第2章 あらすじ・登場人物
第二章 あらすじ・登場人物
【あらすじ】
南北戦争の終結から三年。
リービッヒ王国の辺境パドゥーラでは、十八歳の領主アムル=ドゥットゥカースが、幼なじみのエルや仲間たちとともに、戦乱で荒れた領地の復興を進めていた。
しかし、ようやく取り戻し始めた穏やかな日々に、再び戦争の影が迫る。
失地回復を掲げるリービッヒ王国首脳部は、アムルの反対を押し切り、ライプニッツへの侵攻を決定。勝利を疑わず進むリービッヒ軍を、レミーラ帝国東部辺境軍司令官ルートビッヒ=シュナイダーが迎え撃つ。
戦場で兵を率いる者。
故郷に残り、人々の暮らしと軍の補給を支える者。
それぞれの働きが、やがて国の存亡を左右していく。
戦争を嫌う青年は、仲間たちを生きて帰し、エルの待つ故郷を守れるのか。
アムルとルートビッヒ。二人の将が、初めて戦場で相まみえる。
【パドゥーラの人々】
◆アムル=ドゥットゥカース
十八歳。パドゥーラ伯。南北戦争で功績を挙げた若き英雄。
戦争を嫌い、領土や名誉よりも人々の暮らしを大切にする。普段は気さくで、領民からも遠慮なくからかわれるが、戦場では素早い判断と巧みな用兵を見せる。エルにはとことん甘い。
◆エル=リージェット
十八歳。モンドの娘で、アムルとは血のつながらない兄妹として育った。
銀髪の美しい少女。優しさだけでなく、軍事と行政の双方に確かな能力を持つ。領民からの信頼は厚く、アムルにとって何より大切な存在。
◆ティーエ=クラビス
十八歳。パドゥーラの主計を預かる、アムルの親友。
財政と兵站の専門家。領地の財布から遠征軍の食糧まで、数字に関わる仕事を担っている。穏やかな物腰だが、無理な計画にははっきりと異を唱える。アムルたちの活動を支える、欠かせない実務家。
◆ヴァン
アムルたちから「先生」と呼ばれる、穏やかな人物。豊富な経験と広い視野で戦況を読み、作戦だけでなく軍の組織づくりも支える。かつてレミーラ軍を苦しめたその名は、敵の古参将校たちにも知られている。
◆ロック
アムルの幕僚。
口は悪く、アムルにも遠慮なく突っ込むが、兵をまとめ、防衛戦を指揮する腕は確か。アムルを「大将」、エルを「嬢ちゃん」と呼ぶ。飾らない言動の奥に、仲間への強い信頼がある。
◆エヴァンス
アムルの幕僚。通称エヴァ。
普段は落ち着いた物腰だが、戦場では激しい攻撃で敵を押し返す。ロックとともにアムルの用兵を現場で支える存在。兵の動きだけでなく、戦争に巻き込まれる住民の被害にも目を配る。
◆グランワルド
パドゥーラの猛将。
今回の遠征には同行せず、エルを補佐して留守を守る。主力軍が出払った領地の防備を担う、頼もしい存在。エルに個人的な恩義がある。
◆ジョン=ブラン
遊撃戦を得意とするパドゥーラの将。
主力軍とは別に行動し、敵の補給線を脅かす。離れた戦場でも状況を見極め、自らの判断で役割を果たす。アムルの恩人でもある。
【リービッヒ王国】
◆モンド=ドゥットゥカース
王国の軍務尚書。アムルの養父であり、エルの父。
南北戦争後の軍再編を担うが、激務によって体調を崩し、遠征開始時には療養している。アムルの能力を深く信頼する一方、自らも王国を支える責任を背負う。
◆パウロ=フランツベルク
二十四歳。ラレド侯。第五師団長。
礼儀正しく、現実を冷静に見つめる若き貴族。アムルとは軽口を交わせる間柄で、遠征の危険性にも理解を示す。周囲が勝利に沸く中、アムルとともに万一の事態を考えている。
◆ギルフォード
第三師団長。
かつてモンド、パウロとともに南北戦争を戦った将軍。モンドを支えてきた経験を持ち、今回の遠征でも補給を軽視する作戦に懸念を示す。
◆アンスバッハ
アンデルヌ侯。リービッヒ軍総司令官。
失地回復を強く主張し、遠征を推進する。モンドの後継者であり、貴族の血を引かずに台頭したアムルを快く思っていない。その対立は、軍議にも持ち込まれている。
◆ユーリッヒ
リービッヒ軍参謀長。
盗賊討伐の功績によってアンスバッハに認められた、もう一人の若き英雄。アムルへの対抗心を抱き、大きな戦果を求めて積極的な進軍を唱える。自らの作戦への自信は強い。
【レミーラ帝国】
◆ルートビッヒ=シュナイダー
二十八歳。東部辺境軍司令官。
皇帝の曾孫にあたるが、父の失態によって皇籍を失い、軍功を重ねて現在の地位を築いた。難攻不落とされたレンヌを陥落させた実績を持つ。
◆ホフマン
ルートビッヒの腹心。
冷静に情報を整理し、主君の構想を実務と軍事の両面から支える。自ら部隊を率いる指揮官でもあり、敵の逃げ道を狭める堅実な用兵を見せる。ルートビッヒにも率直な意見を述べられる人物。
◆オスワルト
三十歳。東部辺境軍の精鋭、鉄騎兵の団長。ケルン公家の長兄。
圧倒的な突撃力を持つ騎兵を率いる猛将。戦う意欲は強いが、任務と戦況を踏まえて自制する冷静さも備える。
◆ジーン
ケルン公家の次兄。
オスワルトの傍らで戦況を見極め、判断を助ける。目の前の敵を追うことよりも、部隊に与えられた任務を重視する。
◆バルナ
ケルン公家の三兄。鉄騎兵第二大隊を率いる。
勇猛で、逃げる敵には激しく食らいつく武将。妹マリーには、戦場とは違う意味で振り回される。
◆マリーナ=フォン=ケルン
十八歳。通称マリー。ケルン公アレンの実娘。
「ケルンのとんでも姫」と呼ばれる、好奇心旺盛で型破りな少女。機械いじりや戦術研究に熱中する一方、家宰として東部辺境領の内政と兵站を支える。強い軍隊だけでは領地を豊かにできないことを、誰よりも切実に理解している。
【戦場で出会う人々】
◆シェ=ウィンク
第四師団第十五中隊長。平民出身。
能力より家柄が優先される軍に失望し、働く意欲を失っていた。しかし、部隊の崩壊によって部下ともども敵中に取り残され、生き延びるために本来の能力を発揮し始める。




