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変身できないべだ

その後も枝豆のことを無視し続けながら仕事を片づけていった。今日は特に忙しくなさそうだから22時ぐらいには帰れるかもしれない。


そして昼休憩。みな各々立ち上がり昼食を取りに行く。私はデスクで軽く背伸びをし鞄から買いだめしているカロリーメイトを取り出した。

午後は眠くなるためいつもこれ一本にしている。死んだ目をしながらむさぼっていると


じたばたじたばたと枝豆が体を動かしていた。

……あぁ、すっかり存在忘れていた。このままなかったことになればいいのに。


しかたなく立ち上がりオフィスをでて人があまり来ないベンチのほうへと移動した。


「もう喋ってもいいよ」


「べだーー!やっと喋れるべだー。」

仕事している途中枝豆は一切喋らずぷかぷかと隣で浮き続けていた。


「退屈なら帰ってくれ。というか帰って。」


「それはできないべだ。僕はあかりの妖精として安全を守るためにもそばを離れるわけにはいかないべだ!」


「安全って、私…もう27なんだけど。」


「それよりもあかり!今、外に怪物がいるべだ!」


「へー」


「??いかないべだ?昼休憩中ならいけると思ったんべだけど…」


「いかない」


「ええええ!!いこうべだ!」

枝豆が頑張って引っ張るが非力なためピクリともしない。


「ちなみに怪物を倒さないとどうなるの?」


「え、世界が滅ぶべだ」


「は??なんて??」


「だから世界がほろぶべだ」


「?????」


「えーと説明するとあの化物は人々から生まれた悪感情から発生するべだ」


「な、なるほど?それで化物が人間を襲うってこと?」


「いや化物は普通の人はみえないし襲わないべだ。襲うのは視認できる魔法少女とかだけべだ。」


「…じゃあ害なさそうだし無視でいいじゃん。」


「それが全く害がないわけじゃないべだ。」


「え?」


「化物を放置してると災害とか事故とかの形で現実に及ぼしていくべだ。」


「これまたなんかリアルな話を…じゃあ今まで起きた自然災害とか事故はその怪物のせいってこと?」


「全部じゃないけど何個か当てはまるやつはあるべだ。」


「う、うーーん?」

説明に納得したがやっぱり普通に考えて何言ってんだこいつっていう気持ちがでかく半信半疑である。そもそも化物自体酔っているときにそれもまだ一回しか見たことないわけだしどんな奴なのかすら把握できてない。


「というわけでいってほしいべだ!」


「えーでも痛いのは嫌だなぁ…」


「大丈夫べだ!魔法少女になってる間は体に一切の怪我を負わないし死ぬことも絶対にないべだ!」


「え、どういう原理?」


「原因はわからにけどとにかく死なないべだ。だから安心して戦ってほしいべだ。」

かなり気になることを言っているが一旦スルーした。


「でも、午後も仕事あるし…」


「仕事と世界どっちが大切べだ!!そんなこと答えるまでもなく……」


「えー仕事?」


「嘘だろべだ!?世界滅んだら仕事どうこうの話じゃないべだ!

「しょうがないだろ社会人なんだから。私にとって会社クビになるのと世界滅ぶのは同義だから。そもそもまだ私は正式に魔法少女をやるとも言っていない。」

そもそもできるなら魔法少女に変身とかしたくない。あの時は酔っている状態だったか羞恥心がなかったのかもだけど素面であれは恥か死する気しかしない。


「そんなぁ…」

うるうると枝豆の目が潤み始める。

…さすがに罪悪感がわいてくる。


「う…その化物たちはどれくらい放置してもいいの?」


「時間がたつとどんどん強力になるべだからできる限り発生したその日のうちには倒しておきたいべだ。」

どうやら、化物が現実に影響を与えるのはすぐにというわけではないらしい。


「じゃあ仕事おわったらいく。それでいい?」


するとそれを聞いた枝豆はにぱあああと誰が見てもわかるくらい

…くそ、なんで私がこんな目に…

断れない雰囲気となり、仕方なくその日は仕事をできる限り早く終わらせた。


そして現在時刻は20時。


「あーー帰りたーい」


「だ、だめべだよ!ほらもうすぐその化物のもとへつくべだ。」

心身がすでに仕事にもみくちゃにされており寝れるなら今すぐに寝ておきたい。

…なにゆえ仕事終わりに魔法少女をせんといかんのじゃ。

文句をぶつぶつと垂れながら枝豆についていく。


「ここべだ。」


「えーと、あれ…なの?」

目の先には高さが6メートルくらいの男の子のすきそうなロボットがいた。

前回あったときのおぞましい見た目を想像していたのに拍子抜けだった。


「そうべだ。前とは違うのは怖くないように僕が外見をマイルドにしてるからべだ。」


「そんなこともできんのか…」


「あかりは平気かもだけど魔法少女をやるのは中学生とか高校生だから外見がおぞましいとトラウマになるかもしれないべだから」

そういえば魔法少女はほかにもいるって枝豆が昨日言っていた気がする。ていうことはその人に任せればいいんじゃね?と一瞬思ってしった。けどここまできたらもうやるしかない。


「はい!このステッキを使うべだ。」

枝豆がどこからともなく出したステッキを私に手渡した。


「えーとこれで変身するのか…一応聞いておくけど魔法少女になってるときは他の人からは見えなくなってるんだよね。」

ここは人通りが多いとはいかないが全然普通に帰宅している社会人などがそこら辺にいる。


「そうべだよ。だから気にせずやっちゃうべだ!あかりの強さならあんな敵ワンパンべだよ。」


「……」

一呼吸をし覚悟を決める。昨日の記憶を思い出しどうやって変身したかを思い出す。


「よし“変身”!!」

きらびやかなステッキを頭上高く掲げた。


シーン

しかし何も起きなかった。

「は?」


それと同時に周囲からの冷たい視線を感じる。

「あの人大丈夫?」

「通報した方がいい?」

ひそひそと声が聞こえ通る人全員が私から2メートルくらいの間を開けている。思わず背中から変な汗が止まらない。


「あれなんで変身できないべだ!?昨日はこれでいったはずなのに…」


「……」

がこんと一気に体の力が抜ける。


「あかりは何か思いつくべだ?」


「………………こ」


「こ?」


「ころすうううううううううう!!」


「げふぅっ」

思いっきり枝豆の首根っこをつかみぶんぶんとふる。


「変身できてないじゃん!!ただ私が恥ずかしい思いしただけじゃん!!」


「ごめんべだ、あかり!ちょっと苦しいべだ………」

だんだんと枝豆の顔が気持ち青くなっていくような気がする。


「というかこんなことしてる場合じゃないべだよ…」


「え?」


ふと前をみるとさっきのロボットの形をした化物が私たちを見ていた。手の力がすこし緩みその隙に枝豆が抜け出した。

……あ、たしか化物って普通の人は襲わないけど魔法少女たちは襲ううんだっけ。ていうことは……


思った通り、私たちに狙いを定めしんがしんと音を立ててすぐに足を進めてきた。

……やばいやばい!

急いで枝豆をつかんで猛ダッシュし逃げていく。


「あーなんでこんなことにぃいい」

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