プロローグ「終わらなかったもの」
本作に登場する地名・伝承の一部は、実在のものを参考にしています。ただし、森口家・森口神社・六つ子および作中の神秘設定はフィクションです。実際に訪問する際は、私有地・農地・施設への立ち入りを避け、地域の方の迷惑にならないようご配慮ください。
【前書き】
ここから、森口家の六つ子と“終わらなかったもの”の物語が始まります。
富士と八ヶ岳、土地を巡る流れ、そして止まってしまった祈り。
これは、神様に呼ばれる一家が向き合う、見えない後始末の始まりです。
昔の話をする。
富士山と八ヶ岳が、背くらべをしたことは知っているだろうか。
勝ったのは、八ヶ岳だった。
けれど。
勝ったほうが、残るとは限らない。
怒った富士の女神は、八ヶ岳を砕いた。
八つに裂けた山。
それが、今の八ヶ岳だと言われている。
——だが。
本当に砕かれたのは、山だけだったのか。
山の下を流れていたもの。
土地を巡っていたもの。
目には見えない、“流れ”。
そのとき零れたものは、
今も、この土地の底に残っている。
怒りか。
痛みか。
あるいは——
流れ損ねた、何かか。
だから人は、流してきた。
水を通し。
石で分け。
祈りを重ね。
溜まらないように。
沈まないように。
そうやって、この土地は守られてきた。
——はずだった。
けれど今は、違う。
流れは止まり。
祈りは途切れ。
人は、土地から離れた。
だから、残っていたものが動き出す。
黒く。
静かに。
見えない場所から。
だから、呼ばれる。
神様が、直接。
選ばれるのは、いつも決まっている。
六人。
流れを感じる者。
止まったものを見つける者。
終わらなかったものを、“後始末”する者。
——これは。
終わらなかったものの話。
【後書き】
プロローグでは、この物語の根にある「流れ」「土地」「終わらなかったもの」を描きました。
六つ子が呼ばれる理由、そして龍地に残る黒い気配。
次回から、森口家の六つ子が本格的に動き出します。




