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プロローグ「終わらなかったもの」
本作に登場する地名・伝承の一部は、実在のものを参考にしています。ただし、森口家・森口神社・六つ子および作中の神秘設定はフィクションです。実際に訪問する際は、私有地・農地・施設への立ち入りを避け、地域の方の迷惑にならないようご配慮ください。
昔の話をする。
富士山と八ヶ岳が、背くらべをしたことは知ってるだろうか。
結果は、八ヶ岳の勝ちだった。
けれど、勝ったほうが残るとは限らない。
怒った富士の女神は、八ヶ岳を——砕いた。
それが、今の八ヶ岳だと言われている。
八つに割れた山。
……でも。
本当に砕かれたのは、山だけだったのか。
そのとき、こぼれたものは。
怒りか、痛みか、それとも——
土地に残った“何か”は、今も消えていない。
だから人は、流して、祓って、戻してきた。
水を通し、石で留め、祈りを重ねて。
そうやって、この土地は守られてきた。
——はずだった。
今はもう、違う。
流れは止まり、石は傷み、人は手を離した。
そして、残っていたものが、動き出す。
だから、呼ばれる。
神様が、直接。
選ばれるのは、決まっている。
六人。
いつも同じ、六人だ。
——これは、終わらなかったものの話。




