91 仕事と研修期間と
「ここが加工場で主に生地が流れてくるから、二次加工が無ければそのまま天板に乗って行くんだ」
「へえ〜、こんな感じになってるんだ〜」
知っている機械を説明されて、初めて見るようにリアクションするのは正直ストレスが溜まっちゃうな。
「今はオートメーション化されているから、壊れる場合は電気系が増えて来てるけど、ベルト類・機械備品等の交換もあるから少しずつ覚えていってね」
「は〜い」
・・・可愛いのはいいんだけど大丈夫だろうか?
油汚れ、その他熱い寒い等あるんだけど。
まあ、課長の身内だから内容は知ってると思うけど、怪我等気を付けさせればいいかな。
無理なら事務処理してもらえればいいし。
「加工場はこんな感じ。
ここから焼成場になってて最後は包装場になってる。
これ以外には冷却設備・加熱設備等のメンテもあるから今日は見学程度に考えてて。
そうだ、先に言わないといけなかったんだけど、動いてる機械には絶対に手とか体を入れちゃダメだよ?
一瞬で持っていかれちゃうし、最悪死んじゃう」
「はい判りました」
なんか素直すぎだな、まだ現実感がないのだろう。
1週間すれば考え直すかな、それまでは会話を楽しむか。
何しろ若い娘と一緒に仕事出来るなんて中々無いしな。
一通り廻ったところで電話が鳴った。
「はい、うんうん判った、行く」
「クリスさん、出動だ。
付いて来てくれ、修理依頼があった」
「はい、判りました」
「森谷さん、こっちだよ」
現場の人が手を上げている。
「ここの動きが悪くてさ、製品が引っかかっちゃうんだよね。
ここのストッパーが・・・・」
クリスが視界に入った瞬間、言葉が止まった。
「小菅さんどうしたんですか?」
どうしたんだろうと問いかけると
「その娘は?」
「ああ、アルバイトで入った娘です。
正社員候補になりますが」
一瞬、大丈夫なのか?と、今時珍しいなという二つの感情を滲ませた目をして
「そうなんだ、若いのに変わってるね。
怪我しないように頑張れよ!」
そう言ってから先ほどの続きを始める。
「え〜と、そうだ、ここのストッパーの動きが悪いんだよ部品交換してくれないか?
交換している間は手で押さえるから」
「これならあるはずですからちょっと取って来ます。
クリスさん一緒に行くぞ!
部品の場所等覚えてもらうのも仕事だからね」
「判りました」
そう言いながら二人で備品棚へ直行すし、倉庫の中のある一角に着いた。
「ここが部品庫のお目当ての備品がある棚だ。
その他の棚の奴はジャンル毎に分けて置いてあるから、時間があるときにでも覗くといい」
そう言いながらお目当ての棚からシリンダーを取り出し、今はこれが必要なんでさっきの現場へ戻る。
行きがけに工具を持っていく。
先ほどの人が待っていてくれたようで、こちらの姿を確認すると同時に一度流れを止めてカバーを開けてくれた。
最近の機械は、開くカバーには安全装置が付いてて止まってしまうのだ。
一度安全を殺して交換作業に取り掛かる。
その間は、先ほどの人が手でストッパーの役割をしながら流していた。
こちらの作業が終わると、もう一度止めて安全を復帰させて終了。
「こんな感じで修理したりするけど、いつもこんなスムーズに行くとは限らないから臨機応変に作業をすることかな」
「流れは何となく判りました。
早く慣れるように頑張ります」
森谷は思った。
若いっていいなぁ、いい娘だなぁと。
こんな感じで昼まで現場を廻りながら、修理しながら作業を続けていた。
「そろそろお昼だから休憩行っておいでよ」
「森谷さんはお昼行かないんですか?」
「ああ、俺は他にやる事があるし、そろそろ上がりなんだよ。
昼からはもう少し若手の奴が教導官するんでそいつに付いてくれ」
「そうなんですか、判りました。
お疲れ様でした、お昼行って来ますね」
「うん、お先〜」
いい人そうだったなぁ、あんな感じの人ばっかりならいいなだけどな。
そう思いながら食堂へ向かっていった。




