↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーネム戦記  作者: Tanu1016
第一章 都市同盟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/110

第7話 奇襲

ジャンとユナ

挿絵(By みてみん)


ルートビッヒ

挿絵(By みてみん)


アーネム大陸ゼルキア地方図

挿絵(By みてみん)



 ◇


 朝。


 ジャン=ワイズマンは、医療班で整理した書類を抱え、宿舎へ向かって歩いていた。


 レンヌの朝は早い。空はまだ薄暗かったが、兵士たちはすでに活動を始めており、夜番を終えた者たちが欠伸をしながら兵舎へ戻っていく。城壁の向こうから吹き込む風は冷たく、ジャンは抱えていた書類を持ち直しながら歩調を速めた。


 昨日整理した負傷兵の記録と、医療物資の在庫表。


 包帯、消毒用の酒精、薬草、縫合糸。


 どれも不足していた。


 補給担当へ提出する要求書も作成したが、これまでの経緯を考えれば、まともに物資が届くかどうかは怪しいものだった。


「おはよう、主席殿」


「…………」


 聞き覚えのある声に、ジャンは足を止めた。


 朝から最も聞きたくない声の一つだった。


挿絵(By みてみん)


「ずいぶんな顔だねぇ。朝から機嫌が悪いのかい?」


 振り返ると、ユマ=リズナーがいつもの気楽な笑みを浮かべて立っていた。


「朝からあなたですか」


「何だい、その言い方は。せっかく挨拶してやったのに」


「昨日一日で十分です」


「ひどいねぇ」


 ジャンが再び歩き出すと、ユマも当然のようについてきた。


「それで、医療班はどうだい?」


「最悪ですよ。人手不足に物資不足、おまけに予算も足りない。よく今まで運営できていたものだと感心しているところです」


「そいつは大変だね」


「他人事ですね」


「実際、私の仕事じゃないからね」


「そうですか」


「でも、以前よりはいい顔になったよ」


 ジャンは眉をひそめた。


「何の話です?」


「ちゃんと仕事をしている人間の顔になったってことさ」


「以前は仕事をしていなかったと?」


「してたんじゃない?」


 ユマは楽しそうに笑った。


「ただ、紙とばっかり仕事してたみたいだけどね」


「朝から喧嘩を売りに来たのなら、相手をするつもりはありませんよ」


「そりゃ残念」


 ジャンはため息をついた。


 どうしてこの女は、朝からこれほど元気なのだろう。


 そのときだった。


 遠くから、腹の底に響くような重い音が聞こえた。


「……?」


 ジャンが足を止める。


 続いて、もう一度。


 今度は先ほどよりもはっきり聞こえた。


 何か巨大なものが石壁に叩きつけられたような轟音だった。


 そして、警鐘が鳴り響いた。


 一つ、二つと鐘の音が重なり、たちまちレンヌ要塞全体へ広がっていく。


「敵襲! 敵襲だ!」


 東の城壁から怒号が上がった。


「東門に敵軍接近! 総員、配置につけ!」


 通りを歩いていた兵士たちが一斉に駆け出した。


 ジャンは反射的にユマへ視線を向けた。


 先ほどまで笑っていた彼女の顔から、笑みが完全に消えていた。


「……東?」


 ユマが呟いた。


「西じゃないのかい?」


 レミーラ帝国軍が活動していたのは、これまで主にレンヌの西方だった。


 ところが、警鐘は東から聞こえている。


 東方は都市同盟の後方へ続く地域であり、大規模な敵軍が出現するとは考えられていなかった。


 ユマは一瞬だけ考え込んだが、すぐにジャンへ向き直った。


「主席さん、医療班へ戻りな」


「何が起きているんです?」


「まだ分からない。だけど、あんたがここにいても仕方ないだろう?」


「それはそうですが――」


「早く!」


 鋭い声だった。


 ジャンが返事をするより早く、ユマは城壁へ向かって走り出していた。


 ◇


 レミーラ帝国軍の攻撃は、あまりにも唐突だった。


 北部の山地を迂回した帝国軍が、レンヌの東方から姿を現し、そのまま東門へ攻撃を仕掛けてきたのである。


 これまで帝国軍が活動していたのは主に西方であり、東側から大規模な攻撃を受けることなど、守備隊の誰も予想していなかった。


 しかも、帝国軍の攻撃は激しかった。


 弓兵の援護を受けた歩兵が次々と城壁へ押し寄せ、東門には攻城槌が打ちつけられる。城壁へ取りついた兵士たちは梯子を登り、門前では守備兵と帝国兵が激しく衝突した。


「第三隊、東門へ!」


「弓兵は城壁に上がれ!」


「予備兵力を回せ! 門を突破させるな!」


 城壁の上では怒号が飛び交い、守備兵たちが必死になって敵を押し返していた。


 帝国軍の攻撃は、決して見せかけではなかった。


 もし守備隊の対応が遅れていれば、東門は突破されていただろう。そして、一度城内へ侵入を許せば、いかに堅固なレンヌ要塞といえども、陥落は免れなかったかもしれない。


 だが、ロスバルト傭兵団の対応は早かった。


 ユマの指揮によって各戦隊が速やかに配置につき、東門へ予備兵力が投入される。城壁に取りつこうとした帝国兵は次々と撃退され、門扉へ迫った攻城部隊も激しい反撃を受けた。


 帝国軍は何度も攻撃を繰り返したが、ロスバルトの防衛線を崩すことはできなかった。


 そして昼過ぎ。


 突破が困難と判断した帝国軍は、ついに攻撃を断念して後退を始めた。


 レンヌの東門は守られた。


 五十年間、一度として敵の手に落ちたことのない巨大要塞は、今日もその堅固さを証明したのである。


 しかし、東門で激しい戦闘が続いている間、要塞の反対側では別の事態が進行していた。


 レンヌ西部。


 兵糧庫を中心とした貯蔵施設が集まる一角に、数人の男たちが姿を現していた。


 彼らは帝国軍の軍装を身につけていなかった。以前からレンヌへ入り込み、市民や労働者に紛れて機会をうかがっていた工作員たちだった。


 東門への攻撃によって守備隊の注意が東側へ集中したことで、西側の施設を守る兵士は普段よりも少なくなっていた。


 工作員たちは、その機会を逃さなかった。


 兵糧庫の警備兵が襲われ、ほどなくして建物から火の手が上がった。さらに周辺の貯蔵施設でも相次いで火災が発生し、保管されていた食糧や資材に燃え移った炎は、瞬く間に広がっていく。


 東門で敵を撃退したという知らせが届いた頃には、西側の兵糧庫から巨大な黒煙が立ち上っていた。


 ◇


 ジャンが医療班へ駆け込んだとき、すでに最初の負傷兵が担架で運び込まれ、医療兵たちが慌ただしく治療の準備を進めていた。


「先生!」


 ユナが駆け寄ってきた。


「何があったの!? 外がすごく騒がしいよ!」


「俺にも分からん。東の城壁が攻撃されているらしい」


「姉さまは?」


「城壁へ向かった」


「姉さまも戦うの?」


 隣にいたリックが不安そうに尋ねた。


「傭兵団の団長なんだから、当然だろう。それより、お前たちはここから動くな」


「でも……」


「外へ出たところで邪魔になるだけだ。今の俺たちにできる仕事をするぞ」


 ジャンが言い切ると、二人は顔を見合わせ、やがて頷いた。


「……うん!」


「分かった」


 そのとき、新たな負傷兵が担架で運び込まれた。


「誰か手を貸してくれ!」


「はい!」


 ユナとリックが駆け寄っていく。


 ジャンも抱えていた書類を机へ置くと、袖をまくった。


 今は出世のことなど考えている場合ではなかった。


 それから数時間、医療班は休む暇もなかった。


 東門から運び込まれる負傷兵は後を絶たず、治療台はすぐに埋まった。医師たちが傷の深い者から治療に取りかかり、ジャンも縫合や止血を手伝いながら、必要な薬品と包帯を次々に割り振っていく。


 ユナとリックも指示に従って働いた。運び込まれた兵士の名前と所属を記録し、治療を終えた者を別の幕舎へ案内する。


 ようやく負傷兵の搬入が落ち着き始めたのは、昼を過ぎてからだった。


「東門の敵が退いたぞ!」


 外から声が聞こえた。


 続いて、あちこちから歓声が上がる。


 どうやら守備隊は、帝国軍を撃退したらしい。


 ジャンも小さく息を吐いた。


 少なくとも、これ以上負傷者が増え続ける事態は避けられそうだった。


 ところが、その直後だった。


「水を持ってこい!」


「こっちにも包帯を!」


「倉庫から追加の物資を運べ!」


「無理だ! 倉庫が燃えてる!」


 医療区画に飛び込んできた兵士の言葉に、ジャンの手が止まった。


「……何だって?」


「西の兵糧庫がやられた! ほかの施設にも火が回ってる!」


「兵糧庫?」


 ジャンは立ち上がり、医療区画の外へ出た。


 すると、西の空には何本もの黒煙が立ち上っていた。風に煽られた煙が要塞の上空へ広がり、焦げ臭い匂いがここまで漂ってくる。


 ジャンは、その光景を見つめた。


 兵糧庫。


 巨大なレンヌ要塞にとって、城壁と同じくらい重要な施設だった。


「……やられたよ」


 背後から声がした。


 振り返ると、ユマが立っていた。


 顔には煤がつき、左腕には簡単な包帯が巻かれている。


「怪我をしたんですか?」


「かすり傷さ。そんなことはどうでもいい」


 ユマは西の黒煙を睨んだ。


「私たちは、完全にやられたんだよ」


 ジャンは眉を寄せた。


「東門の防衛には成功したのでしょう? 敵軍は撤退したと聞いていますが」


「ああ、守ったよ。ロスバルトの連中もよくやってくれた。あのまま戦っていれば、敵も無傷では済まなかっただろうね」


「ならば、勝利ではありませんか」


「東門ではね」


 ユマは苦々しげに答えた。


「でも、敵は東門を攻撃している間に、西の兵糧庫まで潰していったんだよ」


「……どういうことです?」


「兵糧庫の警備兵が襲われた。敵は外から侵入してきたんじゃない。最初からレンヌの中に潜り込んでいた連中だよ」


「工作員ですか」


「そういうことさ。しかも一か所じゃない。西側の施設がほとんど同時に襲われている。偶然なんかじゃないね」


 ユマは舌打ちした。


「東門への攻撃だって本気だったよ。少しでもこちらの対応が遅れていたら、あのまま突破されていただろうね」


「つまり、城門を攻略できればそれでよし。できなければ、別の手段で損害を与えるつもりだったと?」


「そういうことだね」


 ユマは西の空へ目を向けた。


「東門が突破できないと分かったから、敵は引いた。でも、その時にはもう、兵糧庫を焼く仕事は終わっていたんだよ」


 ジャンも黒煙を見上げた。


 なるほど。


 合理的な作戦だった。


 正面から要塞を攻略できれば、もちろんそれが最善である。しかし、強固な城壁を突破できなくても、内部の食糧を破壊すれば籠城能力を大きく削ぐことができる。


 どちらに転んでも攻撃側が利益を得られる、よく考えられた作戦だった。


「……厄介な指揮官ですね」


「まったくだよ」


「ですが、実に合理的です」


「だから嫌なんだよ」


 ユマはそう吐き捨てると、その場にしゃがみ込み、地面へ数字を書き始めた。


「とはいえ、全部焼かれたわけじゃない。レンヌには籠城用の備蓄があるし、兵糧庫だって何か所かに分散しているからね」


「残りでどれくらい持ちますか?」


「今、被害を確認させてるところだけど、だいたいの見当はつくよ」


 ユマは守備兵と市民の人数を書き込み、一日当たりの食糧消費量を計算し始めた。


 軍民合わせた人数、残存食糧の概算、配給を制限した場合の消費量。それぞれを手早く計算し、数字を並べていく。


 ジャンは黙って眺めていた。


 思っていた以上に計算が速い。


「……何だい?」


「いえ。計算ができるんですね」


「殴るよ?」


 即答だった。


「あたし、あんたと同じニューアーク大学に留学してたんだけどね。成績だって上位だったんだよ」


「冗談です」


「今はそんな冗談に付き合ってる暇はないよ」


 ユマは再び地面へ目を落とした。


「まず配給を減らす。軍馬も今の数を維持するわけにはいかないね。それから、城外の部隊を収容して、余計な食糧の消費を抑える」


「市民への配給も制限しますか?」


「もちろん。ただし、子供や傷病者の分は確保しないとね。食糧があっても、人が先に倒れちまったら意味がない」


 ユマは数字をいくつか書き直した。


 正確な被害状況が判明するまでは概算にすぎない。しかし、残存する倉庫の位置と普段の備蓄量は把握している。


 そして、しばらくして顔を上げた。


「……守れるね」


「どれくらいです?」


「被害が想定を大きく上回っていなければ、一か月は持たせられるはずだよ」


 ユマは立ち上がった。


「一か月あれば十分さ」


「……十分?」


「ああ。カーライルが間に合う」


 ジャンは答えなかった。


 ユマは気づかずに話を続けた。


「レミーラ軍の活動が活発になり始めたのは、もう何か月も前のことだよ。こちらも三か月前から増援を要請しているし、中央がまともに対応していれば、カーライル騎士団だって準備を進めているはずさ」


「…………」


「仮にレンヌが包囲されたとしても、カーライルが後方から迫れば敵だって無視できない。こちらが一か月持ちこたえれば、十分に勝算はあるよ」


「来ませんよ」


 ユマの動きが止まった。


「……何だって?」


「カーライルは来ません」


 ジャンは黒煙から視線を外し、ユマを見た。


 その口調があまりにも平然としていたため、ユマは一瞬、言葉の意味を理解できなかった。


「……どういう意味だい?」


「そのままの意味です。レンヌ司令部は、カーライル騎士団の派遣を必要としていないと、中央政府へ報告しています」


 ユマの表情が消えた。


「……いつから?」


「少なくとも、私が文書係にいた頃からです。それ以前については確認していませんが、同じような報告が繰り返されていたようですね」


「待ちな」


 ユマが一歩近づいた。


「じゃあ、これまでの小競り合いは?」


「局地的な衝突として処理されています」


「レミーラ軍の活動が増えていることは?」


「大規模な活動は確認されていない、と」


「周辺部隊からの警告は?」


「司令部の判断では、脅威を過大評価しているそうです」


「……中央には?」


「レンヌ周辺の情勢は安定しており、現有兵力で対処可能と報告されています」


 次の瞬間、ジャンの襟元が乱暴に掴まれた。


挿絵(By みてみん)


「おい……!」


 ユマが顔を近づけた。


 その手は怒りで震えている。


「あんた、それを本気で言ってるのかい!?」


「私がこんなことで嘘をつく理由がありますか?」


「そういうことを聞いてるんじゃない!」


 さらに強く引き寄せられ、ジャンは思わず足を踏み出した。


「中央は! 中央は、レンヌが危険だってことを知らないのかい!?」


「おそらく、危険ではないと認識しているでしょうね」


「……なんだって?」


「私が清書しましたから」


 ユマの目が見開かれた。


「……この腐れ官僚!」


 怒鳴りかけたところで、ユマの動きが止まった。


 ジャンの顔を見つめ、それから何かに気づいたように眉を寄せる。


「……いや、違うね」


 吐き捨てるように言った。


「グリフィスか」


「ご明察です」


 ジャンは淡々と答えた。


「増援不要と判断したのはグリフィス三世司令官です。私は文書係として、その回答を清書するよう命じられました」


「……やっぱり、あの野郎か」


 ユマの手が離れた。


 ジャンは乱れた襟を直した。


「悪かったね」


「別に構いませんよ」


「普通は怒るところだよ」


「あなたに怒ったところで、状況が改善するわけではないでしょう」


「……本当に可愛げがないね、あんたは」


「よく言われます」


 ユマはもうジャンを見ていなかった。


 ただ、西の空に立ち上る黒煙を睨んでいる。


 これまで何度も増援を求めてきた。


 敵軍の活動が増えていることも、兵力が不足していることも、司令部へ繰り返し報告している。


 それなのに、その情報は中央へ届いていなかった。


 単に増援を拒否されたのではない。


 増援が必要だという事実そのものを、なかったことにされていたのである。


「……あの野郎」


 ユマが低く呟いた。


 ジャンは少し考えた末に、口を開いた。


「そもそも、カーライルに増援を要請するのであれば、まず中央政府が現在の状況を正確に把握する必要があります」


「……そうだね」


「今日の攻撃について、司令部がいつ中央へ報告するのかは分かりません。仮にすぐ報告したとしても、そこから事実確認を行い、カーライルへ派遣命令を出すことになるでしょう」


「……」


「カーライル側も、命令を受けてから兵を集め、補給を準備しなければなりません。まして大規模な騎士団を動かすとなれば、相応の時間が必要になります」


 ユマは黙って聞いていた。


 その内容を、彼女自身も理解している。


 中央への報告、事実確認、増援の決定、カーライル騎士団の動員と補給準備。


 そして、レンヌまでの行軍。


 どれも省略できるものではなかった。


「……順調に進んだとして、どれくらいだい?」


 ユマが尋ねた。


「二、三か月は見込むべきでしょうね」


 ジャンは答えた。


「しかも、それは中央政府が速やかに救援を決定した場合の話です。実際には、もっと時間がかかる可能性もあります」


「…………」


 ユマは地面へ目を落とした。


 そこには、先ほど自分が書いた数字が残っている。


 残存食糧と一日当たりの消費量。


 そして、籠城可能な期間。


 一か月。


 ユマはもう一度、計算を確かめた。


 数字は変わらなかった。


 どれだけ配給を切り詰めようと、軍民合わせてこれだけの人間を抱えている以上、食糧の消費には限度がある。


 カーライルが二、三か月後に来たところで、間に合うはずがなかった。


「……これじゃ、食糧が尽きるね」


 ユマが呟いた。


 ジャンは何も答えなかった。


 しばらく、二人とも黙って黒煙を見つめていた。


 東門の城壁からは、まだ兵士たちの歓声が聞こえてくる。


 敵の攻撃を退けた。


 レンヌは守られた。


 五十年間、一度も陥落したことのない巨大要塞は、今日も敵を撃退したのだ。


 東門での勝利は、間違いなくロスバルトの働きによるものだった。あの迅速な対応がなければ、レンヌは今日にも陥落していたかもしれない。


 しかし、敵はそれで終わりにしなかった。


 城壁を突破できなくても、西側の兵糧庫を焼くことで、別の形でレンヌを追い詰めたのである。


 そして、頼みの綱であるカーライルの増援は、まだ準備すら始まっていない。


 これから敵が本格的な包囲に移れば、食糧を失ったレンヌには、救援が到着するまで持ちこたえる術がなかった。


 ユマはゆっくりと顔を上げた。


「……落ちる」


 ジャンが彼女を見る。


「このままじゃ、レンヌは落ちるよ」

キャラクターや地図も出来上がりしだいのせていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。