83 虚脱&後悔
宴会後、ちょっとした秘密が川さんにバレてしまった。
次の日からなんか態度がおかしい。
おかしいというよりも、記憶が曖昧になってる。
声を掛けても心ここにあらずというより感じになっている。
そのまま仕事に付いて行き、時間が経つにつれ反応が無くなって来た。
まるで私が見えないみたいに。
昨日の事謝っても、大声出しても何も反応無し。
帰宅してもユウヤ君とサクラちゃんの事も見えない?ようで反応無し。
色々声掛けしてるけど全くダメ。
まるで今まで一人で暮らしていたような反応。
次の日になって、さらに悪化。完全に忘却。
ここでマスターから連絡が入った。
『107、どうした?実験体のデータがおかしいぞ?
何があった?
力の暴走が始まっている、危険な状態だぞ』
今までの経緯を説明した。
『そうか、それならお前のとるべき道は2つだ。
1つ、堕ちた精神を引っ張り上げる。
2つ、没収する。
どちらか選べ』
『そんな、川さんを助けたい、まだ終わりたくない』
『そういうと思ったよ、こちらとしても唯一のレベル8だからな。
まだ終わって欲しくない』
『それじゃどうすれば良いのですか?』
『・・・お前、覚悟はあるか?
最悪戻って来れなくなる可能性があるが』
『戻って来れないってのはどういうことでしょうか?』
『その話をする前に、実験体ってどういう風に選ばれるか知ってるか?』
知ってるも何もランダムではないの?
『エリアごとにランダム選抜ではないのですか?』
『違うのだよ。
心に大きな傷がある者が対象なのだ、自業自得で不幸では無く、理不尽な扱いを受けて病んでいる者が選ばれている』
『・・・・!!』
『もう気が付いたかもしれんが、彼は人を信用して裏切られた過去を持つ人間だ。
信用出来ると思っていた者から、機密事項では無い事を隠されていたという事実を知った時、今まで支えていた物が崩壊し絶望した。
精神崩壊を起こしている、後1週間持たないと思われる』
『・・・・それって私のせいですよね?』
『だから覚悟はあるかと聴いている、最悪は死だ。
考えろ、今なら全てを忘れて次に行けるぞ?』
目を瞑り、この1年と数ヶ月の事を思い出していた。
最初は任務でここに来て、変わった人だと思っていた。
本来、自分の利益になるような能力を欲するのが普通だと思っていたのに、人を助ける事を優先にしたから。
もっと楽で割のいい願いもあったのに。
その思いもほとんどブレなかった、2年も経たずにレベル8まで上がり、対価も自分の利益となるような能力を取らずひたすら真っ直ぐに貫いていた。
そんな人だから好きになった。
歳が離れ過ぎているせいで中々受け入れてもらえなかったけど。
それでも少しずつ受け入れてくれて嬉しかった。
クビになったサクラちゃんとユウヤ君も、何も言わずに受け入れてくれて仕事まで世話してくれた。
自分がいなくなった後の事も考えて。
そんな人を傷付けてしまった。
好きだと言いながら全てを捧げ無かったと思われても仕方ない。
川さんの事だから、そんな無理やりとか無いはずなのに一線を引いてしまった。
好きになった人から騙されていると知ったらどうなるか?
判らないはずは無いのに抜け落ちていた。
大した事じゃないと。
どうする?忘れて次に行く?
いや、その選択は無い、次に行くときは川さんを救ってから。
救えなくても一緒なら堕ちても本望。
だって好きになった人だから。
上手く引き戻せたら正直に話して詫びよう。
受け入れてくれるか判らないけれど、そこから始めよう。
目を開いた時には迷いは無かった。
『マスター、覚悟はあります。
救う方法を教えてください』
『判った、それでは説明するぞ。お前の精神を今から川田氏の過去の精神とリンクさせる。
精神が崩壊して無くなるまでに、お前の気持ちの楔を打ち込んで来い。
自重するな、何でもありのチートしても構わん。
生きる事を思い出させよ、そして必ず二人で戻って来い!』
『了解しました、それではお願いします』
『必ずだぞ!諦めるなよ!』
その言葉を最後に意識が飛んだ。




