第5話 左遷先の客人(前)
レンヌ要塞、ロスバルト傭兵団の詰所。
「そういえば、聞いたかい? あいつ、医療班に左遷させられたらしいよ。ざまぁないね」
ユマ=リズナーは楽しそうに笑った。
「あいつって、例の主席様か?」
「ほかに誰がいるんだい?」
「まったく、性格が悪いな。他人の不幸を喜ぶのは感心しないぞ」
トウヤが呆れたように言うと、ユマは悪びれる様子もなく肩をすくめた。
「だって、あいつ、私たちをならず者の集まりだって言ってたらしいじゃないか。自業自得だよ」
「まあ、そうだが。どうもグリフィスの癪に障ったらしい」
「何だい、それ?」
「詳しいことは分からんが、出納係をやっていたときに帳簿の不正を見つけたらしい。それをグリフィスに報告したところ、文書係へ飛ばされたそうだ」
「へぇ」
ユマは少し意外そうな顔をした。
「それで、今度は医療班かい?」
「ああ。文書係でも何か問題を指摘したらしい。お偉いさんの命令にいちいち疑問を挟むから、追い出されたんだろうな」
「……へぇ、そんな奴だったのかね?」
ユマは腕を組んだ。
最初に会ったときは、学歴と自分の能力を鼻にかけた、嫌味な若造だと思っていた。実際、口を開けば腹の立つことばかり言う男だった。
しかし、帳簿の不正を見つけて、それを司令官に報告したというのなら話は少し違う。
「まあ、グリフィスならやりそうなことだね」
「だろうな」
「それにしても、主席さんも馬鹿だねぇ。レンヌであの男に逆らったらどうなるか、少し考えれば分かりそうなものだけど」
「頭が良すぎて、そういうことには疎いんじゃないか?」
「それはそれで困ったもんだよ」
ユマは苦笑した。
「でも、仕事だけはちゃんとやるみたいだね。あの性格でなけりゃ、もう少し可愛げもあるだろうに」
「お前とあいつは相性が悪そうだな」
「最悪だよ」
ユマは即答した。
トウヤが笑い、ユマもつられて笑った。
そのときだった。
「団長、少しよろしいでしょうか」
詰所の入口から声がした。
顔を上げると、医療班の職員が申し訳なさそうに立っていた。
「何だい? また物資が足りなくなったのかい?」
「いえ、今回は人員の件でして……」
「人員?」
「はい。負傷者が増えた影響で、事務処理が追いつかなくなっております。何とか二名ほど、応援を出していただけないでしょうか」
ユマは顔をしかめた。
「うちもカツカツだよ。西の哨戒だって増えてるし、そんな余分な人員……」
そこまで言いかけて、ふと口を閉じた。
「あっ」
「どうした?」
トウヤが尋ねたが、ユマは答えず、医療班の職員へ向き直った。
「ねえ、誰でもいいんだろ?」
「え?」
「その応援だよ。兵士じゃなきゃ駄目なのかい?」
「いえ、読み書きと簡単な計算ができれば十分です。何しろ、猫の手も借りたいくらいですから」
「ふうん……それなら、ちょうどいいのがいたよ」
ユマはいたずらっぽく笑った。
「おい、ユマ。何を考えてる?」
「別に。人助けだよ」
「お前がそういう顔をするときは、ろくなことにならないんだが……」
「失礼だねぇ」
そう言いながら、ユマは部屋の隅へ視線を向けた。
そこには、小さな机を並べて勉強している二人の子供がいた。
金髪碧眼の少女と少年。
十二歳になる双子の妹と弟、ユナとリックである。
ユナは紙に何やら書き込みながら、隣のリックへ話しかけていた。リックも手元の書物から顔を上げ、姉に何か説明している。
二人とも、こちらの会話にはまったく気づいていなかった。
「……あの二人か?」
トウヤが呆れたように言った。
「そうだよ。読み書きも計算もできるし、普段から書類仕事を手伝ってるじゃないか」
「まあ、確かにそうだが……」
「それに、主席さんにはちょうどいいだろう?」
ユマの笑みが深くなった。
「どういう意味だ?」
「さあねぇ」
ユマは立ち上がると、二人の方へ歩いていった。
「ユナ、リック。ちょっとおいで!」
「なあに、姉さま?」
「何かお仕事?」
「そうだよ。二人にちょっとお願いしたいことがあるんだ」
ユマはにっこり笑った。
「社会勉強をしてみないかい?」
◇
昼前。
ジャン=ワイズマンは、レンヌ要塞西部に設けられた医療班の事務室で、大量の書類と格闘していた。
負傷者名簿、薬品の在庫表、原隊復帰者の記録、死亡者の処理書類。それらが整理もされないまま積み上げられており、同じ情報が複数の書類に重複して記載されている始末だった。
まったく、非効率極まりない。
ニューアーク大学を主席で卒業した自分が、こんな仕事をさせられるとは思わなかったが、左遷されたからといって手を抜くつもりはなかった。
むしろ、仕事のやり方そのものを見直す必要がある。
ところが、そもそも人手が足りていない。
事務処理を担当する人間はジャンを含めて三人しかおらず、増え続ける負傷者の記録を整理するだけで精いっぱいだった。
そこで責任者に増員を要求したところ、何とか二人ほど探してくるという話になったのである。
「……遅いな」
ジャンが呟いた、そのときだった。
「ワイズマン君、人を連れてきましたよ」
医療班の責任者が扉を開けた。
ようやくか。
ジャンは書類から顔を上げた。
「それで、人員というのは?」
「見ての通りだよ」
聞き覚えのある声だった。
「…………」
ユマ=リズナーが、楽しそうな笑みを浮かべて立っていた。
その後ろには、金髪碧眼の少女と少年が一人ずついる。二人とも十二歳ほどだろうか。
少女は髪を左右に結んでおり、活発そうな顔立ちをしている。一方の少年は短く整えた髪が印象的で、少女よりも少し大人しそうだった。
ジャンは二人を見た。
続いて、ユマを見る。
そして、もう一度二人へ視線を戻した。
「……俺は人手を寄越せと言ったはずだが」
「連れてきたよ」
「子供が二人いるように見えるんだが」
「よく見えてるじゃないか。さすが主席殿だね」
「喧嘩を売りに来たのか?」
「人が足りないんだよ。どこも慢性的にね」
ユマは肩をすくめた。
「読み書きと簡単な計算ができればいいって依頼だったと思うけど?」
「ああ、そう言った」
「だったら問題ないだろ。この子たち、できるもの」
「……こいつらが?」
「できるよ!」
少女が口を挟んだ。
綺麗な青い目で、まっすぐジャンを見つめている。
「わたし、字も書けるし、計算もできるよ」
「ぼくもできるよ」
少年も続いた。
「薬品庫の場所も知ってるし、薬草の種類も少し分かる」
「負傷兵の所属だって分かるよ。ロスバルトの人なら、だいたい知ってるもん」
「……ほう」
ジャンの表情が、わずかに変わった。
ユマはそれを見逃さなかった。
「何だい? 急に興味が出た?」
「仕事ができるか確認しているだけだ」
「素直じゃないねぇ」
「あんたはいつまでここにいるんだ?」
「邪魔かい?」
「非常にな」
「じゃあ、もう少しいようかな」
「帰れ」
少女がユマの服を引っ張った。
「姉さま。この人、誰?」
「ああ、言ってなかったね」
ユマは楽しそうにジャンを指差した。
「ニューアーク大学主席だった、ジャン=ワイズマン大先生」
「元をつけるな」
「主席だったのは過去の話だろ?」
「その言い方だと、大学を追い出されたみたいに聞こえるだろ」
「似たようなものじゃないか」
「全然違う」
少女が首を傾げた。
「偉い人?」
「本人はそう思ってるみたいだね」
「あんたは黙ってろ」
ユマは笑いながら少女の肩へ手を置いた。
「こっちが妹のユナ。で、こっちが弟のリック」
「ユナ=リズナーです!」
「リック=リズナーです」
ジャンの眉が動いた。
「リズナー?」
「そう。私の妹と弟だよ」
ジャンは三人を順番に眺めた。
「お前たち、姉弟だったのか」
「似てるだろ?」
「弟妹とはずいぶん人相が違うな」
「まだ会って一分だろう?」
「少なくとも、あんたよりは期待できそうだ」
「やっぱり可愛くないねぇ、主席殿は」
「お互い様だろ」
ユマは笑いながら、ユナとリックの背中を軽く押した。
「まあ、好きに使っていいよ。二人ともロスバルトの仕事は結構手伝ってるから、下手な新兵より役に立つと思う」
「姉さま」
「何だい?」
「わたしたち、売られた? あの人、なんか悪徳商人みたいな目つきをしてるよ」
「誰が悪徳商人だ!」
ジャンが思わず声を上げると、ユマは堪えきれずに吹き出した。
「あははは! ユナ、よく見てるねぇ!」
「褒めるな! そもそも俺は官僚だ!」
「そうだったね。じゃあ、二人とも悪徳官僚に気をつけるんだよ」
「話をややこしくするな!」
「はいはい。社会勉強、社会勉強」
ユマは最後まで笑いながら、二人の背中を軽く叩いた。
「じゃあね、主席殿。二人とも、ちゃんと言うことを聞くんだよ」
「はーい!」
「うん」
「二度と来るなよ」
「また冷やかしに来るよ」
「来なくていい!」
ユマは手をひらひらと振りながら、事務室を出ていった。
扉が閉まる。
ジャンは大きく息を吐いた。
「……まったく」
そして、残された二人へ視線を向けた。
ユナとリックも、じっとジャンを見ている。
「さて、お前たちの姉の性格については同情するが……」
「姉さま、いい人だよ?」
「その話はやめよう」
「姉さまと仲悪いの?」
「最悪だ」
「姉さまも同じこと言ってたよ」
「…………」
ジャンは額を押さえた。
「まあいい。仕事を始めるぞ」
◇
「ユナ」
「はい!」
「この負傷者名簿を、所属部隊ごとに分けてくれ。同じ部隊の兵士はまとめて、名前が重複していたら印をつけるんだ」
「分かった!」
「リック」
「はい」
「薬品庫へ行って、この一覧と実際の在庫数を照合してきてくれ」
ジャンは一枚の紙を差し出した。
「数字が違っていても勝手に直すなよ。帳簿の数字と実際の数を、両方書いて持ってくるんだ」
「うん。分かったよ」
「それと、二人とも」
ユナとリックが顔を上げた。
「分からないことがあったら聞け。勝手に判断される方が、あとで面倒だからな」
「はーい!」
「分かった」
二人はそれぞれの仕事へ取りかかった。
ジャンも自分の机へ戻り、負傷者の治療記録を確認し始めた。
正直なところ、期待はしていなかった。
十二歳の子供である。
単純な書類の分類や数の確認くらいなら任せられるだろうが、それ以上の仕事を求めるつもりはない。
もっとも、今の医療班には、その程度の人手ですらありがたかった。
ジャンは筆を進めた。
原隊復帰が可能な者と、引き続き治療が必要な者を分類し、死亡者については別の記録と照合する。重複している書類をまとめ、記載形式を統一していけば、今後の事務処理も多少は楽になるはずだった。
しばらくして。
「終わったよ!」
ジャンが顔を上げると、ユナが書類の束を抱えて立っていた。
「……もうか?」
「うん!」
「見せてみろ」
書類を受け取り、一枚ずつ確認する。
部隊ごとにきちんと分類され、重複していた名前には印がつけられていた。文字の読み違いも、ざっと確認した限りでは見当たらない。
「……なるほど」
「どう?」
「問題ないな」
「やった!」
ユナは嬉しそうに笑った。
ジャンは少し考えてから、別の書類を差し出した。
「じゃあ次はこれだ。治療済みと治療継続中の者に分けて、そのあと所属部隊ごとに整理してくれ」
「分かった!」
ユナは書類を抱え、元の席へ戻っていった。
ジャンはその後ろ姿をしばらく眺めた。
少なくとも、予想していたよりは仕事が速い。しかも、指示を理解するのに余計な説明を必要としなかった。
十二歳にしては、なかなか優秀なのかもしれない。
そんなことを考えていると、今度はリックが戻ってきた。
「先生」
「なんだ?」
「三つ違ってたよ」
「見せろ」
一覧を受け取る。
帳簿上の数量と実際の在庫数が、それぞれ記載されていた。差のある品目には印がつけられ、薬品庫の保管場所まで書き添えられている。
「勝手に数字を直してないな?」
「うん。先生が直すなって言ったから」
「よし」
ジャンは使用記録を取り出し、数量の違う品目を確認した。
一件目は記載漏れ。
二件目は数量の転記ミス。
そして三件目は、前日に使用された分がまだ帳簿へ反映されていなかった。
「これで説明がつくな」
「あ、本当だ」
「数が合わないからって勝手に帳簿を直すと、こういう原因が分からなくなる。だから、記録と現物は別々に確認するんだ」
「なるほど」
リックは感心したように頷いた。
ジャンは修正内容を書き込むと、顔を上げた。
リックがまだ目の前に立っている。
「……どうした?」
「次は?」
「…………」
ジャンは少しだけ黙った。
「お前たち、普段からこういう仕事をしているのか?」
ちょうど戻ってきたユナとリックが顔を見合わせた。
「ときどき?」
「姉さまの手伝いとか」
「団長の妹と弟だから、いろいろ頼まれるんだよ」
「……なるほど」
ジャンは二人への認識を少し改めた。
子供ではあるが、少なくとも仕事の手順は理解している。単に読み書きができるだけの兵士を寄越されるより、よほど役に立ちそうだった。
「じゃあ、次の仕事だ」
◇
午後になり、負傷者名簿を整理していたときだった。
「ユナ、この第一戦隊ってのは、ロスバルトの部隊名か?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、第二戦隊も同じだな?」
「そう」
ジャンは名簿に目を落とした。
第一戦隊。
第二戦隊。
第三戦隊。
同じような所属名がいくつも並んでいる。
「ロスバルトは戦隊単位で編成されているのか?」
「うん」
「いくつあるんだ?」
「団長直属と、第一から第五戦隊まで」
「……六個か」
「そうだよ」
「一戦隊に何人いる?」
「だいたい千人くらいかな?」
ジャンの手が止まった。
「待て」
「なに?」
「ロスバルトは全部で何人いるんだ?」
「全部?」
「総兵力だ。今、レンヌにいる人数じゃなくて、ロスバルト全体で」
ユナは少し考えた。
「五千から六千くらい?」
「…………」
「どうしたの?」
「いや……」
ジャンは名簿を見た。
そして、もう一度ユナを見る。
「それは傭兵団という規模なのか?」
「傭兵団だよ?」
ユナは当たり前のように答えた。
ジャンは少し考え込んだ。
五千人を超える常備兵力。
傭兵団としては、かなり大規模である。
普通、傭兵というものは依頼に応じて兵士を集め、契約が終了すれば解散することも多い。しかし、これだけの人数を常時抱えているのであれば、事情はまるで違ってくる。
「契約ごとに兵士を集めているわけじゃないのか?」
「ずっといるよ」
「じゃあ、契約がないときは何をしてる?」
「訓練!」
「……ほかには?」
「セイレンの警備とか、街道の巡回とか」
リックも口を挟んだ。
「災害があったら手伝うよ。冬は雪かきもするし」
「……雪かき?」
「うん。雪が積もると大変なんだよ」
ジャンはしばらく黙った。
「軍隊じゃないか」
「傭兵だよ?」
ユナは真顔だった。
どうやら本人には、何の疑問もないらしい。
「じゃあ、その五千人の給料は誰が払ってるんだ?」
「仕事を頼んだところだよ」
「契約がないときは?」
「セイレンが出してる」
「セイレン市政府が?」
「傭兵ギルドだよ」
「その傭兵ギルドの長は?」
「姉さま!」
「……じゃあ、セイレンの市長は?」
「姉さま!」
「…………」
ジャンは額を押さえた。
「ちょっと待て」
「なに?」
「つまり、ユマ=リズナーはロスバルト傭兵団の団長で、傭兵ギルドの長でもあって、セイレンの市長でもあるのか?」
「そうだよ?」
ジャンは中央から送られてきた資料を思い出した。
ロスバルト傭兵団。
セイレンを本拠とする有力傭兵団。
団長、ユマ=リズナー。
もちろん、嘘は書かれていない。
ただし、ずいぶんと情報が足りなかった。
五千人以上の常備兵力を抱え、部隊編成は固定されている。平時にも訓練を続け、市内の警備や街道の巡回、災害対応まで担当している。
しかも、その組織を率いる人物が市長まで兼ねているというのだ。
これでは、単なる傭兵団ではない。
実質的には、セイレンの常備軍ではないか。
「……なるほど」
ジャンは腕を組んだ。
ロスバルトへの支出が大きい理由も、少し理解できた気がした。
普通の傭兵団と同じように契約期間だけで費用を考えるのは、そもそも無理がある。五千人以上の兵士を常時維持するためには、訓練費用や装備の更新、負傷者の治療など、多くの経費が必要になる。
しかも、任務がなければ解散するわけではなく、平時にもセイレンの治安維持を担っている。
要するに、傭兵団という名称の都市軍なのだ。
「中央の資料には、そこまで書いてなかったぞ……」
「中央って、セイレンのことあんまり好きじゃないから」
ユナが何でもないことのように言った。
ジャンは顔を上げた。
「それはお前が言っていいことなのか?」
「駄目なの?」
「……俺に聞くな」
「先生、中央の人でしょ?」
「だから困ってるんだよ」
リックがくすくす笑った。
ジャンは深くため息をついた。
とんでもないところへ左遷されたものだ。
そう思いながら、もう一度ロスバルトの負傷者名簿へ目を落とす。
第一戦隊、第二戦隊、第三戦隊。
先ほどまでは単なる分類記号にしか見えていなかったが、その向こうには五千人を超える兵士と、それを維持するための巨大な組織が存在している。
「……一つ聞いていいか?」
「なに?」
「お前たちの姉さんは、どうやってこれだけの組織を管理してるんだ?」
ユナは少し考えてから、にっこり笑った。
「姉さま、すごく忙しいよ!」
「……それは分かる」
「いつも書類とにらめっこしてるし、いろんな人が相談に来るんだよ」
リックも頷いた。
「夜遅くまで仕事してることも多いよ」
「そうか」
ジャンはもう一度、目の前の書類を見た。
ユマ=リズナー。
あの口の悪い女が、これだけの組織を管理しているというわけか。
「……意外だな」
「何が?」
「いや、何でもない」
ジャンは筆を取った。
どうやら、あの女についても少し認識を改める必要があるらしい。
もっとも、だからといって性格の悪さまで評価を改めるつもりはなかったが。
「先生、次は何をすればいい?」
ユナが尋ねた。
ジャンは机に積まれた書類を見回し、二人へ新しい仕事を割り振った。
「じゃあ、次は原隊復帰者の名簿だ。ユナは所属部隊ごとに整理して、リックは治療終了日と復帰日を確認してくれ」
「はーい!」
「分かったよ」
二人が元気よく返事をして動き出す。
ジャンも自分の仕事へ戻った。
左遷されて一日目。
少なくとも、思っていたほど退屈な職場ではなさそうだった。




