いるだろ?
何故こだわるんだ?
それに、クリスは背が高い方なんだけど、良いのか?
ヒールとか履くと背丈逆転するが」
実際に今食堂で5人以上いるし、彼氏募集中が最低5人以上いるはずだ。
「もう声掛けて終わっちゃったんですよ、みんな
それに背は問題ないです」
「えっ?終わった?のか・・・」
そんなに声掛けていたのか!
「良ければ何故終わったのか教えてくれるかい?」
ダメ元で聴いてみた。
「いやー、みんな最初はいいんだけどある日を境になんか冷たい対応になっちゃうんですよね、何故だろ?」
「・・・そんなにイケメンなのにか?」
会話しながらクリスに念話を送る。
『クリス、空野ってなんで彼女出来ないのか聴いてくれないか?
たぶんそこにいる娘たちに過去、アタックしてると思うんだけど』
『うん判った』
空野との会話に戻る。
「もっと食事等から誘っていけばいいんじゃないか?」
「もちろん、最初は会社内での会話からですよ、その後ランチとかにしてるんですけど。
夕方以降とかまだ誘ってないですよ」
「へぇ・・・それでダメ?
なんか食事のマナーが悪いとか、店員さんに対して態度悪いとかないか?」
「そんな横暴な言い方してないですよ、たぶん」
ここでクリスから念話が来た。
『あの・・・川さん・・・ここにいる娘全員に、同時期に映画や食事に誘ってるから
”私だけ誘っているわけじゃないんだ”っていうことで信用無くなってるみたい。
これは社内のすべての女子社員の共通認識・・・彼、終わってます』
『・・・・ああ、そうか、ありがと』
「空野よ、ひとつ聴いていいかな?」
「なんでしょ?」
「女の娘達を誘う時、一人ずつアタックした?」
「もちろんですよ、一人ずつ順番に誘いましたよ?」
「それって、アプローチ→お断り、次にアプローチ→お断りみたいにダブってないよな?」
「いや、毎日別の娘にですよ?
休みがばらばらでいつかぶるか判んないでしょ?だからみんなに声かけといて休みが合った娘と遊びに行くんですよ」
当然のように話をしやがった。
「「「「・・・・・・」」」」
一緒に食事していた施設課員沈黙。




