28 選択の後
別室の扉をノックして入った。
目の前のテーブルにクリスとマスターと呼ばれる男性が座っている。
彼らも話が終わったんだろうな。
山口氏が監視者であるマスターとアイコンタクトで頷き合っている、なんだろうか?
確認しあった後、マスターが話し始めた。
「了解した、これで今回の通過儀礼は完了した。
川田氏に対してはこれからもNo107をよろしく頼む」
こちらもお辞儀をしながら
「はぁ、判りました、こちらこそもう暫く異能力を使わせてもらいますね」
通過儀礼って何なんだろうか?
そして山口氏が話を始めた。
「まず始めに川田氏にはお詫びとお礼をしなければなりません。」
「えっ?」
「実は異能力の譲渡は嘘です。
もし、川田さんが譲渡をしたとしても、この国の人間というかアジア・オセアニア地域には受け継がれません」
「じゃあ、私が受諾してたら財とか名誉とか?・・・」
「もちろん、何もありません。
というか譲渡したら記憶無くなるんでそんな約束無かったことになりますよね」
確かにそうだよな、譲る気無かったからあまり考えて無かった、危なかった。
「でも、何故そんな危ない橋を渡るんです?
このまま黙って遠くから見とけば良かったのに」
ここでクリスのマスターから説明が入った。
「レベル5になった時点で篩いを掛ける決まりとなっていてね、試させてもらったんだ。
こちらも大事なサポートアンドロイドを預けているから、大切にしているかの確認も兼ねて」
それで通過儀礼か・・・
この二人ドキドキだっただろうな、上手くいけば協力者、最悪この国から異能力者が消えるんだから。
「それでそれをクリアしたこの国と私のメリットは何かあるのでしょうか?」
「特には無いが、君と国側の接触は自由にしていいというくらいかな、他の異能力者には秘密という事と今回の通過儀礼の事は話さないというのが前提だが。
後、君の願う追加能力の制限を緩和しよう」
私にはそれほどメリット無いような気がするけど、国家を味方に付けられるのは有難いかな。
異能力バレた時に庇ってもらえるかもしれないし。
「解りました、試練に打ち勝ったという事で納得します」
これでとりあえず終わったかな。
用事が済んだという事でクリスのマスターは帰った。
「君とはもう一度会えそうだな」
と意味不明の言葉を残して。
一回きりの接触なんじゃなかったっけ?
その時はその程度の思いだけでスルーした。
後に残ったのは山口氏と高知君とクリス・私の4名。
今後の話もあるけれど、まず先に。
「クリスまた暫くよろしくな」
「こちらこそよろしくお願いしますね、川さん」
なんか感動の再会みたいになっているんで、恥ずかしくなり何事も無かったかのように山口氏に声を掛けた。
「それで国家としてはこれから私たちの扱いをどうするつもりで?」
「今まで通り見させてもらいますよ、お二人の生活の邪魔等しません。
ただ、お互いのメリットになる場合は接触させてもらいたと考えてます、もちろん任意なので断っても構いません」
「解りました、何かありましたら連絡して下さい。
こちらも困った事がありましたら頼らせて頂きますよ」
Win-Winの関係だなこれ、人生勝ち組だな。
連絡先も交換し情報交換も行なって警察署を後にした。
車に乗り込んだ後、クリスは少し俯いている。
あれ?任務続行した事まずかったのかな。
声を掛けようとした時、
「川さん、ありがとうございます。
財とか名誉よりも私といる事を選んでくれて、本当に、、、、」
後半は声になってないよ、クリス。
「つまらない人生、面白くしてくれたクリスと財・名誉をもらうだけ、なんて天秤に掛ける価値もないよ。
それに、着物着て見せてくれるんだろ?
今日はもう遅いから来週にでも予約して行くか?」
もうほとんど泣きながら何回も頷いていた。
クリス、本当に人間みたいだな。
「さあ、今日はもう帰ろうか」




