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仕事べだね

会社に行く道中にコンビニにより一応、マスクを買っておいた。


「なんでマスクべだ?もしかして風邪べだ」


「……さっきツイッターの投稿あるだろ、万一私だってばれたら終わりだから一応ね」

いくら髪色、服装とかが変わっていても、さすがに私の身近な人の場合はばれる可能性はぜんぜんある。


「ていうか、なんでついてくるの?」


「そりゃあ僕はあかりの妖精だからべだね!」

なんか前にも枝豆が同じようなことを言っていたことを思い出す。

……異様にこだわりがあるよな


「あ、会社に行っても“”絶対に私に話しかけるなよ”」

枝豆は他の人からは見えないため私との会話は全部私の独り言となる。


「うぅ…わかったべだ」


「嫌なら帰ってもいいぞ」


「それだけはしないべだ!!」


会社に着くと枝豆は横で言われた通り喋らずぷかぷかと浮いている。枝豆を見ているとなんかここ数日、意味の分からんことばっか起きてるなと思い返してしまった。

……魔法少女もおかしいけどこの枝豆とか名乗っている妖精もだいぶ意味わからないんだよな。一体どういう仕組みなんだろ。触った感じはただのぬいぐるみなのに。


魔法少女もそうだったがやっぱり非科学的すぎる。どういう仕組みか聞いてみたけど、枝豆には魔法としか言われてない。

やっぱり歳をとった私には魔法とか信じられなかった。


色々と考えていると後ろから部長が見回りしに来ていた。急いで仕事を始める。

……まぁいいや、とりあえず仕事終わらせよう。


昼休憩

枝豆がなにか喋ろうとじたばたとしているのをみて、人のあまり来ないところへと移動した。


「いいよ、しゃべっても。」


「ぷはぁー。やっとしゃべれるべだー!」

ポケットからいつも食べているブロック型の携帯食を取り出し食べる。


「前もそれ食べてべだね。おいしいべだ?」


「?おいしくないよ。口の中パサついて水分持ってかれるし」


「まぁ、安いっていうのと、食べ過ぎると午後の仕事で眠たくなるわけだし。」


「なんかロボットみたいべだね」


「あながち間違いでもないな。ロボットってのも。」

苦笑いを浮かべながら水を一気に飲み口の渇きを潤していく。


「田中さーーん!!」


突然の呼び声にびくっと肩を揺らす。

どたどたと誰かが走ってくる。

「ど、どしたの西村さん」

西村さんは私の後輩だ。


「あれ、今誰かと話してました?」


「あーちょっと電話してただけだよーあはは」

なんとか咄嗟に誤魔化すことができた。


「あ!それよりも!!」


「どうかした?」


「一昨日終わらせたプロジェクトがあったじゃないですか」

一昨日のってことは私が枝豆とあった日のやつかな。


「さっき確認してたらプログラミングに重大なバグがみつかって早急に書きなおさないといけないんですよ」

なんだか嫌な予感がしてきた。たしかあのプロジェクトって…


「締め切りってさ…もしかして…」


「今日の24時です。」


「え、今日の?」


「はい…」

シーンとなりカチカチと時計の針が動く音が鳴る。

とりあえずオフィスに戻って状況を確かめる。


「すみませんでしたーーー!完全に私のミスです。」

戻るとすぐに新人の子が私に深く頭を下げた。


「頭をあげてよ。起こったことはしょうがない。今はとにかく修正作業に入ろう。」


「分かりました…」


「それでどこで不具合が?」

急いで確認に入る。

…ここがああなってるのか。となると修正する場所は

すると


「おいおい!一体どういうことだ!!」

部長がどかどかと足音をたてて間に入ってきた。


「すみません私のミスで……」

再び新人が頭を下げる。


「全くどうしてくれる。ここの責任者は私なんだぞ!!」

さらに強く新人を怒鳴りつけ机を思いっきり叩く。新人もかなり怯えてしまってる。


「しかたない、とりあえず取引先に行って期限を延ばしてもらう。お前ひとりのせいで取引先だけでなくみんなの迷惑になってることをよく…」


「待ってください、期限を延ばさなくても大丈夫です。」


「あ?」


「今日中に終わらせますから。」


「今から終わらせるのか?」


「終わらせます。」


「もし終わらなかったらお前が責任をとれるのか?」


「終わるから大丈夫です。」


「そこまで言うならやってみろよ。期限は今日の24時だったな。終わらなかったときどうなるかちゃんと覚えておけよ」

そう言い残し部長はその場を後にした。

……いや部長は手伝わないのかい!まぁ、部長も部長で仕事あるししょうがないか。


「ごごめんなさい、先輩。私のせいで……」


「謝る暇あったらさっさと修正作業に入るよ。要は終わらせればいいんだから」

今回作ったコードの中核は私がほとんど作ったため、どこを直せばいいのかはだいたいわかってる。


修正すべきところをまとめ全員各々の作業に入っていった。私も始めようと思った時枝豆が話しかけてきた。


「さっきのあかりかっこよかったべだね」


「いや、大したことはしてないよ。それにあの子は新人…ついこの間まで学生だったんだから、さすがに放っておくことわけにはいかないよ。」

あんな風に怒鳴られて会社がいやになりそのまま辞めていく新人は少なくない。

もし、辞めてしまえば後続も育たないし何より、新人の自信とかメンタルが弱って将来とかに大きな影響を及ぼすかもしれない。


「…ていうか、喋りかけてくんな。」


「あ!ごめんべだ!」


「まったく…」

枝豆が黙ったのち私も作業を始めた。


■■■


そして現在時刻は23時。最終確認を終え修正作業はなんとか終わった。

殺伐としたオフィスが一気に解き放たれた。

……思ったよりギリギリになってしまった。だが、間に合ったならまぁいい。

デスクで大きく背伸びをする。


「お疲れ様です、先輩。今回は本当に」


「いいよいいよ。困ったときはお互い様でしょ。それにちゃんと確認してなかった部長も悪いしね。」


「今日この後、みんなで飲みに行こうって話あるんですけどあかりさんどうですか?明日休みでしたよね。」


「あー……ごめん、やめとくよ。ほらちょっと風邪気味だから」

自分のつけているマスクを指さし断った。


「そうだったんですか、ほんと無理させちゃってごめんなさい。」


「いやいや気にしないでよ、ほんと」

咄嗟についた適当な嘘だったため申し訳なくなり少し心が痛くなる。


「じゃあお疲れ様―」

私はそそくさに帰路につき、会社の近くにあるコンビニへと足を運び何本かお酒を買った。

「ふぅ…さすがに今日は疲れたな…」

夜風が気持ちい。ここまで切羽詰まったのは久しぶりだった。


「お疲れ様べだね、あかりは結構会社では頼られてるべだね。すごかったべだ!」


「…いやすごくはないだろ。私はただ長くやってただけで、別に誰にでもできることをしただけだよ。」

もうあのブラック企業に就いてから7年になる。そんだけやっていれば、あれくらいのことはできるだろう。私の実力なんか下の下のほうだ。


「でもあの新人の子が怒られてるときに前に出たのはあかりだけだったべだよ」


「あの子は新卒の子だからね。」


「なにか関係あるべだ?」


「新卒なんてほぼ学生…つまり子供だろ。大人である私たちが守ってあげる義務がある。」


「…やっぱあかりはすごいべだね」

枝豆がぱちぱちと手をたたく。


「すごくないよ。」

少し沈黙が続いた。コンビニの袋がビニール音を立てる。


「ていうか今日は頼んでこないの?化物退治」


「え!行ってくれるべだ!?」


「もう人通りがだいぶないからね。やってあげないこともないよ」

時計はすっかり24時を回っている。それに明日は久しぶりの休みであるためちょうどいい。


「やったべだ!小規模な怪物がすぐそこにいるべだしいこうべだ!」


枝豆に引っ張られ私は怪物退治へと向かった。

別に世界を救いたいとかそういう心変わりがあったわけじゃない。

ただ魔法少女は中高生の子供がやっているという枝豆の言葉を思い出してしまった。

私がこうして怪物を倒してあげれば少しでもその子たちの助けになるのなら、たまに魔法少女になるのも悪くないと思えた。


あかりの自己肯定感は最底辺にあるようです。

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