あかりはすごいべだ
動画の概要。
そこにはばっちりと魔法少女の姿となっている私がばっちりと映っていた。 初めて魔法少女の姿を素面の状態で見たけど服装がドレス衣装になっただけでなく髪型がツインテールに変わってるし髪色も変わってる。
……なんか気持ち肌の色もよくなってる?いやそれでも、イタいな…見るのはっず。
昨日、怪物を倒したあと私は変身を解かずそのまま町を歩いていた。その時の動画である。
「おいおい!なに見てんだよ…」
「ってこいつめっちゃ変な恰好してんじゃんwコスプレですか?w」
動画にはヤンキーらしき人物二人と私が映っていた。
「こいつら、ぶちころ…」
「ま、まつべだ!!あかり!!関わらないほうがいいべだ!ていうかあかりの姿がみんなに見られてるべだよ!!早く帰ろうべだ。」
必死に枝豆が私の足を引っ張るが、魔法少女によって強化されてるのもありびくともしない。
「いーや、やる。それに、ほら見てみろよ。」
ヤンキーの二人組の後ろには怯えている男の人がいた。 明らかに助けを求めている目をしていた。
「困った人を助けるのも魔法少女の役目…でしょ」
「…うぅ、そう言われると何も言えないべだ…」
枝豆はすっとあかりを止める手を離した。
「さっきから何一人でぶつぶつと言ってんだよ!変なおばさん!」
ぼきぼきと腕をならしながら私の前に立つ。
「…やっぱころす」
「ちょ!!今のあかりだとほんとに死んじゃうからやめるべだよ!!」
「っちしょうがねーな。えい」
ぷすっとヤンキーのお腹辺りを人差し指で押した。
「ふおおおおおおおおいてえええええええ!!」
とたんヤンキーがお腹を押さえながらその場で転がり始めた。
「何しやがったこのばば…」
I私は言い終える前に、もう一人のヤンキーの目の前で片手に持っている缶を握りつぶした。
「ひえっ!!」
「次それいったら、こうなるのはお前だからな。いいな?私は誰が何といおうと18歳の高校生だ。」
普段の私なら出さないかなりドスの聞いた声だった。 すぐにヤンキーは逃げていった。
「大丈夫?」
そっとヤンキーに絡まれていた男の子に手を伸ばす。
「大丈夫です。すみません助けてもらって」
「もう暗いんだから早く帰りな。」
「はい、ありがとうございます!!えっと魔法使いのお姉さん!!」
礼を言い男の子はすぐに帰っていき、手を振りを見送った。
「あとさ」
ふいっと私が急に振り向きカメラ目線となった。
「いつまで撮っとるんじゃー!!」
プツンとそこで動画は途切れた。
この動画で一番大事なことは私の魔法少女の姿が一般人にも見られているというところだ。枝豆は最初、変身してるときは他の人には見られないって言ってたというのに。
投稿のコメントを見てみると
「かっこいいコスプレ?」 「かわいいけど、若くはなさそう」 「これはこれあり」 「いや普通にイタすぎるだろ」
内容はともかくどのコメントも動画にいる枝豆の姿については触れられておらず、私の魔法少女の姿についてのコメントしかなかった。おそらく私の姿が見られていても枝豆の姿は見られてないようだ。
「で、どういうことなの枝豆。話違うじゃん!姿見られないって話じゃないの??」
「落ち着くべだ!頭引っ張るのやめるべだ!!もげる、もげるべだ!あ、これほんとにだめなやつかも…」
「っち」
しかたなくぱっと枝豆を離した。
「げふっ!!ひっどいべだね…」
「それで?一体どういうことなの。」
「昨日いろいろと考えてみたべだ。怪物の姿も僕の姿も他の人には見えてなかったべだから不具合があったわけじゃなさそうべだ。だから問題はあかり本人にあるはずべだ。」
「私に問題…」
正直、心当たりはある。
「私が27歳だから?」
「たぶんそうべだ。本来魔法少女は18歳までの希望、未来、可能性をもつ少女にしかなれないべだ」
「じゃあなんでなれたの?今の私に何一つとして当てはまってないような気がするんだけど…」
希望も未来も可能性も社畜である今の私にあるとは思えない。年齢なんて10歳近くも離れている。
「それは今のあかりの場合べだ」
「今の?」
「そうべだ。あかりが酔っているとき、その条件を満たしているべだ」
「えー、そうか?」
たしかに私は酔っているとき少しは気分が上がっているがそんな希望とか未来とか可能性とかそんな大層なものを抱いてるとは思えない。
「そうべだ!あかりが思ってる以上に酔っているときのあかりは全能感と自信を抱いてるべだ」
「そ、そう?」
内心全然納はできていない。お酒に酔ってるとき何をしたか何を言ったかは思いだせるがその時の自分を私はいまいち思いだすことができないのだ。
「うーん百歩譲ってそうだとしても年齢に関してはどうしようもなくない?私27だよ。」
「それについても色々と考えてみたべだ。前にあかりは酔っているときに自分は18歳の高校生だと言ってたべだよね。」
「…なんか言ってた気がするけどそれが?ただの酔ってるときの戯言だろ」
「それがただの戯言じゃないべだ。酔っているときのあかりは本気で自分を18歳だと思い込んでいるべだ。」
それを聞き頭が痛くなる。
「……じゃあなんだ?酔ってるときの私が自認18歳の高校生だと思ってるってことか?そんなアホみたいな理由で?」
「そうとしか考えられないべだ。実際、酔っているときのあかりの思い込みは半端じゃないべだ。」
自身の酒癖の悪さはわかってはいたがまさかそれがここまでだとは思わなかった。しかもそれが原因で魔法少女になれてしまうなんて。
「あかりが魔法少女になってるときに異常なまでの力があるのもきっとそのせいべだね。昨日測ってみたら一般の100倍近くは希望エネルギーがあったべだし」
希望エネルギーというまた意味の分からに単語が出てきたが一旦スルーした。
「うれしくねー。というかそれじゃあ結局なんで私だけカメラに映るの?」
「たぶん本来、魔法少女になれないあかりはバグみたいな存在べだから不具合を起こした可能性が高いべだ。」
「……」
「たぶん。これからも不具合は起こるかもしれないべだけどそれでも一緒に魔法少女を続けようべだ。僕たちで世界を救うべだ!!」
さぁ!!と枝豆が短い腕を私の前に出してきたがすぐにその手を払いのけた。
「いや。普通に辞めたい。」
「べだ?!」
「いや、普通に致命傷でしょカメラに映るのは。私、社会的に死んじゃうよ。というかこんなの見られたら会社クビになるし」
今回の動画を見る限りだと髪型も服装も表情も普段の私とはほとんど違うし気づかれることは……多分ないと思われる。というか思いたい。ただそれでもリスクが大きすぎる。
「うぅ…そこをなんとかやってほしいべだ。あかりの力があればどんな怪物だって瞬殺べだ」
「やらないやらなーい。大体見ろよこれ」
私はツイッターのコメントを枝豆に見せる。
「キツイってコメントだけでも100件はあるぞ。なんでこんな27歳にもなって黒歴史を作らんとあかんのじゃ」
「僕はキツくないと思うべだ。女性はみんな平等にかわいいべだでしょ。それにほら“若い子でもいいけど、こういうのもそそる”ってコメントがあるべだよ」
「それは褒めてない!そういうのを世間は変態っていうんだよ。」
やっぱこの妖精、どこか抜けてる。精神がガキなのかよくわからない。そんなこんなで口論しているとふとスマホの画面にある時計が目に入った。時刻はもうすぐ8時になろうとしている。
「あ!もうこんな時間じゃん。家でないと。二連続遅刻はシャレにならないって。」
「ちょっとまつべだよ!あかりー」
枝豆のことをほっとき私は家を飛び出した。




