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7章 赤い糸

 さゆりの家はもともと豆腐屋であった。玄関は4枚のサッシの引き戸で、その前に雨戸がついている。旦那が亡くなった後も家のつくりはそのままで、向かって右側の引き戸だけを開け閉めして使っている。

 さゆりが日曜日の朝9時ぐらいに玄関を開けようとすると引き戸のコマが外れて動かない。引き戸を上げてコマをレールにはめようとするけれど、なかなかはまらない。終いに引き戸が噛みこんでしまい、にっちもさっちも動かない。

 その時後ろから「おはようございます。」と声がした。振り返るとつぶらな瞳のナイスグレーの男性が、洗剤を持って立っていた。

「長谷川さんおはようございます。来月からこの道の側溝の付け替えの工事をのするので、ご近所の挨拶周りをしています。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。」といって㈱淀川建設代表取締役社長藤原健太郎と書かれた名刺と洗剤を手渡せれた。

 つぶらな瞳のナイスミドルは、悪戦苦闘中のさゆりを見て、

「ちょっとどけてください。」と言って、引き戸を外して、横にして、コマの状態を確認した。

「コマあきませんわ。へたってます。少し待ってください。」と言ってどこかに行った。

 30分ほどすると彼が工具箱と白いビニール袋を手に持って、帰って来た。

 戻って来るとすぐに、工具箱から電動ドリルを持ち出して前後のコマのネジを外した。それから白いビニール袋の中から新しいコマを取り出し、引き戸に付けてレールにはめた。はめた引き戸を確認するかのように、何回も左右に動かした。

「これで大丈夫ですよ。」と彼が言った。

 さゆりは「ありがとうございます。お金は?」と聞くと、

「いえいえ、お金なんて入りませんよ。大したことありませんよ。」と笑顔で言った。

 工事で通行の邪魔をすることもあると思いますので、その時は大目に見てくださいね。」と言った。

 建設業にとって地元対策が一番の課題であった。工事をする以上ホコリも騒音も出る。出来るだけ出さないようにと努力はするけども、重機とダンプが動けば音はする。ここで困るのはÅサンは何も言わないけれど、Bさんは役所に「音がうるさい」とクレームを入れる。クレームを入れられた役所は、施工業者に対して注意を行う。役所に嫌われると工事が出来ないため、注意された施工業者はより静かに工事をするため、作業効率を落として仕事をしなければならない。そんなことにならないように、事前に隣接する家を一軒一軒挨拶して回り、工事の説明をしていくのである。説明を受けた近隣住民も施工業者の誠意が見えれば常識の範囲で、工事に協力してくれる。だから工事に先立つ挨拶周りは大事である。

「ごめんなさいね。女の一人住まいなので、こんなことになったら、いつも困るのよ。業者さんを呼べばいいんやけど、お金が高いから、我慢できるところまで我慢するのよね。あかんわね。」とさゆりが言った。

「他に困ったことあれば言ってくださいよ。」とつぶらな瞳が優しい目で言った。

 つぶらな瞳はさゆりのことを知らないが、さゆりは彼のちんちんをなぶりものにしている。つぶらな瞳は初対面であったがさゆりは彼のちんちんを知っている秘密の関係である。

「あのう、台所の蛍光灯が切れたので、現物を持ってホームセンターに行ったら、LED蛍光灯しか置いてないと言われた。でもこのLED蛍光灯であれば切れた蛍光灯の本体でそのまま使えますと言わたので買った。でも電機が点灯しない。」とさゆりは言った。

 つぶらな瞳はさゆりに案内されて台所で椅子に乗って、LED蛍光灯の取り付け具合を確認し、スイッチのひもを引っ張った。ひもを引っ張るとLED蛍光灯が少し白くなったが、LED蛍光灯というには、ほど遠い明るさであった。

「他に部品は有りませんでした?」と彼が聞くと、

「これだけです。」とLED蛍光灯の箱を渡した。箱の中のクッション材を開けて見るとグロー球が入っていたので、LED蛍光灯のグロー球を交換すると明るく点灯した。

 さゆりとつぶらな瞳は見合わせて喜んだ。

「ありがとうございます。助かります。ホームセンターの人も蛍光灯みたいに取り付ければいいと言っていたので、付属品のグロー球のことも知らなかった。空き箱をゴミ箱に出さなくてよかった。」とさゆりが喜んだ。

「何かお礼をしたいのですが?」とさゆりが言うと、

「いいです。いいです。」と彼が言う。

「それでは私の気がすみません。」と彼に言うと、

「それでは工事の時に味方になってください。いつも悪者なので、クレームを言われることがあっても、褒めてもらえることはありません。クレームだけは役所に言わないでください。クレームがあればこちらに言ってもらえれば対処します。」と言って出ていった。

 つぶらな瞳のナイスミドルが帰った後、女一人で生活するさゆりに取って、かゆいところ

 に所に手が届く彼のやさしさが嬉しかった。

 さゆりはお客のちんちんを舐めるようになってから自分が少し強くなったような気がしていた。旦那が亡くなった後は一人になって夜が怖くて眠れなかったのに。

 3日後、さゆりは2回の出番を終え、控室で次の出番を待っていた。

「さゆりさん、さゆりさん御指名入りました。セーラー服でお願いします。用意が出来れば8号室に入ってください。」とアナウンスが控室に流れた。

 指名のアナウンスはさゆりの仕事のやる気のモチベーションになり、アナウンスを聞かされた女性達は、どうすれば自分が指名を貰えるかを自答自問する。この世界はシビアな世界である。店にお客を呼べる女性は重宝されるが、指名のない女性は居場所がなくなる。弱肉強食の世界である。だからアナウンスは心に安心を与える。

 さゆりは白衣から上は白、下は赤のミニのセーラー服に着替え8号室に入った。

 部屋に入ると、覗き窓からつぶらな瞳が来ていた。会うのはドアを直してもらってから3日が過ぎていた。

 さゆりは次に来たときはサービスをしようと決めていた。

 さゆりは5秒見つめ、右手を左胸にあて、「あっあーん。」と言って、上目遣いで鏡を見つめ、谷間を見せ、足を開いて黒いパンツを見せたて、左胸を長くさわらせた。

 口の中では彼の息子をいとおしく、時に激しく、愛撫した。

 健太郎は「出る。」と言ったので、おしぼりで彼のちんちんを包み、放出させた。

 彼は「あらくたい。あらくたい。」と言って、喜んでいた。

 さゆりは仮面の下で笑っていた。

 帰り際にいつものごとく、「お茶飲みに行こう。」と言ったので、「はい。」と言った。

 健太郎は喜び「おお。」と声を上げると、さゆりは人差し指を口に当てて、「シー。」と言った。知られると彼女達の後の処置がめんどくさかった。

 さゆりは覗き窓から1枚のメモを渡した。そこには「9時ガスト。」と書かれていた。店から出て、表通りの1つ目の角の交差点にガストはあった。時計は8時30分だった。

 この時刻になると予約がなければ、飛び込みの客は少なく、さゆりはマネージャーに、上がることを告げた。急いでいたので、セーラー服をクローゼットに掛けて、ハーフジップのグレーのフリースに黒のゴムのズボンに着替えた。その上に黒のダウンをひっかけて店を颯爽と出た。

 衣装部屋から控室を通る時に、さくらさんから、

「さゆりさん、セクシーよ。」と言われた。

 ガストに付くと健太郎はコーヒーを飲みながら待っていた。

「遅くなってすいません。」と言って、頭を下げて、健太郎の前に立った。

「あっ!」と声を出し、さゆりの顔を見ていた。

「あなたでしたか?びっくりしましたと。」健太郎は言った。

「この前はありがとうございました。お陰で玄関のドアの開け閉めが楽になりました。」とあらためてお礼を言った。

「あの時に名乗ってくれればよかったに。」と健太郎が言うと、

「そのうち名乗るつもりでした。」とさゆりはダウンを脱いで席についた。ウエイトレスさんが注文を聞きに来たので、「コーヒー。」と言った。

 この店はセルフサービスになっているので、コーヒーを取りに行くときに小走りで走ったので胸が揺れた。「やばい」と思ったので、コーヒーを入れるとさゆりは両腕で胸を挟んで固定した、お尻を引いた。コーヒーがこぼれないように見せるために。ただ彼の視線が気になった。

 席付くと彼が、

「俺は65才です。さゆりさんは?」と彼が聞くので、

「66才です。」とさゆりが言った。

「金のわらじですね。」と言って、笑っていた。

 金のわらじとは、一つ上の女房は夫を立てて円満な家庭を築くため、苦労して探す価値があるという意味ことわざであった。

「私は御坊市名田の端っこの方ですけど、さゆりさんは?」と彼が聞くので、

「御坊のお宮の近くです。」と言うと、

「御坊祭りはにぎやかですもんね。人でも多いし、露店も多い。」と彼が言うと、

「9月10日を過ぎれが、夜に窓を開ければ2か所も3か所も笛や太鼓の音が聞こえて来て、身体の準備体操を始める。そのわくわく感がたまんない。」とさゆりが言った。

 お宮の近くって、「ジャスコオークワ。」もありましたよね。

「ありましたよ。田舎のデパートみたいなところで、良く言ってました。」とさゆりが言うと、

「小さい時、買い物行く時に連れて行ってくれる。行ったら、ソフトクリームかたこ焼きを買ってくれたからうれしかった。それにクリスマスは今と違って、おもちゃ売り場に子供がいっぱいいた。それで先に買わないと買われてしまうから親に必死に頼み込んだ。」懐かしいねと彼が言った。

「さゆりさん、知ってます。火力発電所は1号機、2号機が止まり、3号機だけが動いている。」と彼が言うと、

「知りません。どうして?」とさゆりが言った。

「詳しいことは解らないけど、老朽化?」

「俺らの小さい時は発電所はなかった。でも建設した発電所は老朽化やて。発電所、古くなるまで生きているんやから、年寄りになるわ。」と彼が言った。

「小さい時から節句や季節のいい時は弁当持って家族で浜へ行った。確かにそのころは発電所はなかった。煙樹ヶ浜から見渡す限り海しか見えなかった。」とさゆりが言った。

「さゆりさん、もしかすると高校時代どこかで出会っていたかもしれませんね。」と彼れが言った。

「さゆりさん、今日は楽しかったです。次はドライブで。いつなら時間取れますか?」と言った。

 健太郎はぐいぐい来た。でも、さゆりは悪い気はしなかった。話をしていても楽しかったし、話もしやすかった。一緒にいても、何かしゃべらなければ行けなという切迫感がなかった。平常心で、考えるていることが解り、横にいて気を使わなかった。さゆりにとって、男の人との会話であったが、普通に楽しめた。

「今日は水曜日なので、土曜日なら7時に仕事は終わります。」とさゆりが言った。

「解りました。それでは7時30分にガストで待っています。」と彼が言った。

 時計は10時を回っていた。健太郎が会計を済また。

 店を出ると、一番近くの青い駐車場にシールの付いていない車が止まり。中から若者が4人出てきた。

 最近の若者は常識がない。10メートル歩けば開いた駐車場があるのと怒っていた。


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