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討伐べだね

枝豆がほうきの形へと変わった。


「なんで、ほうき……。まさかこれで飛べってこと?!」


「そうべだ!」

当然のようにほうきから枝豆の声が聞こえてくる。


「……」

魔法少女とほうきと言えば一つしかない。私にまたがって飛べってことだろう。

……そういえば、さっきの少女と電話してるとき、ほうきに跨って空を飛んでいた。妖精のエルノンがいないのは、ほうきに変身してたってことなのだろう。


「本当はあかりにはほうきに乗ってほしくはなかったべだ」


「どういうこと?」


「……ほうきに乗って空を飛ぶときは、あかり、魔法少女になってるってことべだ」


「おん」


「つまり、酔いながらほうきを運転させてるのと同じ……普通に飲酒運転べだ。しかもまだほうきの使い方もろくに習ってないべだしね」


「おん? あれ、思ったより危なくない?」

そもそも飲酒運転どうこうの前に、私はほうきの乗り方なんかしったもんじゃない。

車の免許は持ってるけど、かなりペーパー。しかもほうきを運転してるときは酔ってる状態の私。

……あれ、私死ぬ?


「まぁ、でもこんな時にそんな不安になることばっか言ってもしょうがないべだね。さぁ、あかり! 変身するべだ!!」


「いや、でもさすがに……ちょっと」


「大丈夫べだよ。最悪落ちても、魔法少女になってる状態なら絶対に怪我一つつかないべだから!」


「……えぇ、でも」


「運転中は僕もアシストしてあげるべだから! それにもうあまり時間がないべだ」


「いぃ……」

さっきの少女には、このビルに引き寄せるように言っている。時間的にはいつ来たっておかしくはない。


「あー分かったよ! やる! やります!」

鞄から酒缶を取り出す。勢いよく缶の蓋を開け、一気に口の中に流し込む。

……う、ぬるっ。

買ったときから結構な時間が経っているため、ぬるいのも当然ではあった。正直言ってかなりまずい。次は保冷バッグを用意しようと心に決めた。


「うぅ、ひっく。くそまじい……」


顔を引きつらせながらも、なんとか完飲。体が火照りはじめ、内から自信と勇気があふれ出し気分がよくなる。ちゃんと酔えたようだ。


「よーーし! 枝豆!!」

何もない空間からステッキを取り出す。


「へんしーん」

ステッキを大きく振ると同時に、体全体がピンクの淡い光に包まれていく。髪がふわりと舞い上がり、髪色が赤茶色からピンクの色に変化してツインテールへ。服装もフリフリなピンクのドレスに変わっていく。

最後に首元にリボンと大きな三角帽子を着飾り、光が収まった。


「えっとー、このほうきに跨ればいいのねー。で、ここからどうすればいいのー?」

何の躊躇もなくほうきに跨る。


「想像するべだ。あかりがほうきに乗って飛ぶ姿を」


「想像……」

目をつむり、ほうきに乗っている自分を想像してみる。すると、ふわっと床から数センチほど宙に浮かぶ感覚がしていた。


「その調子べだ。あとは行きたい方向にゆっくりエネルギーを込めええええええええええええ」

エネルギーを込めた瞬間、ものすごい速度で一気に上昇する。


「がははははは! ジェットコースターみたい!!」

高笑いしながら、そのまま空中で一回転する。


「ちょっと待つべだあああ! 一旦止まるべだあぁああ!!」

しかし、高速で空を飛んでいるため枝豆の声が聞こえない。

調子に乗ってぐるぐると滑空していると、


「うっ……」

目が回りはじめ、なんか気持ち悪くなってきた。それとともにほうきの速度が減速する。


「ふぅ、ようやく落ち着いたべだ……あれ、あかり?」


「ぎもちわるい……」

思わず口を押さえる。


「まさか、こんなところで吐かないべだよね。ちょっと、あかり、あかりいい!」

すんでのところで吐き気を呑み込むことができた。


「あ、落ち着いた……はぁはぁ」


「……もう今後、あかりをほうきに乗せないって決めたべだ」


ひと悶着あったがその後、枝豆の指示に従い、さっきのビルの上空に待機する。


「あかりはステッキにエネルギーを溜めるべだ!」


「ステッキね。とりゃ」

さっそく真下にステッキをこめエネルギーを込め少しずつ先端が光だしていく。


「加減はいらないべだよ!」


「ほいほーい」

ぴかかあああと、さらにステッキの先端が光りだす。


「あ、嘘。やっぱり加減するべだ……」


「もーどっち? 加減するのか優しくするのか、はっきりしてよおー」

枝豆の頭をつかもうと思ったが、今は枝豆がほうきになってるためできない。


「む……」

なんとなく、ほうきの持ち手のところをぎゅっとつかんでみる。


「ぎゃあ! 何するべだ!」

どうやらほうきになっても感覚があるらしい。

……おもしろ。

さらにいろいろなところを触っていく。


「あん! ちょ、くすぐったいべだ! どこ触ってるべだ?!」


「ぎゃはは! ここがええんか?」


「まじめにやるべだあああ! ってあ! 通信がきたべだ!!」


「通信?」


「今この真下にあるビルにあの怪物がいるべだ。だからとにかく思いっきりぶっ放すべだ!」


「りょーー」


■■■


真下にあるビルにて

「はぁ、はぁ……ようやくここまでおびき寄せられましたね」


ほうきでの移動にだいぶ希望エネルギーを使ったため、息がかなり上がっている。

少し距離を置き、残っている希望エネルギーを使い銃弾を怪物に打ち込み、動きを止める。

……ふぅ、あとはあいつを足止めするだけ。にしても一体、枝豆ちゃんはどうするつもりなの?

怪物の等級はおそらく2等クラス。通常なら4、5人の魔法少女たちで討伐しなければならない。


「由南、不安ペロ?」

乗っているほうきから声が聞こえる。


「エルノン……うん、ちょっとさすがに不安だよ」


「実は、私もちょっと怖いペロ。でも今は枝豆を信じましょうペロ」


「そうね」


「あ、枝豆から連絡がきたペロ。えっと……できる限り離れて?」

ほうきにエネルギーを込め、言われた通りに後方へと下がり、ビルから離れる。


次の瞬間、圧倒的なエネルギーを含む光がビル全体を覆った。


「え、なにこの力?!」

あまりのエネルギーに、その風圧だけで吹き飛ばされそうになる。慌ててほうきに力を入れ、その場に何とかとどまる。


20秒という長い時間が経ち、その光は収まった。


「怪物は……」

ビルにしがみついていた怪物は、跡形もなく消え去っていた。


「枝豆の言ってたこと……本当だったペロか」


すると、上空から叫び声が聞こえる。


「うわああああ!! エルノン! 由南!! 助けてべだああああ」

上からほうきに跨っている女性が落下していたのだ。


「え、落ちてるペロ!!」


咄嗟にほうきにエネルギーを込め、落ちてくる女性の方へと推進する。

……間に合ってええ!

ギリギリのタイミングで服の襟をつかみ、なんとか女性をキャッチした。


「あ」

しかし、ほうきはそのまま落ちていった。


「べだああああああ!」

……ごめんね、枝豆ちゃん。まぁ妖精は丈夫だし、この程度じゃ壊れないとは思うけど。


「とりあえず枝豆のことはほっといて着地するペロ」

エネルギーが残り少ないため、ふらふらとしながらなんとかビルの屋上に着地した。


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