92 仕事と研修期間と②
食堂に行くと川さんが待っていた。
「どうだった?やれそうか?」
「うん、森谷さん良い人だったし、大丈夫そう。
仕事も1年以上見てたから大体判るし」
なんとかいけそうかな。
しかし、午後からのパートナーは送別会の時のチャラ男君なんだよなぁ。
飯食って休憩後に告げるか。
「そうか、じゃあ飯食って午後に備えよう」
食券を2枚買って1枚クリスに渡す。
それを見ていた周りの男達がざわつく。
飯食ってると
「課長、その可愛い娘誰ですか?
施設課の服着てますが配属されたんですか?」
嘘ついても仕方ないんで正直に答える。
「遠い親戚の娘でな、機械修理系の仕事に興味があるって言うからバイトで入れてもらったんだ。
お試し期間としてな」
廻りから「「「おぉ〜」」」と言う歓声が響いた。
クリスに目配せすると、立ち上がり
「川田クリスです、よろしくお願いします。
歳は19ですのでまだ若輩者ですが頑張ります」
その言葉に野郎どもは鼻の下伸ばすのだった。
飯食った後、案の定若手に囲まれたクリスは、言葉を濁しながら躱しながら質問をさばいていた。
さすがにプライベートな質問に対しては、無言の圧力を出していた為される事は無かった。
こちらとしては、女性社員と親しくしてもらいたかったんだけど、中々話の輪に入り込める強者はおらず、初日はナンパ攻撃に晒されただけだった。
同性の友達を作れば、仕事ももっと楽しくなると思うんだけどな。
午後からは別の教導官を紹介した。
「空野だ、入社4年目の若手だ。
歳が近い分話は合うと思うが、あまり駄弁るなよ?
二人共会ったことある筈なんで紹介は割愛する」
クリスはちょっと警戒しているが、空野は相変わらずチャラ男だ。
「クリス、こんなだけど仕事はしっかりやっているから、とりあえず騙されたと思って後ろに付いていけ」
・・・・・
「解った、そうする」
早速、空野のチャラ男ぶりが発揮されていたが今の所は空気となっていた。
「あいつのあの明るさというか、女性に対して向かっていく空気の読めなさは見習わないといけないな。
まあ、若かったとしても不細工な俺では到底無理だったろうが」
何事も勉強かな、そう思いながら見送った。
「ねえねえ、課長とはどういう関係?
宴会の時のあのセリフは本音?」
仕事そっちのけで質問攻めするなら完全に無視するところだけれど、仕事を捌きながらの質問の数々。
それも、行く先々で若い娘との挨拶&会話を楽しみながら。
天然なんだろうなと思いながら適当に相槌うちながら時間が経過するのを待つ。
よくそんなに言葉が出て来るわね、逆に関心してしまう。
こんなのに騙されるんだろうなぁ、世の中の娘は。
確かにイケメンだけど・・・なんか違うのよねぇ。
「もちろん、本気だよ」
短く返事する。
「相当年上でしょ?何が良かったの?
生活を見てくれているからその義理でかい?」
少しイラっとしたけど平常心で対応する。
「いや別に。強いて言えば人間性かな。
暴漢から護ってくれたし、事故の時も身代わりになってくれたし。
言葉は少なめだけど、なんとかしてくれるという安心感があるし」
「ふ~ん、そうなんだ」
それから2時間程忙しくなり、会話が無い状態で仕事を終わらせていった。
その頃になると、若い娘が施設課で現場作業しているのが認知されており、珍しいもの見たさとお近づきになる為に仕事を依頼する男が増えてきた。
さすがに初日のルーキーに仕事を頼むのは無理があるのだけれど、説明をする時間=会話となる為にひっきりなしにやってくる。
これに値を上げたのは施設課の男性社員だった。
クリスに仕事を依頼するのはNGとなり、しばしの平和が訪れた。
しかし、挨拶のついでに会話をする輩が増えてしまったので時間的にはあまり変わらなかったが。
そろそろ上がりの時間かな。
仕事が終わり、クリス達の様子を見に行くと、忙しそうに走り回っている部下達と鼓舞するクリスの姿が。
クリスの手前、”俺は頼れるよアピール”してるのだろうな、と推測しながらみんなの仕事ぶりを暫く見ていた。
「頑張れ若人よ!」
思わず若さというものに称賛を贈った。




