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森口家の六つ子は、神様の後始末係です —龍神さまからのご指名—  作者: 織村蜜柑


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第一話「ご指名入りました」

【前書き】

前回は、富士と八ヶ岳の伝承から、この土地に残る“流れ損ねたもの”の存在が示されました。

今回は、神様に直接呼ばれる森口家の六つ子が登場します。

森口家の六つ子は、少し変わっている。

——神様に、呼ばれる。

そう言うと、たいていの人間は笑う。

あるいは、困った顔をする。

それから、「比喩ですか」と聞く。

比喩ではない。

森口家の六つ子は、本当に呼ばれる。


鈴が鳴る。

水が止まる。

風が消える。

そうなったら、誰かが呼んでいる。

そして、呼んでくる相手は、たいてい人ではない。


全員、社会人だ。


長男の一樹(かずき)は、森口神社の跡取り。

地域では「若いのにしっかりしている」と評判で、神社同士の集まりにも顔を出している。外向きには礼儀正しく、穏やかで、誰からも信頼される好青年。

ただし、身内の前ではたまにかなり毒を吐く。


長女の二葉(ふたば)は、巫女。

面倒見がよく、六つ子の中では完全に「みんなのお母さん」扱いされている。人の顔色、手の冷たさ、声の震え、空腹の気配まで拾う。

そのくせ、自分の弱さは見せない。


次男の三樹(みつき)は、個人探偵。

森口家の家業ではない。三樹が勝手に始めた仕事だ。

運動神経が抜群で、学生時代はどこの部活にも所属していなかったのに、なぜかあちこちの助っ人に呼ばれていた。今も顔が広く、飲み屋と人脈から妙に生々しい情報を拾ってくる。

猪突猛進。

全力投球。

困っている人を見ると、待つより先に足が出る。


次女の四葉(よつば)は、研究員。

現場リスク管理と分析に強い、六つ子のブレインの一人。冷静で、容赦なく、危ないものは危ないと言う。

そして、刀剣乱舞と銀魂をこよなく愛するガチオタクでもある。資料集、古語辞典、聖地巡礼本はバイブル。課金は必要経費。


三男の五樹(いつき)と、末っ子の六樹(りつき)は、二人でITコンサル会社をやっている。

五樹はチャラい。軽い。人当たりがいい。SNSとネットの噂から情報を拾うのが異様に早い。

そして、重度の二葉(シス)コンである。

六樹は、記録と分析の天才。古文書、地図、データ、過去事例を読み解く。四葉と話し始めると、たまに他の四人が置いていかれる。

犬が好きで、SNOOPYが大好きで、Apple信者だ。

Apple Watchの文字盤はSNOOPYのアニメーション。

Apple TVのスクリーンセーバーもSNOOPY。

仕事用のMacBookにも、iPadにも、SNOOPYのステッカーが貼ってある。

本人は真顔で言う。

「同期が楽だから」

たぶん半分は本当で、半分は犬が見たいだけだ。


ここまでは、まあ、普通と言えなくもない。

問題は、そのあとだ。

全員、呼ばれる。

理由は単純。

森口家は、神様の後始末係だから。


午後四時を少し過ぎた滝坂は、まだ明るかった。

空には薄い雲が広がっている。

北へ向かえば少しずつ土地が上がり、下宿、中宿、上宿へ続く古い道がある。けれど、森口神社のあるあたりは、山の麓というほど高くはない。

甲府盆地の底に近い。

山の気配は遠い。

なのに、この土地には昔から水の音が残っている。

森口神社の境内だけが、夕暮れより先に沈んでいた。

風がない。

葉が揺れない。

鳥の声もしない。

ただ、空気だけが重い。

拝殿の横に、御神木が立っている。

その枝に、小さな鈴が結ばれていた。

古い鈴だ。

風が吹いても鳴らない。

人が触れても、簡単には鳴らない。

そのはずなのに。


ちりん。

一度。


拝殿の前を掃いていた二葉が、顔を上げた。

白衣の袖が、わずかに揺れる。

風はない。

二葉は御神木を見る。


ちりん。

二度目。


社務所の戸口にいた一樹が、静かにスマホを取り出した。

二葉が聞く。

「二度目」

「分かってる」

一樹の声は落ち着いている。

けれど、顔が変わっていた。

外向きの好青年の顔ではない。

森口家の中心に立つ時の顔だ。


そして。

ちりん。

三度目。


二葉は小さく息を吐いた。

「三度鳴った」

一樹が画面を開く。

「全員呼び出しだな」

二葉は拝殿を見る。

「今回、早いね」

「早い遅いは関係ない」

「一樹、そういう時、ちょっと冷たい」

「事実だ」

「ブラック一樹出てる」

「まだ出してない」

一樹はそう言って、迷わず発信した。


滝坂の商店街から少し外れた雑居ビルの二階。

小さな事務所のドア横に、木製のプレートが掛かっている。

——森口探偵事務所。

自分でつけたものだ。

三樹はそのプレートを横目に、スマホを耳に当てていた。

「はい、森口です」

机の上には、書類。

壁際には、ランニング用の靴。

隅には、スポーツドリンクの箱とカップ麺。

そして、二葉が朝持たせたおにぎりが二つ。

午後の空気は、少しだけ湿っていた。

遠くで車の音が流れていく。

電話の向こうから、震えた声がした。

『あの……人を、探してほしくて』

三樹はペンを取った。

「いいですよ。詳細、聞かせてください」

声はいつも通り短い。

けれど、相手が息を詰めていることには気づいている。

名前。

年齢。

特徴。

最後に見た服装。

淡々と書きながら、三樹は聞いた。

「最後に見た場所、どこです?」

『えっと……龍地の、滝坂のあたりで——』

ぴたり、と。

ペンが止まった。

「……滝坂?」

『はい。あの、神社がある——』

それで、十分だった。

三樹の目が細くなる。

「分かりました。こっちで当たります」

『あ、あの、料金とか——』

「あとでいいです」

『え?』

「人がいなくなってるなら、先に探す」

それだけ言って、三樹は通話を切った。

しばらく、何も言わない。

遠くで、また車の音がした。

「……来たか」

小さく呟く。

依頼は、人探し。

でも、これは違う。

——あっちの案件だ。

その瞬間、スマホが震えた。

画面を見る。

表示は、一樹。

三樹は苦笑して、通話を取る。

「兄貴」

『三樹』

短い声。

一切の無駄がない。

『帰ってこい』

「もう来てる?」

『来てる』

それだけ。

でも、十分だった。

三樹は立ち上がる。

「だと思った。今から行く」

『走るな』

「無理」

『三樹』

「最短で行く」

『……車で来い』

「分かった」

通話を切る。

鍵を掴む。

財布を掴む。

机の上のおにぎりを一つ掴む。

それから、三樹は足を止めた。

もう一つのおにぎりを見る。

少し考えて、それも掴む。

二葉に見つかったら怒られる。

いや、たぶん怒られない。

「食べたならいいけど、ちゃんと飲み物も飲んで」と言われる。

その顔が浮かんで、三樹は短く息を吐いた。

「……帰るか」

そして走り出した。

——ご指名だ。


同じ頃。

研究所。

白い光の下、四葉はモニターを見つめていた。

画面には、水流データのグラフが並んでいる。

滝坂周辺の地下水位、降雨量、排水記録、古い地形データ。

数値が、わずかにズレていた。

止まっているわけではない。

でも。

「これ、止まってるんじゃない」

四葉は小さく呟いた。

「——詰まってる」

隣の研究員が顔を上げる。

「森口さん?」

「ごめん、ちょっと外出る」

「え、今?」

四葉は白衣を脱いだ。

机の上には、付箋だらけのノート。

その横には、刀剣ゆかりの地をまとめたトラベル本と、古語辞典が重なっている。

さらに、その下に、銀魂のアクリルキーホルダーが半分だけ見えていた。

研究所に持ち込む必要はないはずのものばかりだ。

だが、四葉にとっては必要だった。

スマホが震える。

画面には、一樹。

四葉は一秒だけ見て、すぐにバッグを掴んだ。

「早退扱いで」

「理由は?」

「家の用事」

「急ぎ?」

「かなり」

説明はしない。

できないから。

廊下に出ながら、四葉はApple Musicを開いた。

プレイリスト。

銀魂ベスト。

一瞬だけ親指が止まる。

「……今日は、まだ早い」

そう呟いて、画面を閉じた。

聴くのは、車に乗ってからでいい。


その頃。

インダストリースタイルの小さなオフィスでは、複数のモニターにコードとチャートが流れていた。

五樹は椅子にもたれ、スマホとPCを同時に見ている。

六樹は隣で、ログと地図データを照合していた。

「五樹、この資料——」

「あとで」

五樹は即答した。

「まだ何も言ってないけど」

「ごめん、今ちょっと森口家案件の匂いがする」

「何それ」

五樹は横を見る。

「六樹」

「うん」

六樹は、すでに立ち上がっていた。

手にはタブレット。

SNOOPYのステッカーが貼られたMacBookを閉じる。

Apple Watchの画面では、SNOOPYが小さく動いていた。

五樹がそれを見る。

「緊急感ないね、SNOOPY」

「通知内容は緊急」

「画面は可愛い」

「癒しは重要」

「そこは譲らないんだ」

その瞬間、二人のiPhoneが同時に震えた。

表示は、一樹。

五樹は笑った。

「ご指名入りました」

六樹は無表情でバッグを取る。

「帰ろう」

「豆と菊のごはん、セットしてある?」

「してある。HomePodのリマインダーも入れてある」

「さすがApple信者」

「信者じゃない。効率化」

「Apple WatchのSNOOPY見ながら言われても」

「SNOOPYは効率と別」

「別枠なんだ」

六樹はiPadをバッグに入れながら言う。

「滝坂の古地図、同期済み。位置情報も全員分確認できる」

五樹はスマホを操作しながら頷いた。

「地元タグ見る。あと、二葉ちゃんの位置も——」

「神社」

「まだ何も言ってない」

「言う前に分かる」

「俺の心読むの早くない?」

六樹は淡々と答えた。

「分かりやすいから」

五樹は胸を押さえる。

「六樹が冷たい」

「客観的」

「その客観、刺さるんだよなあ」

六樹はオフィスの照明を落とし、AirPodsを耳に入れる。

「CarPlayにつないだら、ナビ出す」

五樹が鍵を持ち上げた。

「了解。森口家出動」

「言い方」

「かっこいいでしょ」

「やや過剰」

「六樹、今日は辛口」

「事実」


森口神社。

一樹は拝殿の前に立っていた。

動かない。

待っている。

二葉が隣に立つ。

「みんな、来るかな」

「来る」

「早いね」

「呼ばれてるからな」

「五樹、変に慌てて来そう」

「変には、いつもだ」

二葉が少し笑う。

「一樹、五樹に厳しい」

「甘くする担当は二葉で足りてる」

「……甘くしてないよ」

「してる」

「してない」

「五樹の構われ待ち成功率、かなり高い」

「六樹みたいなこと言わないで」


その時。

拝殿の中から、音がした。

——ちりん。


さっきとは違う。

御神木の鈴ではない。

拝殿の奥。

誰も触れていないはずの場所から、鈴の音が鳴った。

二葉の表情が変わる。

「中から」

一樹が頷く。

「早いな」

「今回、急いでる?」

「呼ぶ側の都合だろ」

「また冷たい」

「事実だ」


砂利を踏む音が聞こえた。

最初に来たのは三樹だった。

息は切れていない。

片手には車の鍵。

もう片方の手には、食べ終わったおにぎりの包み。

二葉がすぐに眉を寄せる。

「三樹、走ったでしょ」

「車」

「神社の下から走ったでしょ」

「少し」

「少しじゃない」

「おにぎりは食べた」

「そこは偉いけど、水分は?」

三樹は黙った。

二葉がため息をつく。

「あとでお茶ね」

「分かった」

五樹の声が後ろから飛んだ。

「二葉、三樹ばっかり心配しないで。俺も急いできたよ」

少し遅れて、四葉が境内に入ってくる。

息を整えながら、まず境内全体を見た。

「風がない。鳥の声もない。拝殿の内側だけ気配が沈んでる」


一樹が手を上げた。

「状況を整理する」

一樹は拝殿を見た。

「御神木の鈴が三度鳴った。全員呼び出し」

二葉が続ける。

「そのあと、拝殿の中から一度」

四葉が境内を見回す。

「境内は音が沈んでる。外とは切れてる」

六樹がiPadを開く。

「滝坂周辺の水位データに異常。古い水筋と現在の地形が噛み合っていない可能性」

四葉がすぐに言う。

「研究所のデータでも同じ。止まってるんじゃなくて、詰まってる」

六樹は頷いた。

「水筋が?」

「たぶん。流れていないのに圧だけ上がってる」

三樹が一言。

「詰まってるなら抜けばいい」

四葉が即答する。

「排水溝じゃない」

五樹が笑う。

「三樹式解決法、いつも物理」

「物理で済むなら早い」

「済まないから呼ばれてるんだよなあ」

五樹はスマホを見る。

「SNSにも出てる。昨日の夜から、滝坂で“水音がするのに水がない”って投稿が増えてる。あと、一件だけ“人が消えた”って書き込みがある。すぐ消されてるけど、スクショは残ってる」

三樹が短く言う。

「依頼が来た。人探し。最後に見た場所は龍地の滝坂」

空気が、少し重くなった。

二葉が小さく呟く。

「人が、呼ばれた?」

一樹の目が細くなる。

「その可能性が高い」

三樹が前に出ようとする。

「行く」

「待つ」

四葉と一樹の声が重なった。

三樹は不満そうに振り返る。

「人が消えてる」

「だから、組んでから行く」

一樹が言う。

「三樹が最短で動けるのは分かってる。だが、戻りが閉じる可能性がある」

三樹は数秒黙った。

「……何分」

「四分」

「三分」

「四分」

「……分かった」

五樹が感心したように言う。

「一樹、猛獣使い」

一樹は五樹を見た。

「三樹は猛獣じゃない。前衛だ」

三樹が五樹を見る。

「あとで殴る」

「ほら猛獣」

「五樹」

二葉が呼ぶ。

五樹は即座に背筋を伸ばした。

「はい」

三樹がぼそっと言う。

「二葉には素直」

「三樹もでしょ」

「俺は違う」

「さっき止まったじゃん」

「一樹にだ」

「はいはい、男同士の信頼ね。ずるいずるい」

六樹が淡々と呟いた。

「五樹、嫉妬対象が多い」

「今日はよく刺すね、六樹」

「事実」


二葉が五樹の袖を見る。

「五樹、袖、乱れてる」

「え、ほんと?」

「わざとでしょ」

「ばれた?」

「ばれるよ」

そう言いながらも、二葉は手を伸ばして五樹の袖を整えた。

三樹が低く言う。

「甘やかすな」

五樹は満足げに笑う。

「二葉の愛情補給完了」

四葉が冷たく言う。

「気持ち悪い」

「四葉、今日も辛辣」

六樹がApple Watchを見る。

画面のSNOOPYが小さく動いていた。

「五樹の二葉への接触頻度は、呼び出し直後に上がる傾向がある」

「六樹、記録しないで?」

「観測しただけ」

一樹が拝殿を見た。

「家に戻って会議する時間はなさそうだな」

六樹がiPadを操作する。

「必要な資料は出せる。Apple TVへのミラーリングは家じゃないと無理だけど、ここならiPadで共有できる」

五樹が言う。

「家だったらテレビに投げて、全員で見れたのにね」

四葉が腕を組む。

「現場判断で足りる。細かい照合は戻ってから」

三樹が即答する。

「じゃあ行く」

「だから待つ」

四葉が言った。


その時だった。

拝殿の扉が、わずかに開いた。

さっきまでは閉じていたはずだ。

中は暗い。

違う。

暗いのではない。

奥がない。

空間が削れている。

そこだけ、ぽっかりと黒い。

二葉が息を吐いた。

袖を整える。

「……来てるね」

五樹の表情から軽さが消える。

「二葉、近づきすぎないで」

「分かってる」

「その“大丈夫”系の声、信用してない」

二葉は少しだけ困った顔をした。

「まだ大丈夫って言ってない」

「言いそうだった」

「五樹、二葉を見すぎ」

四葉が言う。

五樹は笑った。

「通常運転です」

三樹が前を見る。

「中にいるなら、行くしかないだろ」

一樹が頷く。

「行く。ただし、役割を崩すな」

一樹が全員を見る。

それだけで、六人の立ち位置が決まった。

三樹が前。

四葉が退路と危険範囲。

五樹が外の情報と二葉の横。

六樹が記録と解析。

二葉が音と気配。

一樹が中心。

一樹は短く言った。

「行くぞ」

三樹が首を鳴らす。

「やっとか」

四葉が即座に言う。

「突っ込まない」

「分かってる」

「三樹の“分かってる”も信用してない」

「お前ら信用しなさすぎだろ」

五樹が肩をすくめる。

「積み重ねって怖いね」

六樹が記録を取りながら言う。

「実績」

「六樹、お前もか」

二葉が小さく笑った。

その笑いが、すぐに消える。


拝殿の奥から、水音がした。

ざあ、と。

海でも川でもない。

床下を、見えない水が走る音。

二葉が言う。

「下じゃない」

四葉が振り返る。

「どこ?」

「奥」

六樹が眉を寄せる。

「拝殿の奥に、水筋はない」

五樹が低く言う。

「じゃあ、あることにされてる?」

一樹が一歩前へ出た。

外向きの優等生の顔は、もうない。

「森口の内側に、勝手に入るな」

その声に、拝殿の奥の黒が揺れた。

水音が止まる。

一瞬の静寂。


そして。

奥から、声がした。

——六つ、揃った。

五樹が笑った。

笑っているのに、目は笑っていない。

「うわ。最悪の歓迎文句」

三樹が眉を寄せる。

「腹減ってる時に来るな」

四葉が即座に突っ込む。

「そこじゃない」

六樹がSNOOPYのペンを握り直した。

「記録する。現代六つ子、全員呼び出し。拝殿奥に黒。水音あり。人探し依頼と同期」

二葉が小さく息を吸う。

「みんな、離れないで」

一樹は頷いた。

「後始末を始める」

二葉が袖を整え、少しだけ笑った。

いつもの、みんなを安心させる顔。

でも五樹だけは、その手がほんの少し震えていることに気づいた。

「二葉」

「なに?」

「終わったら、おにぎり作って」

二葉は一瞬だけ目を瞬かせた。

それから、少し笑う。

「今それ?」

「今だから」

「……分かった。終わったらね」

五樹は軽く笑った。

「じゃあ、ちゃんと戻らないと」

その言葉に、三樹が前を向いたまま言う。

「戻るだろ」

一樹が静かに続ける。

「戻す」

四葉が言う。

「戻れる手順で動く」

六樹が記録する。

「戻る前提で記録する」

二葉が、最後に頷いた。

「うん」


拝殿の扉が、ゆっくりと開く。

中は暗い。

奥はない。

けれど、六人は進む。

神様に呼ばれたなら、仕方ない。

森口家は、後始末係だから。

そして、その日。

滝坂の古い水筋が、再び動き始めた。


挿絵(By みてみん)

キャラクターそれぞれを際立たせ、厚みをつけるため、リライトしました。


【後書き】


第一話では、森口家の六つ子がそろって登場しました。


一樹はまとめ役、二葉は浄化役、三樹は前に出る行動役。

四葉は調べる役、五樹は人と流れをつなぐ役、六樹は記録と言葉を扱う役です。


仕事も性格も違う六人ですが、森口家では全員が“神様の後始末係”。

鈴が三度鳴ったことで、六人全員に“ご指名”が入りました。


ここから、森口家の六つ子が本格的に動き出します。

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― 新着の感想 ―
じょ、情報の密度が、高い……。 ハードボイルドにも感じる文体と、全体の雰囲気は好きなんですが、疲れたときに読むと、ちょっと辛いです。
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